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やまてる
レビュアー:
僕には調律の才能があるのだろうか?ピアノの音という、森で深い霧の中を彷徨うよう主人公。ピアノの環境、聴く場所、なにより、弾く人が求める音は何なのか?迷いながらも一歩ずつずつ成長していく姿に感涙した。
静かな物語だった。
それでいて、優しさと強さを持った物語だった。
羊と鋼の森とは、ピアノのことだった。
羊毛のハンマーと鋼の弦がつくるピアノの音。
それを整音するのが調律。
若き調律師の地道に成長してゆく物語。

北海道の山奥出身の主人公・外村。
森の中のいろんな音を聞きながら育った。
名調律師とので出会いをきっかけに調律師になった。
ピアノの音という、大きな霧がかかった森の入り口へ踏み出した。

依頼者から求められる音はさまざま。
いろいろなことを考えて調律する。
だが、その結果は順風満帆とはいかない。
自信喪失して、森で迷子になる主人公。
「僕には才能がないのかもしれない」
それは、社会へ踏み出して、人生で迷った私にも大いに共感できた。

『調律はどうやったら上手くなれるのか?』
答えた先輩たちの言葉
あきらめないこと。
『才能や素質があるからいきていくんじゃない。
 あったって、なくたって、いきていくんだ。』
そんな台詞に身震いした。

さえない青年からの依頼の調律。
調律した後に、指弾して、青年が破顔した姿。

ふたご高校生が披露宴で演奏するための調律。
祝っているような、歌っているような演奏。

外村のピアノの森の道が開けてきたときには、感涙した。
外村の一歩ずつずつ、まっとうに素直に、歩んでゆく姿に、勇気をもらえた。
冴えない私でも生きゆく価値は、常に反省と努力だと思い起こさせてくれた。

憧れの先輩調律師が、理想の音について語ったときに、引き合いだされたのは、
原民喜が憧れている文体。
『明るく静かに澄んで懐しい文体、
 少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、
 夢のように美しいが現実のようにたしかな文体。』
まさに、この物語の文体だと思った。

2016年第13回本屋大賞大賞
第154回直木三十五賞候補作
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やまてる
やまてる さん本が好き!1級(書評数:710 件)

50歳代
好きなこと:ランニング、読書、映画鑑賞、献血
好きな作家:伊坂幸太郎

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