2023年10月27日に声優、歌手として活躍する今井麻美さんがVTuber“詩趣ミンゴス”(※読みかたは“ししゅみんごす”)としてデビュー。
VTuberとしての活動は“趣味”ということで、モデルやお披露目配信の制作費などはすべて自費だったという。
そんな詩趣ミンゴスについて、VTuberを始めようと思った経緯から、お披露目パーティーや昨年末に出演したライブイベント“Vack ON!! -bakuon- Vol.2”の感想、オリジナル楽曲『just save me』に込めた想い、そして今後の展望などを存分に語っていただいた。
詩趣ミンゴス(ししゅみんごす)
声優・今井麻美が友人たちの力を借りてバーチャル化。歌が大好きで、ゲームプレイは少しポンコツ。トークで皆さんと繋がって行きたいと思っている(今井麻美とほぼいっしょ)。
――最初にVTuberとして活動しようと思った経緯から教えていただけますか?
詩趣ミンゴス2年以上前のことになりますが、もともとは私の音楽活動のバンドメンバーとして参加してくれているベーシストの竜くん(川村竜さん)の配信にお邪魔させていただいたときに、当時、VTuberの神宮寺さんの『Among Us』配信にハマって毎日観ていたので、そのことをお話したんです。
すると、竜くんと神宮寺さんが知り合いだったということが判明しまして。私もその配信に参加させていただくことになって、そこでいづみちゃん(ななしいんく所属のVTuberの柚原いづみさん)と出会ったことが始まりです。
――スマートフォンでPCのモニターを直撮りして配信していたときですね。
詩趣ミンゴスそうです(笑)。当時、私はMacのPCを使っていたので、『Among Us』をプレイするためにBoot CampでWindowsを起動していました。なので、メモリがカツカツで、ゲームをプレイしながら配信するのがきびしくて、苦肉の策としてスマホでPC画面を直撮りするというアナログな方法で配信していたんです。
それを見た、いづみちゃんがずっとかわいくケタケタ笑いながらも、「パソコンを買うんだったら、相談に乗りますよ」と言ってくれて。私はそれまで直接会ったことのない、いわゆるネット上のお友だちというのがいなかったので、すごくうれしかったんですよね。
私は「ワガママに聞こえたら嫌だな」と思って、ふだんあまり人に甘えられないタイプだったりするのですが、いづみちゃんがすごく人懐っこい方だったので、いづみちゃんになら困っていることとかを相談できるような空気を感じました。
――確かに配信でそんなやり取りをされていましたね。
詩趣ミンゴスそれで配信後に「本当にご相談してもいいでしょうか?」と連絡したら、ちょうど年末の時期だったので「じつはコミケの準備があって、年末は手が空かないですが、年が明けたらお話ししましょう」と言ってくれて。
その後、年明けから「めちゃくちゃパソコンに詳しい人を連れてきました」と連絡をくれて、まりちゃん(VTuberの兎鞠まりさん)を含めた3人でお話しすることになったのですが、何の利害関係もない私にも的確にアドバイスをくれて、私はどんどんふたりに懐いていきました。
もしかしたら、コラボ配信をするときとかに、たくさんお友だちがいたほうがいいみたいなことがあるのかもしれないですが、そういうのとは違った仲間感というか、受け入れていただいている感みたいなものを強く感じたんです。
――すごくいい関係性ですね。
詩趣ミンゴスその後、『今井麻美のニコニコSSG』にゲストとしてふたりに来ていただいたときに本当に軽いノリで「ミンゴスさんも(VTuberに)なったらいいんじゃない?」と言われて(笑)。
当時の私はVTuberについて何もわかっていなくて、ふたりから「すぐできるよ」と誘われたので、「それならやってみようかな」と急に舵を切ったのがキッカケでした。
【ゲスト兎鞠まり&柚原いづみ】今井麻美のニコニコSSG第157回【4月12日配信】
※本動画の会員限定パートにて上記の話題が出ていた。
――不安などはなかったのですか?
詩趣ミンゴスもちろん、未知の世界だったので不安がなかったわけではないですが、ふたりに付いて行けば、いままでの自分の人生とは違ったものが見えるような感覚もあったので、思い切ってやってみようと思いました。
――お話を聞いているとわりと気軽に始められると思われていたような印象がありますが、実際に準備を進めてみていかがでしたか?
詩趣ミンゴス趣味の延長線上で始めるつもりだったので、当初は2Dのキャラクターがちょこちょこ動くぐらいのものをイメージしていたのですが、3Dで作ることになったので、めちゃくちゃたいへんでした。
――3Dで作ることにしたのには、どういう理由があったのでしょうか?
詩趣ミンゴス私がVTuberになるための相談をするグループの中にいづみちゃんとまりちゃんに加えて、最終的にママになってくれたなつめえりちゃんと、パパになってくれた人生つみこちゃんもいらっしゃったんです。
※VTuberの世界では、キャラクターデザインなどを担当した人のことをママ、モデルの制作などを担当した人をパパと呼ぶ。
本当にVTuberの主戦場で戦っている方ばかりだったので、いざ作るとなったときに「ミンゴスさんは歌があるから、ライブができるように3Dで作ったほうがいいんじゃない?」と提案してくださって。私もそれを聞いて「確かにどうせ作るんだったら、趣味程度でちょこちょこやるよりも、3Dを作ったほうがより世界が広がるな」と感じました。
じつは、2Dと3Dの両方を作るという案もあったのですが、当時から絶対的な信頼を置いていたまりちゃんが「ミンゴスさんは3Dだけでいいと思う」と言ったので、私も「うん。そうする!」と迷わず返事をして。でも、本格的に動き出してすぐに現実が押し寄せてきました……(笑)。
――気軽に始めるつもりが、そうではなくなったと。
詩趣ミンゴスそうなんです。しかも、ここからが私が反省すべきところなのですが、うまく舵取りをできなかったんですよね。というのも、皆さんは私のバーチャルな姿を作ること以外にも、配信をされたり、コミケに参加したり、ほかにもVTuverとしての活動以外にたくさん仕事を抱えていらっしゃって、いつ手が空いているのかわからなくて。
とくに私の周囲には個人で活動されているVTuberの方が多いので、そういう方々は自分が何もしなければ、その日の仕事は何もないけれど、実際はそんなことはまったくなくて、1ヵ月先、1年先を見越して、どういう活動をしていくかということをつねに考えながら生きていらっしゃるんですよね。だからこそ、そういった中に「趣味でVTuberになりたい」と言っている人の作業をする隙間がどこにあるのか想像がつかなくて、ずっと遠慮をしてしまって。
本当に皆さんやさしいので「そろそろミンゴスさんのVTuberについて話し合おうよ」とせっついてくれたりしたのですが、私が「○○さんは○○まで仕事があるって言っていたから忙しいだろうな」と勝手に想像して、「本当に空いたタイミングでいいです」と断ってしまったりしていました。
もちろん、そのあいだにもデザインがあがったり、少しずつ進んでいたりもしたのですが、最後の体(モデル)を作る作業がいちばん時間も労力も掛かるので、「私のはおまけみたいなものだからムリしないで」と言い続けているうちに1年近く経過してしまって。「どうしようかな?」と思っていたときに、2月18日に開催される“VIRTUAL歌伝2024~次元をつなぐアニソンのタスキ”のスタッフさんから「以前、VTuverを作られると話されていましが進捗はいかがですか?」とお問い合わせいただいたんです。
正直、その段階ではまだ完成の目処がまったく立っていなかったので、「確認してみます」とお返事をした後、勇気を出して「じつはこういうオファーが来ていて、いついつまでに体が完成していれば参加できそうなんですけど、いかがでしょうか?」と皆さんにお話ししたら、「待ってました!」と言わんばかりに集まってくれて、一気に動き出しました。
――そんなことがあったのですね。
詩趣ミンゴスやっぱり私が主体性を持って動かなくてはいけなくて、それがこの世界で生き残っていくために必要なスキルなんだなと痛感しました。再び動き出してからは、細かく期日を決めたり、リモートで定期的に集まって意見をすり合わせたり、それまでが嘘のように進んでいきました。
――定期的に集まったときは、具体的にどのような話をされていたのですか?
詩趣ミンゴスたとえば、頭の花の飾りを決めたときは、ママがその場でイラストを描いて、それを見たパパが3Dとしての整合性を保ちつつ、イラストを再現できるように自身の技術と相談して、「イラスト的にはこういうお花のほうがいいけれど、3Dにする場合はこういうほうがいいと思うよ」と提案する感じです。
そのやり取りもすごくお互いをリスペクトしていることが感じられてとても素敵でした。ほかにも、飾りの位置が数ミリ違うと影の見えかたも大きく変わるので微調整したり、スカートのレースの模様はどういうパターンの柄がいいのかということを話し合ったり。
――そんな細かいところまで!?
詩趣ミンゴスそうなんです。私自身はまったくそんなことはなかったのですが、私以外の全員が「あのミンゴスさんがVTuverになるんだったら、恥ずかしいものは作れない!」という熱い気持ちを持ってくれていて。とくにパパは自身のモデル以外を作るのが初めてで、ママは私(今井麻美)のことをもともと好きでいてくださっていたこともあり、熱量がすごかったです。
――それはうれしいですね。
詩趣ミンゴス私は、ふたりが描いては消し、描いては消しというようにくり返していく様子をモニター越しに見ていたのですが、ドキュメンタリーとして全部動画を撮っておけばよかったと思うくらい楽しかったです。
しかも、私からすれば作っていただけるだけで本当にありがたくて、「細かいところはおまかせします」という気持ちだったのですが、「ミンゴスさんはどっちが好みですか?」と私の意見を必ず聞いてくれて。
正直、技術的なことはまったくわからないので1時間くらいずっと黙って見ていて、「どう、ミンゴスさん?」と聞かれたら、「大丈夫です!」と答えるだけになっていたこともありましたが(笑)。
――(笑)。
詩趣ミンゴス完成して動かしたときは感動し過ぎて泣いてしまいそうでした。クオリティーもめちゃくちゃ高いですし、私の好きなテイストが存分に盛り込まれていて、満足できるものに仕上がりました。携わってくださった皆さんには感謝してもし切れないですし、本当にいい出会いだったなと思います。
――素敵な縁ですね。「大丈夫です!」と答えるだけだったときもあったとのことでしたが、意見を出したところでとくにこだわった点などがあれば教えてください。
詩趣ミンゴス皆さんが「ミンゴスさんがずっと気に入るものがいいと思います」と言ってくださっていたのですが、私はどちらかというと自分を客観視できないタイプなんですよね。分析魔なので、人のことはすぐに分析するんですけど、自分のことになるとよくわからなくて。いざ自分を型取るものを作るとなったときに、どういったものが好きなのか、どういったものがいちばん私らしいのかというのがすぐには出てきませんでした。
ただ、私の場合は中身が今井麻美だということを明らかにしてVTuberになるので、見た目がまったく違うと面を食らってしまうと思って。見たときに「あっ、ミンゴスさん(のVTuber)だな」とわかってもらえるほうがいいだろうとは考えていました。
そこで改めて自分と向き合うことにしたのですが、そのときに頭のどこかにずっと残っていた「ミンゴスさんはライブができるじゃん」という、まりちゃんが言った言葉を思い出して、「そうか!」と閃きました。
ライブのときの私はふだんの今井麻美とは少しテイストが違っているじゃないですか。その“ステージに立っているときの今井麻美”をイメージしてできたのが、この子(詩趣ミンゴス)なんです。
白いドレスだったり、裸足だったり、髪もふだんはストレートですが、ライブではウェーブをかけていたり、少し女神チックなイメージだったり、「ライブの今井麻美はこうだ!」といようなものを盛り込んでいきました。
さらに、皆さんからも「こうしたほうがミンゴスさんっぽい」、「ほかの人と差別化するならこういう要素を入れてみたら?」とアドバイスをいただいて、どんどん形になっていきました。
なので、まだ名前も決まっていなかったころに、なつめえりちゃんに描いてもらった詩趣ミンゴスのイラストをベースに、私のライブ衣装を作ったりもして。そのくらい違和感がなかったです。
今回のお衣装、デザイン:なつめえりさん 制作: 園山 織衣さんでした!素敵過ぎて! https://t.co/oErOpUhcDY
— 今井麻美 (@asamingosu)
2022-10-15 21:33:01
――確かにその衣装をライブで見たときも、いい意味でいつも通りでまったく違和感がなかったです。
詩趣ミンゴスそうですよね! あとひとつこだわった部分があって、それは耳を付けていることです。ふだんの私は絶対にこういうものを付けたりするタイプではないのですが、ママのなつめえりちゃんと姉妹に当たるまりちゃんに耳があるので、「私も耳がほしいです」とお願いしました。どうしても一族の証がほしくて(笑)。
――一族の証(笑)。
詩趣ミンゴスその耳についてもすごく細かくて、「耳は最初から生えているものですか? それとも付けている耳ですか?」と質問されて。
私的には着脱可能のイメージだったのですが、ヘアバンドとかが見えるとビジュアル的にイマイチだと思ったので「じつは付け耳でした」と言わないとわからないようなデザインにしていただきました。なので、耳を動かそうと思えば動かすこともできたのですが、あえて動かないようにしているのもこだわりです。
――なるほど。そんなこだわりの詰まった詩趣ミンゴスですが、モデルの制作費はすべて自費といろいろなところで話されていますね。
詩趣ミンゴスそうなんです。老後のための貯金を切り崩したので自腹です(笑)。この投資が吉と出るか凶と出るかはまだわかりませんし、VTuberとしての活動によって経済的に潤うとは思えていないというのが正直なところです。ただ、金銭面ではなく、心の面では投資以上のリターンがあったので、貯金を切り崩したことを後悔していません。
――それはよかったです。ちなみに2023年10月27日に行ったお披露目パーティーでも、「このイベントのチケットの売り上げが重要」みたいな話をされていましたが、そちらはどうだったのですか?
詩趣ミンゴス本当に多くの方にご視聴いただいて、チケットの売り上げ的にはまずまずでしたが、スタジオ代やスタッフさんの人件費などをお支払いしたら、ほぼ利益はなかったです。
――そのあたりも自費だったのですね。ということは、チケット代で制作費が回収できていなかったら、また貯金を切り崩すことになってわけですね。
詩趣ミンゴスそうです。もし足りなかったら自分で払うというリスクを背負ってやりました。リアルなお話をすると、VTuberとしての活動は声優や歌手と比較にならないぐらい設備や技術が必要で、金銭的にもめちゃくちゃ掛かるんですよね。
正直、収益という面だけで考えると、今回のお披露目パーティーよりも、X(旧Twitter)で「いまから○○でトークライブをやります」と告知をして、生身でイベントをやって空き缶とかにチップをいただいたほうが多いと思います(笑)。
そういう意味では、声優の利点をすごく感じました。声優として活動していると「声優さんは投資が少なくていいですよね」とよく言われるんです。ただ、衣装代やメンテナンス代なども掛かりますし、「実際はそんなことはないのにな」と思っていたのですが、VTuberはそんなの比ではなくて。体ひとつで活動できる、声優という仕事の素晴らしさを改めて噛み締めています。
――イベントの制作費まで自費だったり、それだけ覚悟を決めてVTuberとして活動されているにも関わらず、「VTuber活動は趣味です」と言っていたのには何か理由があるのですか?
詩趣ミンゴス私はVTuberという立場において、すごく複雑な立ち位置にいると思っていて。たとえば、私のお友だちはフリーの方が多いので、VTuberの活動自体が生活に直結していて、私でいう声優と同じプライオリティーになるわけですよね。
そんな中で、最前線で活躍されている皆さんを見ているからこそ、私はまだVTuberの活動を主戦場にするまでの覚悟と準備ができていないというのが正直なところです。それこそ、皆さんとお話ししていると、「いまは○○が流行っている」とか、「この機材が便利だったよ」とか、探求心やアンテナの感度がすごく高くて。だからこそ、何の知識も技術もない私が「VTuberになりました」と言うのはおこがましいと感じて、完成する前はずっと「趣味で作っています」と話していたんです。
ただ、いざ完成してみると「趣味」という言葉で片付けるには納得できないクオリティーのものが仕上がって、今度は「趣味です」と言うのが申し訳なくなってしまって。
――確かに難しいところですね。
詩趣ミンゴスいろいろ悩んだりもしたのですが、あるときハッと気付いたんです。私たちの仕事もそうですが、VTuberも好きなものを仕事にしている職業じゃないですか。趣味という言葉のもとを探っていくと、趣をどれだけ味わうかということで、それが極まると仕事になるんですよね。そういう意味で趣味というのは、好きなものをどれだけ好きだと形にしていくかというものだと改めて感じました。
それで名前を決めるときに、「趣味程度なんです」という謙遜の気持ちと、「趣味」と言うことに申し訳ない気持ちがありつつ、「私はこういうものがすごく好きです」という想いを趣という言葉に込めました。
そこに今回のVTuberとしての体には、「ライブができたらいいな」という想いもあったので、それを“うた”の意味もある“詩”という言葉を足して、詩趣ミンゴスという名前を付けたら、「私のやりたかったことそのままだ」とすごく腑に落ちたんです。なので、いまは趣味でもあり、趣味ではなくなったというところに落ち着きました。
――そういう想いが込められていたのですね。そこから徐々に活動を開始されていますが、これまで見えていなかったVTuberの苦労などはありましたか?
詩趣ミンゴスやっぱりいちばんたいへんだと思うのは、毎日配信する継続性だったり、モチベーションだったりをどう保つかということですかね。しかも、配信にはさまざまなタイプがありますが、どれを選んだとしても、すべてアウトプットの仕事なんですよね。
もちろん仕事と割り切ってやれば続いていくのかもしれませんが、インプットしていないとアウトプットは絶対に枯渇してしまうので、それを毎日続けるには相当深い源泉が必要だと思います。
そこは尊敬できる点であり、必要不可欠な要素だなと。継続は力なりではないですが、つねに「こんなことがしたい」、「こういう風にしていきたい」というような欲求が強くないと、活動を続けていくのはきびしいのかなと感じました。
――毎日配信するモチベーションを持ち続けるのはすごいですよね。
詩趣ミンゴスそれを苦に思わない人は本当に天職だと思います。私とかはまだ「明日の仕事があるから……」というように考えてしまうので、天職と言うにはまだそこまでの覚悟はできていないです。
――改めてにはなりますが、お披露目パーティーの感想もうかがえますか?
詩趣ミンゴスたいへん過ぎて、なんとか終わったという気持ちが大きいです(笑)。
――台本の制作やゲストへの連絡などもすべて自分で行われていたんですよね?
詩趣ミンゴスそうなんです。うちの事務所(EARLY WING)は相談すればきっと手伝ってくれるので頼ればよかったんですけど、「全部自分でやらなくては」と思い込んでしまって。
もちろん、いづみちゃんやまりちゃんたちも「私のときはこうしたよ」というようなアドバイスをくれていたりしたのですが、やっぱり私はおんぶにだっこになれない性格なので、ゲストとして出演していただくのであれば、手伝ってもらうのは違うかなと。
それで誰か頼れる人はいないかと考えていたときに、以前、私の音楽活動のアシスタントを担当してくださっていた、二村一平さんが現在はRIOT MUSICさんでVTuberの音楽プロデューサーをやっていることを突然思い出したんです。それで使えるコネはすべて使おうと思って、「ご相談があります。一度お話しを聞いてはいただけませんでしょうか?」と詳細は何も伝えず、渋谷のもんじゃ焼き屋さんに呼び出しまして……(笑)。
――唐突に(笑)。
詩趣ミンゴスしかも、予約ができなかったお店だったので、私は集合時間よりも1時間くらい前から並んで席を確保しました(笑)。それで、もんじゃをつつきながら「じつは、今度VTuberになることになりまして」とお話したところ「何の話かと思いました。そういうことであれば、お手伝いできますよ」と提案してくださって、藁にも縋る思いでお手伝いしていただくことになりました。
それでようやく制作の枠組みはできたのですが、イベントの台本などは、私のほうで準備したので、若いころのイベントを思い出して懐かしい気持ちになりました。当時は本当にいろいろなことをやっていたので。
そして、配信当日はプレイヤー兼裏方みたいな立ち位置で、自分のこと以外にもゲストの皆さんが嫌な思いをしないようにすべく準備を整えていたりもしたので、とにかく必死でした。
――VTuberとしてのイベントにもまだ慣れていないうえに、裏方的な仕事もあったとなると相当たいへんだったと思います。
詩趣ミンゴスなんとか乗り切りました(笑)。ただ、たいへんではありましたが、改めて私は恵まれているなとも感じました。というのも、当日来てくださったスタッフさんが本当にプロの方たちばかりで。
しかも、「じつは○○でカメラをやってました」、「○○のライブで音響を担当していました」というように、以前お仕事でお世話になったことのある方々で、私がひとりで企画してやるイベントだということも知っていて、本来の仕事以上のことをしてくださったんですよ。
終わった後も「本当に楽しかったです。また、何か活動されるときは絶対に声を掛けてくださいね」と言ってくださって。最近は規模の大きな仕事も増えてきて、スタッフひとりひとりの方のお名前も覚えられず、イベントの前後に皆さんに向かって挨拶するというような現場もあったりするので、そうして声を掛けていただけることがうれし過ぎて泣いてしまいそうでした。
そうした人の温かに支えられて、無事に配信を終えられたので、達成感よりも安堵感が強すぎて、それ以降の記憶がまったくありません……。ただ、まだまだ拙い部分はあったと思いますし、VTuberの世界の常識とかもわかっていない部分もあって、「あそこはこうしたほうがよかったな」というようなものが時間の経過とともに出てきています。それとともに次回は絶対に事務所に頼ろうと思いました(笑)。
――(笑)。お披露目パーティーでは、オリジナル楽曲の『just save me』も公開されました。作詞は今井(詩趣ミンゴス)さんが担当しているとのことですが、こちらに込めた想いも聞かせていただけますか?
詩趣ミンゴス今回は私がVTuberになったという事実を歌詞に書こうと思いました。VTuberになったということは、データ上の存在になるということですよね。そして、データ上の存在になるということはデータをセーブしなければ、この世から消えてしまう存在でもあるということです。もちろんクラウドとかを使って外部からアクセスできるようにしていれば別ですが、そうではないとしたらセーブしないと消えてしまうので、それを「いますぐに私をセーブしてほしい」という題材で作詞をしていきました。
――とくにお気に入りの歌詞はありますか?
詩趣ミンゴスDメロの「パパもママも友だちも」の部分ですね。何も知らない人がふつうに受け取ると、両親と友だちのことだと感じると思いますが、じつは私のVTuberを作り出してくれた周囲の人たちのことを指しています。
パパは人生つみこちゃん、ママはなつめえりちゃん、友だちはいづみちゃんだったり、まりちゃんだったり、えれっとさん(イラストレーター兼VTuber)だったりを指していて、VTuber仲間をストレートに歌詞に書きたくて。わかる人にはわかるというようにしたかったので、そういう意味では攻めた歌詞だなと思って、気に入っています。
――作曲は今井さんの音楽活動のプロデューサーでもある濱田智之さんですね。今井麻美名義の活動では、楽曲を制作する際の楽曲の方向性などを濱田さんにおまかせすることが多くなっていると以前インタビューで話されていましたが、『just save me』については自分から要望などを伝えられたのでしょうか?
詩趣ミンゴスそうですね。『just save me』については、「こんな感じにしてほしいです」と好きな曲をいくつか送って作っていただきました。編曲はアフロさん(音楽家の福富雅之さん)に担当していただいています。
――本来は濱田さんが編曲もされる予定だったのに体調を崩されてしまったんですよね?
詩趣ミンゴスそうなんです。本当に突然だったので『今井麻美のニコニコSSG』の現場から電話を掛けて交渉したことを覚えています。結果的にアフロさんテイストを入れていただいたことで、よりデジタル感が増したのでよかったです。
――ちなみに現在『just save me』を聴く方法がないと思いますが、何か聴ける方法を準備していたりはするのでしょうか?
詩趣ミンゴス1番は“今井麻美のミンゴスちゃんねる”にアーカイブとして残っている、お披露パーティー前半の動画で聴けますが、先ほどお話ししたDメロの部分は含まれていないんですよね。なんとかしたい気持ちはありますが、現状お伝えできることはないです。
ライブなどでは可能な限り歌えればと思っていて、直近だと、2024年2月18日に開催される“VIRTUAL歌伝2024~次元をつなぐアニソンのタスキ”でおそらく歌うはずなので、ぜひそちらを観ていただければと(※)。
[2024年2月13日20時25分情報追記]
※2024年2月13日20時から配信された『今井麻美のニコニコSSG』第202回にて、本人より“VIRTUAL歌伝2024~次元をつなぐアニソンのタスキ”では、『just save me』を歌唱しないと訂正があったため、情報を追記しました。
【#詩趣ミンゴス お披露目パーティー会場】今井麻美が3Dに!?前半部分をお届け☆
――ちょうど話題に出たので、“VIRTUAL歌伝2024~次元をつなぐアニソンのタスキ”への意気込みなども聞かせてください。
詩趣ミンゴスこのイベントがあったからこそ、詩趣ミンゴスが形になったと言っても過言ではないくらい、私にとっては大事なイベントです。いろいろなアニソンとかを歌わせていただくことになりそうなので、期待していてください。
――詩趣ミンゴスの新しい一面が見られそうですね。
詩趣ミンゴス自分では新しいのか、新しくないのか判断できないので、わからないです(笑)。ただ、見知った仲間がたくさん出演しますし、いままで同じ世界で活躍されていた方々が、また違う土俵で集まってきているという意味では、すごくフロンティア感があって、私もめちゃくちゃ楽しみです。
――順番が前後しましたが、2023年12月29日にはVTuberフェスの“Vack ON!! -bakuon- Vol.2”にも出演されました。こちらの感想もうかがえますか?
詩趣ミンゴス初めてのこと過ぎてどうしていいのかわからず、めちゃくちゃ踊ったら、皆さんから「詩趣ミンゴスがいちばん踊ってた」と言われました(笑)。私はダンスが得意ではないので、生身のライブではたまにダンスに注力した曲があったりしますが、基本的にその日の気分で身振り手振りをやったりするくらいで、ガッツリ踊るみたいなことはそんなになくて。
ただ、VTuberとしてパフォーマンスするときはマイクを持っていないですし、センサー的な問題なのか、実際に人間が動くよりも大きく動かないとカッコよく見えないんですよね。もしかすると、ダンスができる人がVTuberとして踊ったら関係ないのかもしれないですが、私みたいな素人がちょっとした身振り手振りをすると、ヌルヌルしてしまって決めがないというか、なんか違和感があるんです。
もちろん、私のほうでも詩趣ミンゴスとしての姿を確認できるのですが、ふだんよりひと回り大きく動かないと活き活き見えないので、それを意識した結果、ふだんのライブ以上に動くことになって疲れました……(笑)。
――今井麻美さんとしてステージに立たれているときとは違った印象があったのは、そういうところだったのですね。
詩趣ミンゴス視覚的な物の見えかたが違うのもあるかもしれないですね。生身でなら正しいと思う振り付けをしても、なんかバキッと決まらず、バキッ、バキッ、バキッと動かないといけないので、筋肉痛がすごかったです。ちなみに、お披露目パーティーのときはオープニングの途中でふくらはぎがつっていました(笑)。
――えっ!? そうだったんですか。
詩趣ミンゴス自分でもビックリしました。
――大きなトラブルにならずよかったです。ちなみに歌的な部分で意図的に変えられているようなところはありますか?
詩趣ミンゴスいまのところは、そこまで大きく変えてはいません。ただ、『just save me』のベースになる部分を家で録音したのですが、一発録りで行いました。
ふつうのレコーディングだと、何回か録音して、その中からいいところを抜粋したりするのですが、私の技術ではそういうことはできないので、一発録り以外の選択肢がなくて。その結果ふだんのレコーディング以上にたいへんでした。
――そんな苦労があったとは……。“Vack ON!!”では、その『just save me』に加えて、セルフカバーとして今井麻美名義の楽曲から『Precious Sounds ~風が残していった~』と『朝焼けのスターマイン』、そしてカバー曲として『だれかの心臓になれたなら』を披露されましたが、選曲の理由などを教えていただけますか?
詩趣ミンゴス『just save me』は、唯一の詩趣ミンゴスの持ち歌なので、こちらは絶対に披露させていただきたいなと思いました。フェス形式のイベントだったので、ほかの出演者の方々はご自身の曲を歌われていたり、カバー曲を歌われていたり、いろいろな方がいらっしゃいました。
そんな中で私は中身の名前とVTuberの名前の両方を公開しているので、「こういうときこそ融合できるのでは?」と思って、自分の曲の中で私らしい曲を選んだ結果、『Precious Sounds ~風が残していった~』と『朝焼けのスターマイン』の2曲になりました。
出番は持ち時間が決められているものの歌う曲数については指定がなく、トークを含めると4~5曲は歌えそうだったのですが、私はVTuberとしては新人なのでしっかり挨拶する時間も必要だなと思って、トーク時間を長めにとって歌は4曲にすることにしました。
そうすると残りの1曲はせっかくならカバーを歌いたいということで、2023年に初めて聴いたときに「すごく好き」と感じて、いつか歌えたらと思っていた『だれかの心臓になれたなら』を選びました。
――『だれかの心臓になれたなら』、そして、お披露目パーティーで歌われた『ヴァンパイア』、『神のまにまに』はすべてボーカロイド楽曲ですが、これには何か権利的な問題や意図などがあるのでしょうか?
詩趣ミンゴス権利的なお話でいうと、ボーカロイドより一般的な曲のほうが取りやすいので、それが理由ということではないです。ただ、ボーカロイドはオリジナルのカラオケを公開されている方がいらっしゃったりして。
『神のまにまに』は濱田さんに音源を作っていただいて、『ヴァンパイア』はJOYSOUNDさんのものをお借りしたものだったのですが、『だれかの心臓になれたなら』は楽曲を作られているユリイ・カノンさんがもともとの音源を「好きに使ってください」と公開してくださっているんですよね。そうしてくださることで、好きなニュアンスがそのまま出せるという意味でもとてもいいと思いますし、個人的にVTuberとボーカロイドは親和性がすごくあると思っていて。
ボーカロイド系の作曲をされている方の楽曲はテンポが速くて、息継ぎも少ないので、生身の人間が歌うのはけっこうたいへんだったりすることが多いのですが、でも、そこがVTuberと親和性が高いと感じるからこそ、私がVTuberとして歌いたい曲はそういう傾向がどうしても強いのかなと思っています。
――ボーカロイドの代表とも言える、初音ミクは“電子の歌姫”と呼ばれていたりもしますからね。ちなみにお披露目パーティーで『神のまにまに』を歌唱する前に「以前から準備をしていたけれど、なかなか披露する機会がなくて」といったようなことを話されていましたが、こちらについてはいかがでしょうか?
詩趣ミンゴスじつは、いづみちゃんとまりちゃんと3人で歌ってみたをやろうと動いていたのですが、完成直前でずっと頓挫していたんです。それで、「このタイミングしかない」と披露することになりました。
――それは詩趣ミンゴスが完成する前に、今井麻美としてやろうとしていたということですか?
詩趣ミンゴスそうですね。
――そうだったのですね。続いての質問ですが、以前、アーティストの今井麻美としてインタビューさせていただいたときに、声優活動がアーティスト活動に、アーティスト活動が声優活動にそれぞれいい影響を与えていると話されていました。まだ活動を始められてそこまで時間は経っていないですが、VTuberの活動が声優やアーティスト活動にいい影響を与えていると感じたことはありますか?
詩趣ミンゴスそれこそ先ほどもパフォーマンスの部分で動きを大きくしないと決まらないというお話をしましたが、客観的に見たからこそ気付けたことだと思います。どうしても生身の体になったときはどこか自分に甘くなっていたのですが、今回の件をキッカケに今後はトータルパフォーマンスをもっと底上げしていかなければと感じたので、それは音楽活動にいい影響を与えていると思います。
声優活動に関してはまだ技術的な面ではそこまで感じることは少ないですが、メンタルの部分でとてもいい影響があるような気がしています。たとえば、自分から勇気を出してアピールしていかないと誰も見つけてくれなかったりするところとかですかね。
やっぱり声優生活を長く続けていると、初めのころに持っていたパワーみたいなものが薄れているわけではないけれど、そこまで必要とされないキャリアになってきているんですよね。
そのもう出す必要がないと思っていた部分を刺激されて、自分の持っているパワーや自分から発信していくことの素晴らしさや大切さを改めて噛み締めることができたので、声優活動にもいい影響があると思います。
――今後の活動についても聞かせてください。VTuberというと、歌ってみた動画や歌枠配信を行っている印象がありますが、今後そういったものを行う予定はありますか?
詩趣ミンゴスやろうと思えばできるとは思いますが、先ほど少しお話しした通り、いかんせん技術や配信環境が整っていなくて。決して興味がないわけではないですし、自分の得意分野のひとつでもあるので、やりたいなとも思ってはいるのですが、ゲームや雑談配信と比べると、とてもハードルが高いんですよ。
そもそも、どこで歌を録るのかもわからないですし、仮に自宅で録るとなるとエコーすらかけられないので、音質が悪すぎて逆に皆さんをガッガリさせてしまいそうで。
――期待されている方も多いと思いますので、環境などが整ったらぜひ! もうひとつ配信関連の質問です。先日、『雀魂』の配信をされていましたが、たとえば『アイドルマスター』や『ぷよぷよ』、『グランブルーファンタジー』など、今井さんが出演されている作品をプレイする可能性はあるのでしょうか?
詩趣ミンゴス各タイトルの配信規約的に問題ないようだったら、ぜんぜん大丈夫だと思います。なんなら今井麻美として配信しても問題ないはずですし。なので、可能性としてありですが、『グラブル』は私個人のアカウントでやっていて、知り合いのアカウントが映ってしまう可能性があるので、やるのであれば配信用のアカウントを作って、ゼロから始めることになるとは思います。
――続いて、詩趣ミンゴスのサインはどのように決められたのでしょうか? 今井麻美さんのものと比較するとシンプルなように感じたのですが。
詩趣ミンゴス最初は、お披露目パーティーのエンドコメントのために書いたのですが、雰囲気的に日本語の表記ではないと思ったので、ローマ字にしました。
――つぎの質問です。現在、注目しているVTuberはいますか?
詩趣ミンゴスやっぱりいま私が注目しているのは、朝ノ瑠璃ちゃんですね。“Vack ON!!”のときに私のつぎが朝ノ瑠璃ちゃんで、先日ライブも観に行かせていただきました。
――Xでポストされていましたね。
詩趣ミンゴスライブなどのパフォーマンスのすごさはもちろんですが、彼女はVTuberから声優の世界に飛び込んできていらっしゃって、私とは逆のパターンということもあってシンパシーを感じています。流れが真逆なので、体感としてはまったく違う部分もあるかもしれないですが、ある程度着地をすると、きっとお互い感じ合えるものがあるのかなという気がしているので、これからも仲よくしてもらいたいと思っています。
――それでは、今後VTuberとしてやってみたいことはありますか?
詩趣ミンゴスいまはコラボ配信をするにしても声を掛けていただくのを待っている状態なんですよね。それこそ、これまでに配信したいづみちゃんたちとの『雀魂』も、人生つみこちゃんとの『labyrinth』も声を掛けてもらった形で。なので、2024年は勇気を出して、自分からコラボしてみたい人に声を掛けることを目標にしたいです。
――どんな人とコラボするのか楽しみです。最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。
詩趣ミンゴスまだまだ本当に趣味程度の回数しか配信できていないので、「せっかくVTuberになったんだから、毎日配信してほしい」と思ってくださっている方もいるのではないかと。ただ、いまがんばり過ぎるときっとガス欠してしまう気がしています。状況や環境が整ってきたら回数を増やしていければと考えているので、自分のできる範囲でかつ、皆さんがなるべく覚えてくださっているあいだに少しずつ活動の場を広げていきたいです。なので、生暖かく見守っていただけたら幸いです。がんばります!
インタビューは以上。最後に取材後に、取材スタッフと会話している様子をショート動画でお届け。