「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」の発売を皮切りに、昨今は過去の家庭用ゲーム機が「ミニ」や「クラシック」という形でリリースされています。代表的なソフトを数十本ほど内蔵し、過去を懐かしめるとともに、途中セーブ機能などが追加され、昔より遊びやすくなっているのも魅力です。
その中で、ついに「プレイステーション クラシック」が発表されました。20本の内蔵ソフトも公開され、数量限定で12月3日より発売予定です。
改めてプレイステーションを振り返ってみると、あの時代のタイトルはあまりにも多様でした。そこで今回は公開された内蔵ソフト20本に納得がいかないという、気性の荒いゲームライターたちが「俺が考えたプレステクラシックのラインナップ」を考案しました。
発表された内蔵ソフト20選をどう見たか?
座談会の参加者
- 真ゲマ:今回の座談会の司会。Game*Sparkで奇天烈なコンテンツの企画・編集をメインに行っている。ちなみに「吉田輝和の絵日記」の編集担当もこの人。
- SHINJI-coo-K(池田伸次):ライターとビートメイカーの兼業家。ADVを好んで遊ぶ傍らFPS専門家となるべく修行中。主戦場はPCゲーム。
- 葛西祝:ジャンル複合ライティング業者。複数のジャンルが混ざったときの価値を取り上げる。今回の座談会記事の執筆を担当。
- 伊藤ガブリエル:アクションゲームや対戦格闘ゲームを好む。アメリカの大会「EVO」にも参戦経験を持つ。
真ゲマ:「プレイステーション クラシック」の収録内容が発表されましたが、皆さんはあれをどう評価していますか?
- ◆内蔵ソフト公式ラインナップ◆
- アークザラッド
- アークザラッドII
- ARMORED CORE
- R4 RIDGE RACER TYPE 4
- I.Q Intelligent Qube
- グラディウス外伝
- XI [sái]
- サガ フロンティア
- Gダライアス
- JumpingFlash! アロハ男爵ファンキー大作戦の巻
- スーパーパズルファイターIIX
- 鉄拳3
- 闘神伝
- バイオハザード ディレクターズカット
- パラサイト・イヴ
- ファイナルファンタジーVII インターナショナル
- ミスタードリラー
- 女神異聞録ペルソナ
- METAL GEAR SOLID
- ワイルドアームズ
SHINJI-coo-K(池田伸次)以下:SHINJI:
ロンチタイトルやヒットタイトルをバランスよく集めたという印象ですね。あとソニーパブリッシングのタイトルが目立っているような印象もあります。
葛西祝:
自分は「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」みたいなハードを象徴するラインナップといえるのか?というと、納得しにくいところがありました。けっこうRPGが多いですけど、そういうハードだとも思わないですし。振り返ってみると、当時のプレイステーションは表現が多様すぎたハードだと記憶しているからなのかもしれません。
伊藤ガブリエル:
初めてラインナップを見たときは、ジャンルごとにいいところを取ってきているなという印象でした。ただ後々見返してみると物足りなく感じてしまいましたね。
SHINJI:
なんとなく最大公約数でありそうで、なんとなく物足りない感じですね。国内ソニーを象徴しているという印象の方が強いかもしれません。
プレステの時代は「ヤミ市」だった!?
葛西祝:
発表されたラインナップ、「きれいなプレステ」って印象なんですよ。記憶の中のプレステの時代を振り返っていると、「これもゲームとして販売されているの?」みたいなタイトルが多かったですし、たとえるならばサイバーパンクなヤミ市みたいな感じだったんです(笑)。
伊藤ガブリエル:
ヤミ市、確かに(笑)。実験的というか、こういうこともできるんじゃないか?みたいなタイトルは結構ありましたからね。
葛西祝:
そう、過去の記憶を清算して、きれいな観光地化した感じといいますか……。海外版のプレステクラシックのラインナップはヤミ市感はまだあるんですよね 初代『Grand Theft Auto』が入っていたり、『デストラクション・ダービー』があったり。
- ◆海外版プレイステーションクラシック 内蔵ソフトラインナップ◆
- 闘神伝
- クールボーダーズ2
- デストラクション・ダービー
- Final Fantasy VII
- Grand Theft Auto
- I.Q Intelligent Qube
- JumpingFlash! アロハ男爵ファンキー大作戦の巻
- METAL GEAR SOLID
- ミスタードリラー
- エイブ・ア・ゴーゴー
- レイマン
- バイオハザード ディレクターズカット
- 女神異聞録ペルソナ
- R4 RIDGE RACER TYPE 4
- スーパーパズルファイターIIX
- サイフォン フィルター
- 鉄拳3
- Rainbow Six
- ツイステッドメタル
- ワイルドアームズ
SHINJI:
ラインナップにある『XI [sái]』と『I.Q Intelligent Qube』は両方ともパズルゲームですが名前を見るまで忘れていました。当時はコマーシャルでバンバンやってて印象深かったんですが、プレステの象徴かと言われると……って印象もあります。
葛西さんがおっしゃったようにプレステは国内と国外で見せている顔が違いますよね。
葛西祝:
当時まだ「洋ゲー」ってくくりがあった日本国内の目線だから、海外版のラインナップをヤミ市的に感じるのであって、海外のユーザーはこのチョイスを納得できてるのかなとも考えますね。向こうでもやっぱりあれが足りないとかの議論がありそうですが。
「これが入っていてよかった!」と思ったタイトル
真ゲマ:
今回「これが入っているなんてやるじゃん!」というタイトルはありましたか?
葛西祝:
やっぱり『サガ フロンティア』や『Final Fantasy VII』が入っているのは懐かしさがあって良いですね。プレイステーションの全盛期は自分が中学生くらいのときでした。当時はスクウェア全盛期でもあって、様々なRPGを楽しんでいましたしね。
伊藤ガブリエル:
そうですね、僕も当時は『JumpingFlash! アロハ男爵ファンキー大作戦の巻』や『鉄拳3』をメインに楽しみながらも、『METAL GEAR SOLID』や『女神異聞録ペルソナ』のような作品に痺れていましたから。
SHINJI:
これが入ってるなんてやるじゃん枠では『女神異聞録ペルソナ』です!続編の『ペルソナ2罪・罰』も欲しいくらいですよ。『METAL GEAR SOLID』に関しては、もし入っていなかったら問題なんじゃないかというレベルにすら思ってしまいます。
葛西祝:
『女神異聞録ペルソナ』は後半しんどいダンジョン続くところを、内蔵機能で途中セーブできるならちょっと楽できるのかな?という期待がありますね。
SHINJI:
ですねー!デヴァ・ユガの悪夢……(※デヴァ・ユガ=後半の高難易度ダンジョン)
葛西祝:
『アークザラッドII』もSRPG的なゲームシステムゆえ、すごく時間がかかって大変なところがありましたし、途中セーブ機能は相性がいいのかもしれません。
意外なアーケード的なチョイス
真ゲマ:
『ARMORED CORE』は「身体は闘争を求める」のコピペでお馴染みですが、意外とやってない人もいますから、これが良い機会になりそうだと思いました。
伊藤ガブリエル:
『ARMORED CORE』はさすがと感じましたね。あとは『グラディウス外伝』でしょうか。
葛西祝:
意外と思ったのが『Gダライアス』など、2Dの伝統的なシューティングゲームが入っていることですね。
アーケードゲームの匂いの強いゲームって、むしろ当時ライバルだったセガサターンがクラシック化したときに入るならば納得がいくんです。でもメディア系のイメージの強かったプレイステーションでもチョイスするんだなと思いました。『Gダライアス』の家庭用ゲーム機の移植がプレイステーションのみだった、という背景はともかくとしても。
SHINJI:
ですね!『Gダライアス』を入れるんだ!っていう驚きはありました。
伊藤ガブリエル:
僕もシューティングはどちらかというとサターンで遊んでいた記憶があります。
葛西祝:
プレイステーションは、セガのハードのようにアーケードゲームの匂いが強いものでもないし、任天堂ハードのように職人的にゲームを作り、キャラクターも含めたIPを育てる印象も薄いですから、ちょっと不思議なチョイスに感じるんです。
プレステは「ビデオゲームのモダン化」だった
葛西祝:
ファミコンやメガドライブ、ネオジオのハードとソフトのイメージはゲーマー間でそれほどズレがないと思うんですけど、プレイステーションの場合は個々人でイメージがズレる感じあるんですよね。人によってハードとソフトの印象が全然違うんじゃないか?って。
真ゲマ::
池田さんやガブリエルさんは当時、プレイステーションにどんな印象を持っていたのですか?
SHINJI:
最初は先進的でおしゃれな印象があって、なんというか、モダンで都会的なゲームを出している印象だったんですよ。「おおこれが次世代のゲーム!」みたいな。おそらくコマーシャルの効果だとも思いますし、『RIDGE RACER』や『グランツーリスモ』に代表されるゲームも、そうした印象を持ちました。それが後年はひっくり返っていくわけですが(笑)
伊藤ガブリエル:
当時の僕は多くの意味で冒険をしているゲームがいっぱい出てくるなあと思っていました。僕はアクションや格闘ゲームがメインでしたが、家族はパズルやアドベンチャー、シミュレーターだったので、すごく幅広く遊べるんだなあって。
葛西祝:
うちも家族が『I.Q Intelligent Qube』を買ってきたり、父親が『グランツーリスモ』にハマっていたりしました。ゲームらしくないCMに見られるように、「ゲームはゲーマーのものだけじゃない」みたいな方向性がありましたね。ビデオゲームのモダン化とか一般化って側面があったと思います。
SHINJI:
ですね、もうゲームをやり始めた子供たちも青年になりつつ……みたいな時期でもあり、大人に向けたゲームも増えつつあったと思いますし、それがモダン化のようにみえたのでしょう。
葛西祝:
ちょうど自分が小学生から中学生に上がったあたりにハードの世代交代が重なっていました。プレイステーションが覇権をとっていく過程って、ビデオゲームの価値観が激変していく過程でもあったので、変な話ですが子供のころ、なんだか怖いなと思った記憶あります。
11から13歳くらいで、まだファミコン基準のビデオゲーム認識だったときにわけわかんないゲームがいっぱい出てきて、それがマリオやゼルダと同じビデオゲームとして発売されている恐怖といいますか。自分の持っていた価値観が通用しない時代が来た怖さですね。
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