日本最古のメリーゴーランドにのってきた
魅惑の「カルーセル・エルドラド」。「カルーセル」とは「メリーゴーランド」の意。さらなる外観画像や、大きな画像はBit写真館にアップしてマス
子供の頃からメリーゴーランドが大好きで、たとえデパートの屋上にあるスモールサイズのものですら見かけると写真におさめずにはいられない私。これでもかとばかりに装飾を施された馬車に馬、女神、天使など乙女の好きなものをすべて詰め込んだメリーゴーランドはまさに! 遊園地周遊のハイライトを飾るにふさわしいのりものといえるでしょう。


そんな私のここ数年の憧れだったのが、「としまえん」にあるカルーセル・エルドラド。このメリーゴーランド、なんと20世紀初頭にドイツでつくられたアールヌーヴォー期の傑作だそうで、日本に現存する中では最古のものだそう。関西在住で遠方のため、なかなかいくことができなかったのだが、先日ついにのることができました! 20世紀初頭につくられたものが今なお現役で動いているなんて、それだけでもすごいと思いません?

入場後、まっ先に「エルドラド」に直行してみたところ、子供向けの遊具というよりはこれはもう「芸術品」といった趣き。しかし、なんだか妙にピカピカな気が。以前、ネット上の画像で見たときにはペンキなどもはげかかって、それがまたアンティークな風情を醸し出していたのだが……。「としまえん」広報の方に聞いてみたところ、昨年に生誕100周年を迎えたとかできれいに塗り直したらしい。

さっそくのってみたところ、眺めているより回転が速く、意外に目がまわる。でも、その疾走感、浮遊感がこれまたステキなのです。古いカルーセルならではの、回転するたびミシッ、ミシッ、ギシッ……という音がなんともいえない愛嬌となってました。あまりの楽しさに陶然となって、大人なのに3回も乗車してしまいましたよ……。

ちなみに、「エルドラド」とはスペイン語で“黄金郷”を意味するそう。ドイツの名匠、ヒューゴー・ハッセが「世界一、豪華な回転木馬をつくろう」ということで1907年に製作。
すべて手づくりなので、木馬などもよーく見てみると一体ずつ微妙に違うんですよ! 馬だけでなく、豚などがいるのも外国製ならではの感覚なのかおもしろいです。
そして、エルドラドはヨーロッパのカーニバルを巡業した後、1911年にアメリカのコニーアイランドにある遊園地へ渡ります。このときに、ルーズベルト大統領をのせたこともあるというのにはびっくり。
「としまえん」にやってきたのは1971年からだそうで、そんな数奇な運命を辿った後にまさか極東の地で日本の子供たちをのせて廻り続けることになろうとは、当のカルーセル・エルドラドもさぞびっくりしていることでしょう。

そんな由緒ある逸品なため書物に取り上げられることも多く、私の知る限りでは『ニッポン最古巡礼』(高田京子・清澤謙一・著/新潮社)という本とか、嶽本野ばら氏の小説『変身』(小学館)の中でも重要なモチーフとして登場してます。
あと50年くらい経って(まだ生きてたら)、そのときにまたのってみたい……と思いつつ「としまえん」を後にした私でした。
(野崎 泉)

としまえんHP
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