ことはみんぐさん
レビュアー:
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かつてリヴァトン館と呼ばれた貴族の館でメイドをしていたグレイス。彼女は今、在りし日の悲劇を語り始める。
著者の新刊『秘密』が献本になっているのでケイト・モートンで唯一読了している『リヴァトン館』の評を少し。
この作品を知ったのは桜庭一樹の読書日記だったと思う。軽く触れられているだけに過ぎなかったように思うが惹き付けられ、文庫化と同時に入手した。そしてすぐに読み始め、見事に当たりを引いたと感じた。
面白い。
だが、この物語がミステリとして成立するためのトリック、というか、この物語の悲劇がいかにして起きたかの理由についてはさほど難しく考えるまでもなく予想がつき、こういうことでしょう? と読んでいる最中に解ってしまう。
つまり、ミステリとしては少し甘いのだろう。
しかし、戦前戦中の英国を舞台とした人間たちの物語としては本当に面白い。
話は現在と過去を行き来しつつ進んでいく。
物語の語り手であるグレイスは現在、百歳を間近に控えた老女だ。けれど彼女は、とある女性映画監督の訪問を受け、長くこころの奥底に封じてきた過去を語り始める。
それは、かつてリヴァトン館で起きた悲劇の記憶だった。
なぜ、悲劇が起きたのか彼女の、そしてリヴァトン館の娘たちの秘密とは——。
もちろん、それは読んでみるまでのお楽しみだ。
しかし、これだけは述べたい。
私がこの物語を高く評価する理由だ。
それはラストにある。
ラスト、ある人物の死が描かれている。
ある者がある人物を殺せと叫び、標的となり得る人物は二人にしぼられた。そして、ある者は自らのすべてを無に帰すように銃の引き金を引いた。
一人が死に、一人は生き残り、一人は人殺しとなった。そして、それを語り手であるグレイスが見ていた。
私は、銃口を向けられそのとき命を落とした人物がその人だったことに深い感銘を受けた。
銃の引き金を引いた人物はその瞬間、殺めるべき命をその人物に定めたのだ。もう一人の生き残った人物ではなく。
その決断が、まるで自死と同義のようなその決断こそがこの物語の素晴らしさだったと思う。
この作品を読んだのはもう一年以上前のことだが、当時はあまりにも胸がいっぱいで感想の一つもまともに語れなかった。
今ようやく言葉にして振り返ることができたが、一年の時間が経っていてもこの物語は私のなかに息衝いている。
本当に面白く、とても惹きつけられる物語だからだ。
この作品を知ったのは桜庭一樹の読書日記だったと思う。軽く触れられているだけに過ぎなかったように思うが惹き付けられ、文庫化と同時に入手した。そしてすぐに読み始め、見事に当たりを引いたと感じた。
面白い。
だが、この物語がミステリとして成立するためのトリック、というか、この物語の悲劇がいかにして起きたかの理由についてはさほど難しく考えるまでもなく予想がつき、こういうことでしょう? と読んでいる最中に解ってしまう。
つまり、ミステリとしては少し甘いのだろう。
しかし、戦前戦中の英国を舞台とした人間たちの物語としては本当に面白い。
話は現在と過去を行き来しつつ進んでいく。
物語の語り手であるグレイスは現在、百歳を間近に控えた老女だ。けれど彼女は、とある女性映画監督の訪問を受け、長くこころの奥底に封じてきた過去を語り始める。
それは、かつてリヴァトン館で起きた悲劇の記憶だった。
なぜ、悲劇が起きたのか彼女の、そしてリヴァトン館の娘たちの秘密とは——。
もちろん、それは読んでみるまでのお楽しみだ。
しかし、これだけは述べたい。
私がこの物語を高く評価する理由だ。
それはラストにある。
ラスト、ある人物の死が描かれている。
ある者がある人物を殺せと叫び、標的となり得る人物は二人にしぼられた。そして、ある者は自らのすべてを無に帰すように銃の引き金を引いた。
一人が死に、一人は生き残り、一人は人殺しとなった。そして、それを語り手であるグレイスが見ていた。
私は、銃口を向けられそのとき命を落とした人物がその人だったことに深い感銘を受けた。
銃の引き金を引いた人物はその瞬間、殺めるべき命をその人物に定めたのだ。もう一人の生き残った人物ではなく。
その決断が、まるで自死と同義のようなその決断こそがこの物語の素晴らしさだったと思う。
この作品を読んだのはもう一年以上前のことだが、当時はあまりにも胸がいっぱいで感想の一つもまともに語れなかった。
今ようやく言葉にして振り返ることができたが、一年の時間が経っていてもこの物語は私のなかに息衝いている。
本当に面白く、とても惹きつけられる物語だからだ。
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座右の書は『こころ』と『あしながおじさん』ですが、ミステリが好きです。亀の歩みで積ん読消化中。
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- 出版社:武田ランダムハウスジャパン
- ページ数:423
- ISBN:9784270104118
- 発売日:2012年05月10日
- 価格:924円
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