サムスン、アップル裁判で却下された証拠書類をマスコミにリーク! 判事に怒られる

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サムスン、アップル裁判で却下された証拠書類をマスコミにリーク! 判事に怒られる

裁判所で証拠書類の提示を却下されたら、みなさんならどうしますか?

a. グッと堪えておとなしく耐える

b. こんにゃろ~とばら撒く

サムスンが取った行動は、もちろんb。

今週本格審議が始まった世紀のアップル訴訟でさっそく提出を拒まれたスライド一式を「それならば」とマスコミに流し、判事がムッとする一幕がありました。

サムスン代理人ジョン・クイン(John Quinn)弁護士は、このスライドにはiPhone発表前にデザインされた携帯「F700」(写真上)などの情報も含まれているのだから証拠品として採用して欲しい、と主張し、サンノゼ地裁ルーシー・コー(Lucy Koh)判事はこれをにべもなく却下。このときのやり取りがすさまじくて、今週は法廷ウォッチャーたちの語り草となりました。

論点開示の期限は過ぎているとのポール・グレワル(Paul Grewal)予審判事の判断を受け、コー判事はサムスンに冒頭陳述でその論点は使えないと申し伝えた。クインの弁護団は再考を求めたが、拒否された。

そこでクイン登壇である。陪審員宣誓の翌日の火曜、冒頭陳述開始予定時刻の直前になって、スタイリッシュな紺のスーツに身を包んだ髪ボサボサのクイン氏はコー判事の前に立ち、こう言った。

「自分は36年この仕事をやってる」が法廷で頭を下げて温情にすがったことは一度もない、が、今は頼む、この通りだ、スライドの件は考え直してくれ、と。コー判事の返事は、またしてもNOだ。

「なら一体なんのための裁判なんだ?」とクイン氏は言った。声が一段と高くなった。「やってなんの意味がある?」

コー判事は氏を黙らせようとした。「クインさん、どうかどうかお願いです、もうこの件では3回も再考してきたではないですか、あなたの論点はもう記録に残ってますよ」

「なんとか説明してくれ...」

「クインさん、それ以上言うと処罰ですよ、どうかそこまでに!」―噛み付く判事。「どうか席に座ってください」

(ソース: On the Case

普通はこれで終わりですが、なんとその2時間後、ウォールストリートジャーナルのAllThingsDのメール受信箱にスライドがごっそり送られてきたのです、こんなメッセージと一緒に。

(アップルのデザインとは関係なく)独立して創られたことを示す証拠を判事は排除した。つまりアップルには「F700がiPhoneのコピーである」と不当な主張を展開することが許されているのに、サムスンには、あれはiPhone前にもうデザインがあったこと、iPhone前の2006年の段階でサムスンが開発中の携帯は他にもあることなど、話の全容を陪審員に述べることも許されていないのだ。

この除外された証拠品を見ればサムスンがiPhoneのデザインをコピーしてないことは疑いの余地もないことだ。基本的公正を期するためにも、陪審員はあらゆる証拠を基に判断することが求められている。

AllThingsDは全て掲載(7月にアップルを辞めたiPhoneデザイナー西堀晋氏の話も出てます)したので、当然コー判事の目に入り、「こんな奇策を弄した人間はどこの誰よっ」と判事は色をなし、審議を中断してクイン氏を詰問。

アップルはそれ行けとばかりに「陪審団の判断を汚染する行為だ」とサムスンの処罰を求めましたが、クイン氏は「陪審団は審議中マスコミの情報を見ない決まりになっている。ルールを破る前提に立って処罰を求めるのはいかがなものか」と反論、厳罰は免れました(今ここ)。

3日(米時間)、処罰を見合わせる決定を下してからコー判事が陪審員をひとりひとり法廷の外に呼び出して確かめたら、みんな「記事は見てない」と答えたそうです(ひとりはネットで見出しは見たけど本文は読んでないので判断には影響ないと言った)。コー判事は「審議が終わったら関連記事は全部コピーとって配るから絶対見ちゃだめよ!」と念押ししたみたいですよ。

[AllThingsD via The Verge]

Adrian Covert(米版/satomi)