PCより気軽にTwitterを更新できる、携帯電話向けサービスの定番「MovaTwitter」を作った藤川さん。常にケータイとiPhoneを持ち歩き、サービス向上の糸口を探しているという。2万超のユーザーを抱える作者はいったい何を“つぶやいた”?
ひとりで作るネットサービス第39回は、携帯電話からTwitterを更新できる定番サービス「MovaTwitter」を作った藤川真一さん(35)に話を聞いた。2万人を超えるユーザーを抱えるサービス運営の裏側とは?
「Twitterっていいな、と思ったのです。必ずしも返事しなくてもいいし、いつ落ちてもいいですから」。以前はチャットにはまっていたという藤川さんは、Twitterを初めて触った時の感想をそう話す。チャットは楽しいが、何となく時間を拘束されるイメージもあったため、仕事を始めてから何となく遠ざかっていた。その点、Twitterは気楽だ。何か言いたい時に発言すればいいし、気の向いた時に友達のつぶやきを読むだけでいい。
2006年当時、じわじわとTwitterが流行しはじめたころ、日本語で使用するにはまだバグがあった。「文字コードの関係でうまく送信できないことがある、といった不具合だったと思います。それを直すためのプログラムを書き始めたのがMovaTwitterを作るきっかけになりました」
Twitterをいじればいじるほどケータイに向いているのではないか、と藤川さんは思い始めた。ちょっとした時間のすきまに更新できるからだ。仕事でPHPとMySQLを手がけていたので、それらの技術を使い、自宅サーバでサービスの原型をつくってみた。それほど時間はかからなかったという。ケータイサービスだけに凝ったデザインが要らなかったというのも大きな理由だ。「僕はデザインができないのです。デザインができないエンジニアはケータイサービスを作った方がいいと思いますね」。藤川さんはそう笑う。
MovaTwitterはケータイからTwitterを更新するだけのシンプルなツールだったので、プログラム自体は難しくなかった。しかしすんなりとサービスが動いたわけではない。一番苦労したのは「そもそもTwitterが不安定だったこと」だ。
現在はそうでもないが、2006年当時のTwitterはすぐに落ちるサービスで有名だった。「そうなるといろいろ考えなくてはいけません。サイトにアクセスしてTwitterが落ちているから見れません、ではいけないですよね。そこで当初はメッセージをMovaTwitter側で保存し、Twitterが落ちていてもある程度は見られるようにしていました」
またセキュリティの問題もあった。MovaTwitterではTwitterのIDとパスワードをユーザーに入力させる仕様になっている。MovaTwitterをはじめ、Twitterのマッシュアップサービスではこうした仕様が主流ではあった。ただ「どこの誰とも分からない人が運営しているサービスにIDとパスワードを預けるのはよくないのではないか」という論争が常にあった。MovaTwitterも時としてそのやり玉にあげられた。「そうした理由もあって、MovaTwitterをペパ研に登録することにしました」。藤川さんはそう話す。
ペパ研とは藤川さんが所属する会社、paperboy&co.のサービス支援活動だ。「ペパ研に登録することにより、運営者の身元がはっきりします。IDとパスワードを保存させることには慎重になるべきですが、ここに登録してあるサービスということで、ある程度は安心してもらえるのではないかと思っています」
またもう1つ、ユーザーが秘密にしておくべきアクセス用のURLが流出してしまう、という問題もあった。「今はもう大丈夫なのですが、以前の仕様だと、そのURLが他者からアクセスされるといろいろまずいことが起こっていたのです」
当然ユーザーには「十分注意してください」と告知はしていたが、うっかりブックマークに登録してしまって外部に公開してしまうユーザーもいた。「そうしたURLが流出していないか、一時は検索しまくって、見つけた端から無効化の処理をしていました」。藤川さんは当時の苦労を振り返る。
こうした苦労を経て、現在MovaTwitterのユーザー数は2万3000人を超えるという。自分でも日々使いながら周りの人がどういう使い方をしているかを研究し、機能の追加をしてきた。
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