書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

DBさん
DB
レビュアー:
音の作り出す世界の話
数々の熱い書評に惹かれて読んでみました。
ピアノに限らず、楽器を趣味とする人におすすめの本ですね。
まずピアノを表現するのに「羊と鋼の森」という言葉を持ってくることがインパクトありました。
確かに調律の時に見ているし、なによりグランドピアノだと中は丸見えなので構造はわかっている。
だがそこにあるのはピアノ線という弦とハンマーであって、羊ではなかった。
いいフェルトを使っていると言うのに、そのフェルトを提供したであろう羊が育った場所や空気や食べたものを褒めるというのが調律師の世界なんだろうか。
いつも「お願いします」と「ありがとうございました」くらいしか会話はなかったが、もっと話を聞いてみればよかった。

物語は「どんな話?」と聞かれれば、「調律師を目指して憧れの人と同じ会社に入った新人が、いろいろ学んでどうにか使い物になるくらいに成長したかなっていう石の上にも三年時代を淡々と描いてるだけ」としか表現できない。
自分が勉強していることや仕事での悩み、客先での出来事の話か、職場の先輩との話に尽きる。
プライベートってないんじゃないかというくらいそれ以外の話は出てこない。
ただ北海道の奥地で育った子供時代の思い出が時々顔をのぞかせるくらいだ。
それにもかかわらず感動し、朝の通勤で読み始めたんだけどそのままサボって最後まで読んでしまおうかと真剣に考えたくらい引き込まれました。

それは登場する人たちがつくる音に込めた想いが伝わってくるから。
純粋に理想の音、必要な響き、美しい曲。
人それぞれ弾きたい曲や求める音が違ってくるから、そしてそれを言葉で表現しなければいけないから。
それを汲み取って調整してくれるのがプロの調律師ってものだったんだと思った。
まあ中には「明るい音っていわれても、調律するより弾き方を教えたほうがいい」なんて本音も飛び出します。

音楽をテーマにした小説だとピアニストが主役っていうイメージが多い。
だがピアニストでも楽器を作る職人でもなく、調律師という立場から音楽と世界について描いているというのが新鮮だった。
音の世界を超えれば、自分と社会の関わりについて見ることもできる。
平均律と純正律とかAが442とかいう話も出てきますが、一番覚えておこうと思ったのは和音を奏でる時に純正律に合わせた音の響きで和音を作るときにどの調性かによって音の高さを変えて演奏するのがポイントだってこと。
いい勉強になりました。
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
DB
DB さん本が好き!1級(書評数:1787 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

読んで楽しい:1票
素晴らしい洞察:1票
参考になる:24票
共感した:2票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『羊と鋼の森』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ