安倍晋三首相の辞意表明に関連し、立憲民主党の石垣のりこ参院議員がTwitterに「大事な時に体を壊す癖がある」などと投稿したところ、多くの批判を浴びて謝罪した。
この問題について、大手新聞社は「どこも報じない」とするツイートが拡散した。
結論から言えば、この情報は誤りだ。この投稿の前日に各紙が報じている。BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。
Twitterで拡散している情報は、11万以上のフォロワーを持つアカウントが投稿したもので、8月30日にツイートされた。
石垣議員について報じた週刊誌「女性自身」の記事を引用したうえで、「多様性を掲げる政党が明らかな差別発言をしてるのに、大手紙はどこも報じない。こんな偏向された不利な状態で総理は戦って来たんですよね」と投稿した。
そもそも石垣議員は、なぜ批判を浴びたのか。
国に難病指定されている持病の「潰瘍性大腸炎」が悪化したために辞任を決意した安倍首相に対し、「大事な時に体を壊す癖がある」とツイートしたからだ。
総理といえども「働く人」。健康を理由とした辞職は当然の権利。回復をお祈り致します。
が、「大事な時に体を壊す癖がある危機管理能力のない人物」を総理総裁に担ぎ続けてきた自民党の「選任責任」は厳しく問われるべきです。その責任を問い政治空白を生じさせないためにも早期の国会開会を求めます
公益財団法人「難病情報センター」によると、潰瘍性大腸炎は下痢や血便を引き起こし、痙攣性または持続的な腹痛を伴うこともある。重症になると発熱、体重減少、貧血など全身の症状が起きる可能性もあるという。
安倍首相は第一次安倍政権でも、この潰瘍性大腸炎が悪化するなどして366日で辞任している。
石垣議員の投稿には、「難病や持病を持っている人は役職に就くな!働くな!ってことか」「不適切な表現だ」などと批判が集まり、同じく立憲民主党の議員からも「体を壊す癖ってなんですかね。その発言は人としてどうかと思いますよ」と批判があった。
この件をめぐり、枝野幸男代表は「申し訳ありません。執行部として不適切であるとの認識を伝え然るべき対応を求めました」とツイートした。
その後、石垣議員は同日中にTwitterを更新した。
福山哲郎幹事長より「”大事な時に体を壊す癖がある危機管理能力のない人物”という表現は、不可抗力である疾病に対して使う言葉として不適切である」と指摘を受けたと明かし、こう謝罪した。
「確かにこの箇所の表現に、疾病やそのリスクを抱え仕事をする人々に対する配慮が足りなかったと反省しお詫びします」
全国紙はどこも報じていた
この件を受け、先出のアカウントは「多様性を掲げる政党が明らかな差別発言をしてるのに、大手紙はどこも報じない。こんな偏向された不利な状態で総理は戦って来たんですよね」とツイートした。
しかし、先述の通り、この情報は誤りだ。
石垣議員の発言について、読売新聞や朝日新聞など大手5紙がいずれも報じている(以下、五十音順。いずれもネット上の記事の配信時間)。
朝日新聞:首相を「大事な時に体壊す癖」 立憲・石垣氏がツイートを「大事な時に体壊す癖」 立憲・石垣氏がツイート (8月29日午前1時27分)
産経新聞:「大事な時に体壊す癖」立民・石垣氏がツイート 批判受け謝罪(8月29日午前6時50分)
日経新聞:石垣氏、配慮足りず反省 「大事な時に体壊す」(8月29日午前9時50分)
どの新聞社も石垣議員がツイートして謝罪した翌日の29日のうちに報道した。
つまり、問題のアカウントがツイートする前日に「大手紙はどこも報じていた」のがわかる。
投稿は8月31日午後5時現在、4000件以上リツイートされており、注意が必要だ。
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