「眠いよ」「疲れたよ」
自身の深夜ラジオ「JUNK おぎやはぎのメガネびいき」では、いつもマイペースな発言を連発する「おぎやはぎ」。ゆるい芸風でお馴染みのお笑いコンビだ。
4月にスタートしたキャンプ番組「おぎやはぎのハピキャン」(メ〜テレ、毎週水曜深夜0時59分〜)でも、突然ハンモックで昼寝するなどマイペースぶりを発揮している。
芸歴は今年で24年目。レギュラー番組は10本以上。仕事のオファーは絶えない。
なにかとやる気の出ない5月。ゆるいながらも活躍する二人に、力の抜き方を聞いた。
「つらかったら逃げちゃえばいい」
――2010年の著書「地味ですが何か?」の中で、お二人は「苦労なんて、しないに越したことない」「さぼらない人に、ろくな人はいない」と言っていました。それは今でも変わりませんか?
小木:そんなこと言ってたんだあ。若いなあって思う。でも、今も考え方はだいたい同じかな。
矢作:サボるって一言で言っても上手いサボり方と下手なサボり方があるからね。 技術が必要なんですよ。
小木:そう。みんながみんなできるってわけじゃないからね。
矢作:サボってるのがバレないようにしないといけないから。だから、本当に面と向かってサボっちゃいけない。
かといって、一生懸命やりすぎると辞める方向になっちゃうでしょ? 壊れちゃって。だから、そんなに深刻に考えないのがいいんだよ。
小木:そう。つらかったら逃げちゃえばいいし。
ーーきつかったら無理はしないんですね。ラジオでも「常に1日5本程度の仕事の話がきているが、体力を考えて受けるのは1、2本だけ」と言っていました。
矢作:そうですね。そもそも本当にパフォーマンスが下がるんですよ。疲れると。
小木:5本受けたら、パフォーマンスが下がって仕事減っていっちゃうんじゃないかと思いますよ、逆に。
矢作:そう。だって、例えば4本目の仕事の人とか、それを見た人には、その事情を知らないから、単純におもしろくない人だと思われるでしょ?
――4月からスタートしたキャンプ番組でも、冷凍食品でご飯を作るなど力を抜いていますね。
矢作:これを見て、キャンプは適当でいいんだって思ってもらえればいいね。
小木:「キャンプをちゃんとやろう」っていう考えがなくなる番組だよね。
矢作:冷凍食品のチャーハンをフライパンで炒めればいいんですからね。あれ、うまいんだからさ。
小木:キャンプってちゃんとご飯を作るイメージがあったから、腰が重かったんです。でも、ちゃんとしなくてもいい。そういう見方ができます。
がんばるのは「要所要所」でOK
ーー著書の中には「努力はしていない」とも書いてありました。本当ですか?
矢作:(努力の捉え方は)人それぞれなんだよなあ。努力って「いくらしてもまだ足りない」っていう人もいれば「俺、超努力しました」っていう人もいるし……。っていうことは、俺たちストイックな人間なのかな? 努力したと思っていないんだから。
小木:うん、すんごいストイックなんじゃない? 下手したら。
矢作:本当に努力してないとは思うけど。
小木:ほんと、要所要所ね。ここぞというときに(力を)出したからよかったんだよね。俺ら、全部大事なところで出してきたんですよ。ここをスベったらいけないっていうところではスベんない、とかね。
矢作:そうだね。
小木:他はいろいろスベってるんですよ、どうでもいいところでは。大事なところってあるんですよ、必ず。
矢作:(サボり方がわからない人がいたら)ここは絶対努力した方がいいよっていうところだけ教えてあげたいね。あとは、もうサボっていいから。
「自分にあっているものが絶対にあるはず」
ーーでも、営業職など常に結果が求められる仕事もあると思います。
矢作:難しいなあ。それ言われちゃうとさあ、結果を出してきた人間だからなあ。
でも、結果を求めなきゃいけないのがあんま好きじゃない人は、結果を求めない仕事についた方がいいと思う。
小木:会社を辞めた方がいいね。違う会社に行くとか。
矢作:営業職を辞めて、経理部とか総務に行くとか。
小木:そうそう。やっぱ、向いてるもんね。そういうところにいる人って。そういうところには、結果を出すことが好きな人が行った方がいいよね。
矢作:自分にあっているものが絶対にあるはずだから。 俺も本当は嫌だったよ、競争するの。だから、お笑いの賞レースも好きじゃないし。でも、結果を出さなきゃいけない世界だからね。まぁ、出しましたけど。ははははは。
ーーお二人とも3年間会社員をしていたんですよね。会社が嫌で芸人への道にすすんだのですか?
矢作:そうですね。もし、サラリーマンでもすごい楽しい仕事だったらよかったんでしょうけど、普通だったから。
あと、車で出社したかったんだよなあ……。そうすると、田舎の工場か芸人しかないでしょ? 通勤電車とか3年間乗ったんですけど、嫌だった。
小木:電車嫌だったなあ。いつも同じ場所に行くのも嫌だし、なんか。
ーー嫌だと思って辞められるのがすごいですよね。嫌だと思いながら会社に行く人が大多数だと思うので。
小木:だから、偉いよねえ。そういう人たちって。
矢作:偉いと思う。でも、ただ単に辞めてニートになるわけじゃないからね。ちゃんと目標があったからね。一応芸人だけど、転職だからね。
将来のことなんて別にどうにでもなる
――会社を辞めるのは怖くありませんでしたか?
小木:ないですね。
矢作:まったくないですね。
小木:だってまだ23ですから。
矢作:夢と希望しかないんですから。すぐ成功すると思ってるし。親からはいろいろ言われましたけどね。
小木:大反対ですよ、そりゃ。
矢作:でも、楽しかったですよ。けっきょく、なったら、毎日が。
ーー芸人になった当初は失敗して落ち込むこともあったのではないでしょうか。芸人でいう失敗って「スベる」ことだと思うんですけど。
小木:めちゃめちゃ落ち込みますよ。まだ慣れないですよ。
矢作:本当にね。3分間くらいのコントとかやって、1回も笑いが起きないみたいなスベり方をすると、焦りますよ。
小木:ショックっていうか恥ずかしいんだよね、あれね。恥ずかしいからみんなの記憶からなくなるまで待つしかないですよね、立ち直るには。
矢作:でも、「ネタがおもしろくないからウケなかったんじゃなくて、見せ方が悪かったんだろうな」って気持ちを切り替えてたな。「ウケないから自分には才能がないんじゃないか」とは思わなかった。自信過剰なんだろうな。
――ゆるいイメージがありますが、矢作さんは何事にも前向きに取り組むんですね。
小木:(キャンプ番組でも)けっこう、矢作は黙々とちゃんとやってるなって思った。ズルしないの。
矢作:そう。意外とハマりやすい人間なのかもしれない。おもしろそうだなと思ったものは、意外とちゃんとやってみて、そこから飽きたり飽きなかったり。
ーー連休が明けた5月。環境に馴染めないと感じる社会人や学生も多いと思います。お二人みたいにフットワーク軽く生きたい人にはなんと声をかけますか?
小木:人によるからなあ。
矢作:でも、そんなんね、まだ若いんだったら、やってみて、やめりゃいいんだから。やってね、向いてるか向いてないかわかりますよ。やめたときに、まだ別にどうにでもなるしね。
インタビュー後、「とにかくやってみる」精神のおぎやはぎに、若い読者に人気の「指ハート」にチャレンジしてもらった。
「え、これのどこがハートなの?」と話す二人にカメラマンが説明すると、「へぇ〜! ここの部分がハートになってるのねぇ〜。はじめて知った!」と、とても感心していた。
<おぎやはぎ>
小木博明(おぎ・ひろあき)と矢作兼(やはぎ・けん)によるお笑いコンビ。ともに1971年生まれの東京都出身。1995年にコンビ結成。『M-1グランプリ2002』では決勝4位、『第12回NHK新人演芸大賞』にて特別審査員賞を獲得するなど業界からの評価も高い。複数のレギュラー番組でMCを務めている。
「おぎやはぎのハピキャン ~キャンプはじめてみました~」
キャンプ初心者の出演者・スタッフが一丸となって「キャンプをイチから勉強していく」アウトドア番組。
■放送日時:毎週水曜深夜0:59~1:29(東海3県で放送だが、GYAO!でも視聴可)