ニール・ヤングの超高音質音楽プレーヤーPono発売! でも本当に買う価値あるの?

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ニール・ヤングの超高音質音楽プレーヤーPono発売! でも本当に買う価値あるの?

Pono始め最近流行りのハイレゾですが…。

ニール・ヤングが送る400ドル(約4万7,000円)の最高音質」を謳う音楽プレイヤー「Ponoがとうとう発売です。最高の音質を求めるファンからその登場を心待ちにする声も聞こえますが、でも本当に良い音質で聴こえるでしょうか?

そこまでいい音は聴くことができない?

ハイレゾ音源」とは大雑把に言えば、サンプリングレートとビット深度が非常に大きい状態でデジタルエンコードされた音源です。そしてこれはCDのレートよりも高いものを指します。

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こちらはPonoの音質を他のものと比較した図です。一番左から、mp3の音楽ストリーミングサービス、MP3のダウンロード楽曲、そしてCD、Ponoとなっています。CDのスタンダードは44.1kHzで16bit、一方Ponoの方は192kHzで24bitです。

サンプルレートとビット深度を大きくすることで、可聴音のディテールとダイナミックレンジをも大きくするというわけなんですが、こうして書くと良い話ですけども…。

ニール・ヤングと高音質オーディオファイル推進派が不十分だとするCDの音質基準は、何も適当に決められたわけではありません。人間の耳には44.1kHz/16bitの音源以上のものが聞き取れなかったためこの基準になったのです。

しかし数字で出された根拠も一部の人には意味を成さないよう。ニール・ヤングも業界の知り合いである有名ミュージシャン達にPonoを聴かせて回って、「こんないい音聴いたこと無い!」なんていうコメントをもらっている動画をPonoのKickstarterページで紹介しています。

でもそれが何の証拠になるでしょうか? ノラ・ジョーンズやデイヴ・グロールが嘘つきだと言っているわけではありません。でも彼らだって私達だって、もしニール・ヤングが変なガジェットを手に目の前に現れて「これを聴いてみてくれ、驚きだぜ」なんて言えば、きっとあなただって「これはすごい音に違いない」というバイアスをかけてしまい、結果としてその期待を満たす音を聴くという錯覚を起こすことでしょう。

もちろんこのバイアスを科学的に克服する手段はあります。ダブルブラインドテスト(二重盲検試験)がそれです。Ponoと違う音源を用意し、被験者も直接の試験者もどっちがどっちかわからない状態で音質を聴き分ける試験をすればいいんです。でもニール・ヤングはそれをやっていません。

2007年に「Journal of the Audio Engineering Society(オーディオ・エンジニアリング・ソサエティ・ジャーナル)」でブラッド・メイヤーとデイヴィッド・モーランが発表した研究では、大勢の「音マニア」を対象にしてダブルブラインドテストを行い、44.1kHzの音源と「見つけることのできた最高のハイレゾディスク」を聞き分けさせました。しかし人々はその違いを聞き分けられませんでした。

そこでは「どのサンプルも試験結果との関連性は見られず、まるでコインを投げて出した試験結果のようだった」との結論が出されており、「44.1/16エンコーディングがハイレゾのものよりも聞き分けられるほど劣化しているという意見には、正しく行われたダブルブラインドテストによる裏付けが必要だ」と書かれています。

ハードウェアは不必要

ビットレートはひとまず置いておきましょう。最高音質の音源があったとして、あとはそれを聴くためのハードウェアが必要ですよね?でももしかしたらそれも怪しいかもしれません。

まず、ハイレゾ音源はファイルサイズがデカイです。96kHz/24bitの「ハイレゾ」ファイルはCD音質44.1kHz/16bitのファイルの約3倍の大きさになります。そこそこの音質のMP3と比べればその差は24倍にもなります。半端ないストレージが必要になります。

そして、いい音源を聴きたいという思いがより高いハードへの購買心につながるのです。Pono然り、ソニーの新ウォークマン然り。超高級なヘッドホン、スピーカー、アンプなどなど、買いたくなってきちゃうわけです。

Ponoは平均的な音楽プレーヤーの電子回路よりも優れた回路を持っているとしています。この場合、「平均的な音楽プレーヤー」はスマートフォンということでしょう。音を聴くためのモノによって音質が良くなるということはあります。だから人々はアナログ回路で録音できるスタジオに大金を払うのです。Ponoの説明を読んでみましょう:

このポータブル・オーディオ・プレイヤーは、比類するもの無き音質で無類の聴覚的快感を与えるため、Ayreの何万ドルもする最高級製品の回路を使っています。

でも実際にその回路に400ドルの価値が有るのでしょうか?そしてそれはわざわざ音楽を聞くことしかできないデバイスを購入し持ち運ぶこという手間を掛けるべきものなのでしょうか?

元記事を書いた米GIZMODOのAguilar記者は300ドル(約3万6,000円)もするヘッドホンを使っているそうですが、80ドル(約9,500円)のGradosだっていい音を出すと認めています。それでもAguilar記者が300ドルをヘッドホンに払ったのは、ヘッドホンそのものの品質、つけ心地、美しさにお金を払ったからであり、音質に払ったわけではないとのこと。

つまるところ、いい音を求めるために高級ハードを買う必要は無いということ。そして、どれだけ凄いハードを以てしても、生物学的、物理学的に定められたあなたの可聴域は変えられないということ。Ponoに限らずハイレゾプレイヤーを購入予定の方はよくご検討、ご視聴の上でどうぞ。

image by Sam Woolley

Mario Aguilar - Gizmodo US[原文

(abcxyz)