新型コロナワクチンの接種を後押しするため、自治体との調整など実務面を担う河野太郎ワクチン担当相。
高齢者接種の予約などを巡って起きた混乱をどう受け止め、これから始まる一般向けの接種に向け、どんな教訓を得たのか。
ワクチンを巡る誤情報や不正確な情報に対抗するために、正確な情報を届ける重要性を河野氏は強調した。
河野氏の接種はいつ?
ーー河野さんご自身は、まだワクチンを接種していないのですか?
まだです。私は高齢者には該当しませんから。
実は1月の終わり頃、田村憲久厚労相と、誰も接種しないようだったら俺と田村さんで最初に接種するしかないねと話していたこともありました。
でも、そんな話をしていたのが、もう夢のようですよね。
ーーでは、(地元の)神奈川県平塚市で住民として順番が来たら接種する。
そうですね、平塚で。
ここまでワクチンを接種したいという高齢者の方が多い状況では、大臣が率先して接種し、PRする必要もありません。
それだけ皆さんには、このワクチンの有効性が高いということを理解していただくことができたのだと思います。
ーー高齢者の接種をめぐっては、予約システムのパンクや混雑が起きています。こうした失敗を通じて得た教訓は一般接種へ生かされるのでしょうか?
電話による予約受け付けは難しいなというのが、正直なところです。
自衛隊が運営する大規模接種会場ではオンライン予約のみとしましたが、大阪会場は結果的に、30分で1週間分の予約受付を終了しました。
1つ言えるのは、オンラインを中心に予約を受け付けることが、スピードアップには大事だということです。
しかし、高齢者の間にはオンラインはやり方が分からないという声もあるのは事実です。
こうした点については役場で対応する、携帯会社の窓口でサポートする、あるいは中学生がおじいちゃん、おばあちゃんの予約を手伝うなど色々な取り組みを各地で考えてくださり、非常にありがたいと思っています。
一方、これから始まる一般接種の予約については、現役世代の多くはパソコンやスマートフォンを持っていますから、オンライン予約がメインになってくるだろうと思います。
「何か言われたら河野のせいにして」
ーー河野大臣は接種券がなくても、誰でもいいから余剰ワクチンを接種するよう発信も続けています。しかし、現場ではメディアなどから叩かれることを恐れて、廃棄を避けるために苦労している例もあるようです。
貴重なワクチンを無駄にしない、これが第一です。
自治体によっては、接種会場の隣に自衛隊の駐屯地があるから、余ったら自衛隊の人に接種するといったこともあるでしょうし、学校が近くにあるから、学校の先生に接種しますといったことでも構いません。
そこは自治体あるいは会場の特性で、工夫していただきたいと思っています。
余剰ワクチンがあれば、遠慮せずにうっていただきたい。
もしも何か言われたら、「河野がやれと言った」と伝えてください。僕のせいにしていただいて構いません。
こんなことを言うと現場を担当する方々には怒られてしまうかもしれませんが、1日1万人接種するとして仮に500人分がキャンセルや二重予約で余りました、と言っても大した数ではない。
仮に人が来なかったのであれば、ワクチンを無駄にしないように人を集めてもらえばいいだけの話です。
二重予約を防ぐシステムを立ち上げてから大規模接種を始めよう、なんてことを始めてしまうと、さらに接種が遅れてしまいます。
今はとにかくスピードが大事ですから、他のことを多少犠牲にしてでも、スピードを上げる。それが私の方針です。
根も葉もないデマ、打ち消していくしかない
ーーワクチン接種をめぐっては、副反応と有害事象(注)を混同したような議論も続いています。時には誤解を招くような報道もなされていますが、正確な情報発信という面で今後、政府として何か取り組む予定はありますか?
インフルエンザのワクチンに比べると、針が細いこともあり新型コロナワクチンはうつ時はあまり痛くないと言われています。しかし、新型コロナワクチンの方が副反応が強く出るというのは、紛れもない事実です。
たとえば接種から数時間後に腕が痛くなる、あるいは倦怠感を感じる。
2回目をうつと、3人に1人は37.5℃から38℃の熱が出るとも言われています。
ですから、副反応が出るという前提で接種した次の日は少しリラックスできる日程を組んでもらうことも重要かもしれません。
繰り返しお伝えしたいのは、確かに副反応も出るけれども、このワクチンは高い効果を発揮するということです。
副反応の負荷を考えても、得られる利益の方がはるかに大きい。我々もそのことをしっかりと説明していかなければいけないと思っています。
一方で、ワクチンに関するデマには根も葉もないものも多い。みんなで打ち消していくしかないだろうなと思います。
常識的に考えればわかるよね、といった内容のものもあるのは事実ですが、これは事実ではありませんよと伝えていかないといけません。
デマへの対応は非常に大事だと思っています。
アメリカでは政府だけでなく、色々な学会や科学者のグループがデマを検証する活動をして、ワクチンをみんなで接種しようという機運を高めています。
日本でも医師や科学者たちがグループを作って色々と発信してくれています。内閣広報室とも連携してもらっていますが、現役世代への接種を進めるためにはこうした取り組みをペースアップしていかないといけません。
(編集部注:有害事象とは、ワクチン接種後に起きた、あらゆる好ましくない出来事を呼ぶ。接種と因果関係が分からないもの、なさそうなものも含まれる。例えば接種翌日に転んでけがをしても、医療機関は有害事象として厚労省に報告する。これらのうち精査を経て接種との因果関係がはっきりしたものが、「副反応」と呼ばれる)
ーーワクチンとの因果関係が明らかになっていない人の死を、ワクチンによる死亡であると主張する人々もいます。
しっかりと、有害事象と副反応の違いについても伝えていかなければいけないと感じています。
インターネットでは様々な情報が拡散していますよね。
高齢者接種を後押しするためにはテレビや新聞での発信が重要ですが、若い世代の人々の接種を後押しするためにはネットでの発信が重要になってくると考えています。
情報届ける上で、「ブロック」は弊害にならない?
ーー情報発信をする上で、河野大臣はTwitterを活用するとともに、「ブロック」機能をよく使うことで知られています。なぜブロックするのでしょうか?
例えば道を歩いていて、見ず知らず人にいきなり「バカヤロウ」と普通は言わないでしょう。
もしもそんな人がいたら、避けますよね。
しかしネット上では、そういうことを平気でやる人がいます。SNSの陰の部分なのだと思いますが、そうした誹謗中傷がきっかけで亡くなった方もいます。
そういうことを許してしまうから、あのような事件につながるんだと思うんです。
だから、見ず知らずの人を誹謗中傷するような人は、弾かれて問題ないと思いますね。
ーーワクチンの正しい情報を届けるためにも、一旦ブロックを解除するといったお考えは?
それはあんまり関係ない。
ワクチンの情報発信については、官邸のTwitterアカウントがありますから。
あのアカウントが、確実な情報をきちんと発信していきます。それを皆さんに、しっかりと見ていただくことが大事だと思っています。