ネットフリックス映画、宣伝しないのに1億回以上視聴されるのはなぜか

Jason Guerrasio

Jason Guerrasio原文翻訳:仲田文子、編集:井上俊彦

Sep 28, 2024, 8:30 AM

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『リフト』に主演したケビン・ハート。
『リフト』に主演したケビン・ハート。
Christopher Barr/Netflix
  • 2024年にネットフリックスで最も視聴された映画は、『ダムゼル』『リフト』『雪山の絆』だった。
  • これらの映画はほとんど宣伝されていないにもかかわらず、数百万回も視聴されている。
  • ネットフリックスは、宣伝に力を入れるというより、膨大な加入者をひきつける「ウォータークーラー戦略」をとっている。

ネットフリックス(Netflix)が9月19日に発表した2024年上半期に最も視聴された映画とテレビ番組のランキングに驚きはなかった。『ブリジャートン家』『グリセルダ』『リプリー』などの大作や『ザ・クラウン』の最終シーズンは、やはり何百万もの視聴回数を獲得した。だがこれらの人気ドラマシリーズよりももっと興味深いのが、最も多く視聴された映画だ。

今年上半期で再生回数が最も多かった映画は、ミリー・ボビー・ブラウン(Millie Bobby Brown)主演のファンタジースリラー『ダムゼル』で、1億4380万回の視聴を記録した。1億2940万回で2位になったのはケビン・ハート(Kevin Hart)主演のアクション映画『リフト』、1億380万回で3位になったのはスペイン語の作品『雪山の絆』だった(これらのデータは、ネットフリックスのオリジナルおよびライセンス作品のうち、5万時間以上視聴された作品の視聴時間に基づいている)。

ストリーミング業界でネットフリックスだけ株価が上昇するのはなぜか?

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これらの映画をすべて見た人もいるだろう。そんな人はこれらの作品の配信を心待ちにしていたのだろうか。それとも配信されていたのを偶然見つけたのだろうか。おそらく後者だろう。

『ダムゼル』に出演したミリー・ボビー・ブラウン。
『ダムゼル』に出演したミリー・ボビー・ブラウン。
John Wilson/Netflix

上位3位の作品に共通しているのは、ネットフリックスがほとんどマーケティングや宣伝をすることなく公開に至ったことだ。これは驚きかもしれないが、ネットフリックスは2010年にオリジナルコンテンツ、特に映画の制作を始めた頃から、この戦略を採用してきた。

上半期のランキングは、この戦略が明らかに効果的だということを証明している。ネットフリックスのトップページは、人が集まり井戸端会議をする「ウォータークーラー」のある場所になっている。最もホットなランキング上位の作品が並び、トップには最新リリース作品のバナーが掲げられ、それを見たユーザーはとにかく再生ボタンを押すように促される。考えるのは後だ。

この充実したトップページのおかげで、ネットフリックスはオリジナル作品のプロモーションに巨額を投じる必要がない。ユーザーはいずれにせよアプリで作品を見つけるのだから、公開前にあえて盛り上げるような宣伝をする必要はないのだろう。

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