結婚相手の“年収”は気にしない…男女賃金差が世界最小のベルギーで「私は変わった」

ベルギー人女性
ベルギーの首都ブリュッセルで開かれたデモに参加する女性たち。2023年11月撮影。
Ana Fernandez / SOPA Images/Sipa USA via Reuters Connect

3月8日は国際女性デー。欧州では、男性の友人から「国際女性デーおめでとう」と当然のように声をかけられることもある。昨年、イギリス人男性などから私もメッセージをもらった。

日本ではあまり知られていないが、国際女性デーは1977年に国連総会で制定された歴史ある記念日。女性の権利、政治、経済分野への参加を推進していくための日でもある。

そんな記念日にこそ考えたいのが、日本におけるジェンダーギャップだ。

世界経済フォーラム(WEF)によって発表された2023年の「ジェンダーギャップ報告書」によると、日本は146カ国中125位という悲しい結果になっている。私が留学中のベルギーはこのランキングでは10位という好成績だ。

さらにOCED(経済協力開発機構)のデータによると、加盟国38カ国のうち、2022年の男女賃金格差が最も少ないのがベルギーで、わずか1.2%。ちなみに日本は21.3%だった。

実際に私が「男女平等の先進国・ベルギー」で留学生活をするなかで、現地の人々との考え方の違いを目の当たりにし、私自身の考え方にも大きな変化があったので紹介したい。

パートナーの年収や勤務先は誰も気にしない

年収グラフ
女性が相手に求める理想の年収では「〜700万円」が最も多かった。
出典:BIJ「婚活者に聞く『理想の世帯年収』」

日本で結婚相手やパートナーの話になると、職種や勤務先が話題になることが多い。

特に女性同士の会話、いわゆる「女子会」では、パートナーの給料は無視することのできない要因だった。

自分の20代を振り返っても「自分より高い収入、最低でも同じがいいよね」と話していたのを思い出す。

実際、婚活サービス大手・IBJが発表した「婚活者に聞く『理想の世帯年収』」によると男女で300万円の差があった。理想の年収を気にしない男性は19.5%であるのに対して、女性は1.9%しかいない。

パートナーの年収を気にしていた私の周囲の女性の友人は、医師や大手商社、外資コンサルティング企業に勤めていた。

決して給料が平均的な額より低いわけではないのに「同等かそれ以上の収入」を相手に求めていたし、私自身も何の迷いもなく「そうだよね」と同調していた。

しかし、今の私ならばそんなことは気にならなくなった。そう考えるようになったのは、ベルギーの女性たちの影響が大きい。

「多く持っているほうが出せばいい」

以前の私の記事「世界のエリート集結の会議、あいさつで『肩書き』は無意味。質問されるのは…?」でも指摘したが、欧州では初対面の相手に職種や勤務先を聞くことは少ない。

「女子会」のようにオープンな場であっても、パートナーの勤務先が話題になることはない。

ベルギーでは女性のほうが、収入が多いであろうカップルも珍しくない。パートナーよりも稼いでいる彼女たちであっても、その給料はベルギーの平均収入より低い場合すらある。それでも「家族なんだから、多く持っているほうが出せばいいじゃない」という感じだ。

ちなみに、この場合の「家族」とは婚姻関係だけを指すわけではなく、Cohabitationという同居制度など、多様なあり方が含まれる。

日本で女性のほうが高収入のカップルをあまり目にすることがなかっただけに、最初は私も驚いた。だが、これも「ジェンダーギャップが少ない国の女性の考え方なのかもしれない」と思うと、とても素敵だと感じる。

世界のエリート集結の会議、あいさつで「肩書き」は無意味。質問されるのは…?

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「日本ではモテないね」と笑うベルギー人男性

男性側も、収入が低かったとしても気にする素振りはない。

音楽、スポーツ、アートなど自分の得意や好きをもとに、人生を楽しんでいる。また、収入を増やすために仕事終わりや休日に「勉強」や「副業」に勤しんでいないのもユニークなところだ。

ある公務員の30代のベルギー人男性は、大学を「合わなかった」という理由でドロップアウトしたので、最終学歴は高卒だ。

OECDの2022年度のデータによるとベルギー人の平均年収は6万4848ドル(約972万円、1ドル=150円で計算)だが、その男性は年収3万ユーロ(約486万円、1ユーロ=162円で計算)で平均よりは低い。しかし、基本は週4日の10時間勤務。月の半分は週3日勤務ということを考えると、コスパは決して悪くないだろう。

さらに、職場で時間があるときはギターの練習をしているという自由っぷりだ。休日は友人と出かけたり、オンラインゲームをひたすらしていたりすることも多い。

あるとき「収入を増やそうと思わないの?」と聞いてみた。すると「増えたらもちろん嬉しいけど、それより自分の時間を自由に使いたい」と返された。

日本では、デートの現場で男性が支払うことが多いことや、日本の恋愛市場において収入が重要であることを話すと、「僕は日本でモテないね」と笑われてしまった。

別の30代の別の男性は、昨年、勤務先のスーパーの閉店にともない職がなくなった。子ども二人いて、家は賃貸だ。

彼は新たな職を探すまでの間、ネイリストのパートナーの収入で生活していた。しかし、彼らの仲は極めていい。毎月のように記念日やツーショットが、女性から男性への愛の言葉とともに綴(つづ)られ、SNSにアップされている。

文字にしてみると些細なエピソードではある。しかし、日本だと「かなり珍しいケース」だと見られるだろう。

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