男子トイレは水を流さないほどキレイなんだって...!
いやぁ、やっぱりにわかには信じられませんよね。用を足した後、トイレの水も流さないなんて、一体どんなしつけを親からしてもらったんだかと子どもたちが叱られる要因でもあるんじゃないでしょうか。それがですよ、写真の男性用小便器「消臭式無水トイレ」には、そもそも水を流したくっても、そういう設備が最初から備わってすらいないんですからね。
いくら水道代節約でエコだっていっても、そんな臭くて汚いトイレは使えねぇだろってつぶやいちゃったのが聞こえたのか、兄ちゃん、兄ちゃん、その考え方は甘い、古すぎるよって呼び止められまして、まさに目からウロコな消臭式無水トイレのカラクリを聞いちゃったのでした。ちょっと人生180度変わっちゃいそうですよ。
それでは、ギズ読者の皆さまも、トイレの常識を覆す消臭式無水トイレの秘密を、どうぞ続きからご覧くださいませ。
ここのトイレ、わりとキレイに見えるのに、とにかく臭すぎるよな~なんて不快に感じた経験ありませんか? 実はその悪臭の張本人は、よく皆さまもご存知のアンモニアにあるんですよね。そして、ボクらのおしっこはアンモニア...と思っちゃった人は、残念ながら大間違いなんです。
上の図でも示されておりますように、人間(哺乳類)は小便をアンモニアではなく、尿素として排出するんですね。でも、この尿素に水を加えてしまうと、空気中や便器に付着しているバクテリア(細菌)が活性化してしまい、尿素が分解されて、あの臭いアンモニアに変わってしまうので、だかろこそ敢えて水を使わないトイレだと、究極の消臭効果が得られるという仕組みだったのであります。おまけに、アンモニアと水の成分内のカルシウムが反応して尿石が発生することも抑制され、まさに無水トイレはいいこと尽くめなのだとか。
う~ん、そういわれても、やっぱり抵抗感があるよなって人には、アメリカのWaterlessが研究開発した消臭式無水トイレの内部構造から、ただ単に水を流さないっていう以上の独自構造をご覧ください。
ただ水を流さずに小便だけが便器排水管内へとダダ漏れって構造では、消臭式無水トイレは誕生しません。実は排尿口は「エコトラップ」へとつながっており、おしっこは必ずエコトラップの中のブルーシール(防臭液)を通過してから中央排水口、下水管へと流れていくんですね。だから、排尿口から落ちていった尿素の臭いなどなどは、エコトラップ&ブルーシールの強力タッグで完全に押さえ込み、便器外部に漂わないように封じ込まれて、逆にブルーシール成分に含まれる芳香剤で清潔感あふれる香りをトイレ全体に漂わせる仕組みになっていますよ。ちなみに消臭式無水トイレのメンテナンスは、安価なブルーシールの補充と、たまにエコトラップの寿命交換のみでオッケーなため、電気代も水道代もいらない、楽々メンテ構造なり...とアピールされてます。
「実はWaterlessが最初にアメリカで消臭式無水トイレを発表した頃も、周囲からはブーイングの嵐でした。水を流さないのに清潔だなんてあり得ないって反応が強すぎたんです。でも、さまざまな微生物学者なんかが、そういう一般人の反応は全くおかしい、間違っている、Waterlessのアイディアこそ科学的にも優れたアプローチだなんて意見を発表するに至り、ようやく現在では少しずつ普及速度が上がってきています」
そう語ってくれた、日本国内で消臭式無水トイレの輸入販売を続ける池田電業の環境事業部の藤本一孝さんは、まだまだアメリカよりもさらに保守的な日本での反応が、なかなかとらわれた常識を覆せない人も少なくないため、道のりは厳しいんだと話してくれました。
「消臭式無水トイレを紹介しに出向きますと、まぁ担当者が年配の方であればあるほど、ほぼ間違いなく、そんな物は信じられないって反応が返ってきますね。おまけに、日本は他の国よりも水資源に恵まれているのか、廃棄物である尿を流すのに、その10倍以上もの水を使って廃棄してしまうという無駄に対する抵抗感も薄いんですよ」
そうはいうものの、男子生徒1000人の学校で消臭式無水トイレを導入するとすれば、ざっと年間にして2400トンもの節水効果が得られ、エコトラップやブルーシールなどの消耗品購入に要するメンテナンス費用を差し引いたとしても、1年間で134万円を超える経費削減効果が得られるんだとか。やっぱり消臭式無水トイレにしようかなって、そう聞くと思いますよね。
ただし、いざ理解が進めば、かなり今後の見通しは明るいとも期待されてるそうですよ。実際、今回神戸で開催された「国際フロンティア産業メッセ2009」でも、異色のモバイル寿司ロボット「天-TEN」の寿司バースタイルブースや、なぜかゴルフ練習ネット全開の派手な練習台ブースと並んで、この消臭式無水トイレの展示ブースは大人気! すでにアメリカは、南極基地や空母などでも導入済みなんだそうで、これはボクらも今後もっと日本でも身近に目にする機会が増えてくるかもしれませんね。
(湯木進悟)