あー落ちてますね...
上場初日は辛うじて公募価格+αで引けたフェイスブック株ですが、週明けガツンときた...執筆段階で12%減。戻る気配もありません(追記:終値12ドル)。どうしちゃったんでしょうね?
まあ、こうなることは初日から予想がついていたんですけどね。
その理由をご説明しましょう。
初値と終値の差
フェイスブックIPO公募価格はご存知の通り、38ドルでした。でも「公募」と言いつつ38ドルで買えるのは実のところ大手機関銀行とその顧客でありまして、フェイスブックの株取引が正式にナスダックで開始される前に彼らが38ドルで買ったボリュームが多かったので最初は42ドルまでビョコンと上がったんです(初値)。
つまりどういうことか?
FB株は38ドル23セントで金曜の初取引を引けました。引受会社のIPOの値付けは完璧だったという評価もあるんですが、初値からズリズリ10%近く下がったので、その差損をモロに被ったかたちとなります。
買い支えの穴も
IPOは、デビューする会社の金庫に集まるお金を最大にするブードゥー教のようなもの。取引開始直後に株が急騰すれば、「あ~あ、IPO公募価格をもっと高く設定しとけば会社・銀行アドバイザーたちの取り分がそのぶん多くなったのに...」ということになるし、株が急落すれば全員のロス、会社も銀行も面目丸つぶれとなります。
顔がつぶれるぐらい‥‥と思いきや。これが一般の人が考える以上に影響大きいんです。銀行は評判と実績でサービス売る会社ですから、こんな米史上3番目の大型IPOで失態演じたら潜在顧客が恐れをなして逃げちゃいますもんね。
なのでフェイスブック上場初日も公募価格を割り込みそうになると最後は緊急の軍資金をじゃんじゃん注ぎ込んで買い支えに走ったんです。
これはBusiness Insiderが「なぜフェイスブック株は初日38ドルを絶対割り込まなかったのか」という記事で掲載した表(via @bourbon_meyer)。左上の「38」のところを見ると買い付け注文が桁違いに突出してますよね? これが、上場引受け11行率いるモルガン・スタンレーが張った防衛線なのですよ。いくら売っても落ちないわけだ...。
こういう買い支えはフェイスブックのような注目株のIPOだけじゃなく、結構普通に行われている慣行ではあるんですが、金曜あの記録破りの異常なボリュームで下げ方向に動いていたんだとしたら、モルスタも同じぐらい異常なボリュームでアゲアゲしていた、ということになります。まさに万人が売り注文に走る川を堰き止める38ドルの堤防、そこに開いた穴をビリオンダラーの指で塞ぐ引受幹事モルガン・スタンレー、という構図。
今日(月曜)はその指を離したからドドドドッ...ときてるんですね。
正当な評価になっただけ
まあ、蓋を開けてみれば、やっぱりなあ、と。非論理的な空騒ぎのバブルを市場が嫌ったの見てホッとしてる自分もいますよ。
時価総額1040億ドルっていうのがそもそもおかしいんであって、それに見合う利益は今のところ全然出してませんからね。これは物事を単純化し過ぎかもだけど、フェイスブックって市場の評価と実利のギャップを今の年収のペースで埋めようとしたら1世紀以上かかるんですよ。
フェイスブックは所詮まだまだ1040億ドルの時価総額に見合う会社ではないんです。だからIPOで株価が成層圏突き抜けるほど上がらないのも当たり前なんですね。だってフェイスブックを一番良く知る大口初期投資家からしてほぼ全員(マーク・ザッカーバーグ本人も)、金曜の上場前に何千万株という株を売ってしまってるんですよ...。当分は上がる見込みもないから売るんであって、もっと上がるんなら誰も売りませんよね。
ともあれ今回の上場でフェイスブックの懐には160億ドル転がり込みました。一般投資家は蚊帳の外だけどビリオネアになった人は万々歳でしょう。
評価を気にする銀行からの買い支えがとれた月曜につく株価、これが今のフェイスブックの実像です。広告主導のソーシャルメディア会社。モバイル分野などではまだ実績がないのだけど、とりあえず黒字は手堅く見える...ま、これからが勝負ですね。
下がるところまで下がると上がって、また下がって、下がって上がって、下がって上がって...こうして他の銘柄とおんなじ酔っ払いのちどり足で独り立ちしていくんでしょね。
歩き始めの一歩を飾り過ぎた、というだけのことですね。
UPDATE: 無駄に劇的なロイターの動画。1日目、2日目の値動きを追っています。
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Brian Barrett(原文/satomi)