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第1節 男女共同参画推進の取組や体制の変化
1 概観
男女共同参画社会基本法の施行後,男女共同参画会議の設置等を始めとして,国や地方公共団体における推進体制が強化されてきた。また,法に定められた計画の策定により総合的に施策が推進されてきたほか,男女共同参画を推進するための枠組みの整備や数値目標の設定など取組を深化させてきたもの,また,この10年間に新たに本格的な取組が始まったものなど,男女共同参画に関連する様々な取組を拡大・深化させてきた(第1図)。
また,近年では,国や地方公共団体といった行政のみならず,経営戦略として女性の活用に取り組む企業や,国際競争力の維持強化や研究活動の活性化のため女性研究者支援に取り組む大学,女性が地域活動において中心的役割を果たすNPOといった様々な主体が男女共同参画を目指した取組を始めている。
第1図 男女共同参画社会基本法の概要
2 男女共同参画に取り組む様々な主体における10年間の変化
(1)政府における推進体制の変化
(男女共同参画を推進する機構の強化)
平成13年1月に中央省庁等の改革が行われ,男女共同参画推進を担当していた総理府男女共同参画室は,内閣府男女共同参画局となった。また,新たに内閣府に置かれる重要政策に関する会議の一つとして,男女共同参画会議が置かれるなど推進機構が強化された。
(男女共同参画基本計画の策定)
男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的な計画である「男女共同参画基本計画」が初めて平成12年12月に策定され,17年12月には,同計画の全体を見直し,現在の計画である「男女共同参画基本計画(第2次)」が策定され,20年3月に男女共同参画会議において同計画のフォローアップを実施するとともに,今後取組が求められる事項等に関する意見を決定した。さらに,21年3月には計画見直しに当たっての基本的な考え方について,内閣総理大臣から男女共同参画会議に対して諮問され,現在計画見直しの検討を行っている。
(2)政府における男女共同参画推進の取組
政府は,第2表に示すとおり,計画の策定により総合的に施策を推進してきたほか,枠組みの整備や取組の深化,また新たな取組など男女共同参画に関連する施策を拡大・深化させてきた(第2表)。
男女共同参画全般に関する動き | 女性の活躍の促進に関する動き | 仕事と子育ての両立支援,仕事と生活の調和等施策の動き | 女性に対する暴力の根絶に関する動き | 国際的な動き | |
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平成11年 (1999年) |
●「男女共同参画社会基本法」公布,施行 |
●「食料・農業・農村基本法」公布,施行 女性の参画の促進を規定。 |
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平成12年 (2000年) |
●男女共同参画審議会「男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方-21世紀の最重要課題-」答申 ●「男女共同参画基本計画」閣議決定 基本法に基づき男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため策定。 ●男女共同参画推進本部「男女共同参画週間について」決定 |
●男女共同参画推進本部「国の審議会等における女性委員の登用について」決定 平成17年度末までのできるだけ早い時期に30%を達成することを目指す。 |
●男女共同参画審議会「女性に対する暴力に関する基本的方策について」答申 ●「ストーカー規制法」公布 |
●国連特別総会「女性2000年会議」(ニューヨーク) 第4回世界女性会議(1995年北京)において採択された北京宣言及び行動綱領の実施状況の検討・評価,北京宣言及び行動綱領の完全実施に向けた今後の戦略についての協議。 |
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平成13年 (2001年) | ●男女共同参画会議・男女共同参画局設置 |
●男女共同参画推進本部「女性国家公務員の採用・登用等の促進について」決定 ●人事院「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」策定 各府省において,「女性職員の採用・登用拡大計画」を策定することを明記。 |
●「仕事と子育ての両立支援策の方針について」閣議決定 女性のキャリアプランの確立の支援に努める旨明記するなど,仕事と子育ての両立について支援策をまとめる。 ●「育児休業法」改正 勤務時間の短縮等の対象となる子の年齢の引き上げ等。 |
●男女共同参画推進本部「女性に対する暴力をなくす運動について」決定 毎年11月12日から11月25日(女性に対する暴力撤廃国際日)までの2週間に設定。 ●「配偶者暴力防止法」公布,施行 |
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平成15年 (2003年) |
●男女共同参画推進本部「女性のチャレンジ支援策の推進について」決定 「2020年30%」の目標を明記。 |
●「少子化社会対策基本法」公布,施行 少子化対策施策の基本理念を明らかにするとともに,施策の総合的推進を目的としたもの。 ●「次世代育成支援対策推進法」公布,施行 301人以上の労働者を雇用する事業主に,「一般事業主行動計画」を策定・届出義務を規定。 |
●女子差別撤廃条約実施状況第4,5回報告審査 | ||
平成16年 (2004年) |
●男女共同参画社会の将来像検討会報告書取りまとめ 2020年頃までに,多様な価値観の下,個性を生かし,共に生きる社会を目指すことを提言。 |
●男女共同参画推進本部「女性国家公務員の採用・登用の拡大等について」決定 ●「女性国家公務員の採用・登用の拡大等について」(各省庁人事担当課長会議申合せ) 女性国家公務員の採用目標の設定(国家公務員採用 I 種試験の事務系区分について30%)。 |
●「少子化社会対策大綱」閣議決定 |
●「配偶者暴力防止法」改正及び同法に基づく基本方針の策定 ●人身取引対策関係省庁連絡会議発足 ●人身取引対策行動計画策定 ●「刑法」改正 強姦,強制わいせつ等の罪の法定刑を引き上げ,集団強姦,人身売買罪等の創設。 |
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平成17年 (2005年) |
●男女共同参画会議「男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の基本的な方向について」答申 男女共同参画基本計画改定の基本的な考え方を提言。 ●「男女共同参画基本計画(第2次)」閣議決定 12の重点分野を掲げ,それぞれについて,平成32年までを見通した施策の基本的方向と22年度末までに実施する具体的施策の内容を提示。 |
●女性の再チャレンジ支援策検討会議「女性の再チャレンジ支援プラン」決定 子育て等でいったん就業を中断した女性の再就職・起業等に係る総合的な支援策を規定。 |
●第49回国連婦人の地位委員会(「北京+10」閣僚級会合)(ニューヨーク) 1995年に開催された第4回世界女性会議(北京会議)から10年目に当たることを記念し,閣僚級会合として開催。 |
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平成18年 (2006年) |
●「男女雇用機会均等法」改正 男女双方に対する差別の禁止や妊娠・出産等を理由とする解雇その他不利益取扱いの禁止。 ●男女共同参画推進本部「国の審議会等における女性委員の登用の促進について」決定 国の審議会等の委員について,政府全体として,平成22年度末までに少なくとも33.3%,平成32年までに,男女のいずれかが10分の4未満とならないよう,専門委員等については,平成22年度末までに20%,平成32年までのできるだけ早い時期に,30%となることを目指す。 ●「第3期科学技術基本計画」閣議決定 女性研究者の採用割合を自然科学系全体として25%とする目標を設定。 |
●「男女雇用機会均等法」改正 セクシュアル・ハラスメント対策の強化。 |
●東アジア男女共同参画担当大臣会合の開催(東京) 東アジアにおける初の男女共同参画担当大臣会議であり,16か国2国際機関が出席し,共同コミュニケを採択。 |
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平成19年 (2007年) |
●男女共同参画会議「政策・方針決定過程への女性の参画の拡大に係る数値目標(「2020年30%」の目標)のフォローアップについての意見」決定 「指導的地位」の定義を定めるとともに,毎年社会の各分野における進捗状況についてフォローアップを行うことを決定。 ●「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」改正 |
●少子化社会対策会議「子どもと家族を応援する日本」重点戦略取りまとめ 2030年以降の若年人口の大幅な減少を視野に入れ,制度・政策・意識改革など,あらゆる観点からの効果的な対策の再構築及び実行を図る。 ●「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」策定 国民的な取組の大きな方向性及び企業や働く者の効果的な取組,国や地方公共団体の施策の方針について,政労使の合意に基づき策定。 |
●「配偶者暴力防止法」改正 生命・身体に対する脅迫を受けた場合も対象となった。また,市町村に対し,基本計画策定及び配偶者暴力相談支援センターの設置を努力義務化。 |
●第2回東アジア男女共同参画担当大臣会合の開催(インド) | |
平成20年 (2008年) |
●男女共同参画会議「男女共同参画基本計画(第2次)フォローアップ結果についての意見」決定 計画の中間的なフォローアップを行い,現状及び今後取組が求められる点等を提示。 |
●男女共同参画推進本部「女性の参画加速プログラム」決定 女性の参画加速のため,あらゆる分野における基盤整備を行うとともに,3つの重点分野を挙げ,戦略的に取組を推進。 |
●厚生労働省「新待機児童ゼロ作戦」決定 ●「次世代育成支援対策推進法」改正 一般事業主行動計画の策定・届出の義務付け対象を労働者数301人以上企業から101人以上企業へ拡大。 |
●「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本的な方針」の改定 ●配偶者からの暴力(DV)施策に携わる,官民担当者や有識者等が一堂に会した「DV全国会議」の開催 |
●女子差別撤廃条約実施状況第6回報告提出 |
平成21年 (2009年) |
●男女共同参画会議「男女共同参画に関する施策の基本的な方向について」諮問 男女共同参画基本計画改定に向けた総理からの諮問。 |
●DV被害者を相談機関につなぎ,支援等に関する情報を得やすくするため,全国共通の番号による「DV相談ナビ」(0570-0-55210)がスタート |
(3)地方公共団体における取組や体制の変化
(徐々に進む市区町村における条例・計画の策定)
男女共同参画に関する条例の制定状況をみると,都道府県では平成13年に74.5%(35都道府県)であったのが,20年には97.9%(46都道府県)に増加している。また,市区町村では,13年に0.5%であったのが,20年には21.9%に増加している。
また,基本計画の策定に関しては,基本法施行後,都道府県については,全都道府県が策定しており,市区町村については,平成11年に15.6%であった計画策定率が,20年には57.1%と3倍以上に増加した。策定率の内訳をみると,20年で市区は88.5%であるのに対して,町村については,31.9%にとどまっている。
(増加する男女共同参画センター等)
地方公共団体が,男女共同参画・女性のための総合的な施設として設置している男女共同参画センター又は女性センターなどの施設の数は,平成20年4月現在で333に上る。地方公共団体の設置割合をみると,都道府県では11年では63.8%であったのが,20年には95.7%にまで増加し,市町村では13年に5.6%であったのが,20年には14.5%に増加している。
(4)企業,大学,NPO等における取組や体制の変化
(広がる企業における両立支援制度や女性の活躍促進)
平成15年からの次世代育成支援対策推進法の施行により,一定規模以上の企業では,仕事と家庭の両立を支援するための雇用環境の整備等に関する行動計画を策定し,届け出ることが求められることとなった。21年3月末現在で,策定・届出が義務付けられている301人以上の企業の届出率は99.1%,努力義務である300人以下の企業の届出数は18,137社となっている。
さらに,組織の中に女性活躍推進室やダイバーシティ推進室といった組織を設けるなど,企業が経営戦略として女性の能力を積極的に活用する動きがみられる。
(女性研究者支援のための大学等における体制整備)
大学等における女性研究者を支援する取組として,女性研究者支援モデル育成プログラムによる大学等における基盤的な環境整備のシステム構築の支援のほか,女性研究者の出産・育児による研究中断からの復帰や研究継続を可能とするための支援及び女子中高生の理系進路選択支援等を実施している。また,女性教員の割合や採用の数値目標を設定している国立大学等は平成18年度の17.4%から20年度には32.2%に増加している。
(NPO等各種団体における男女共同参画の取組)
「男女共同参画社会の形成の促進を図る活動」を定款において目的の一つとして掲げている特定非営利活動法人は増加している。また特定非営利活動法人等のNPOを含め,様々な団体においても女性役職者に係る数値目標の設定や職場復帰・継続就業支援,企業における管理職のネットワークの形成など男女共同参画の推進に向けた取組が進められている。