PDFのファイルサイズを削減できるソフトは、実際どれくらいのスリム化が可能なのか。3種類のPDFファイルを用意してテストを行ってみた。
手元にあるPDFファイルのファイルサイズが大きすぎて、メールで送ったりWeb上で公開するのに差し支えることはよくある。しかしオリジナルのOffice文書がすでに破棄されてしまっていたり、あるいはドキュメントスキャナから直接取り込んだデータで原本はすでに存在しなかったりと、設定を変更して原本から再出力するのは困難なことがほとんどだ。せめてZIP圧縮して容量を減らそうにも、たいていの場合はファイルサイズに変化はない。
こうした場合は、PDFファイルをスリム化するソフトを使って、余計なオブジェクトを削除したり、画像データを圧縮することによって、ファイルサイズを削減するとよい。原本ファイルがなくとも手持ちのPDFファイルをそのまま加工できるので、他人から渡されたデータであってもその場ですぐ加工できる。
PDFをスリム化する機能を持ったソフトはいくつもあるが、実際に使ってみると特性がかなり異なる。今回は代表的なソフト3種類について、3種類のPDFファイルを用いてテストした。
今回サンプルとして用意したPDFファイルは以下の通り。なお、サイズについてはいずれもNTFSでフォーマットしたWindowsのエクスプローラで表示されるサイズである。
(1)は、日本語のダミーテキストを貼り付けたWordファイルを、Acrobatの印刷機能を用いてPDF出力したデータだ。画像は一切含まれておらず、純粋にテキストのみのデータということになる。ビジネスシーンでは議事録のデータの形式に近いと思われる。サイズは217Kバイトだ。
(2)は、テキストのほか図版やグラフを含んだPowerPointファイルから、Acrobatの印刷機能を用いてPDF出力したデータだ。プレゼン資料などに多い形式で、ビジネスユースで用いられるPDFの多くがこのタイプだろう。サイズは801Kバイトある。
(3)は、印刷して配布したプレゼン資料をドキュメントスキャナで取り込んだPDFだ。透明化テキストなどは含まず、すべて画像データということになる。電子書籍の「自炊」データとも近い形式だ。サイズは16.482Kバイトある。
1本目のソフトは「PDF Cleaner」。ソフト添付の説明書によると、ファイルの内部から不要なゴミを除去して最適化を行うソフトとのこと。具体的には未使用および重複オブジェクトの削除、コメントやメタデータの削除といった項目が挙げられている。画像データの圧縮については言及がない。
実際に使ってみたところ、オリジナルファイルからの容量削減率は最大で2%で、あまり大きな効果が見られなかった。特に(3)はバイト単位では減っているものの実質ほとんど変化がなく、画像に対しては効果がないことが分かる。また、このソフトではAcrobat6.0以降の形式に対応しないため、現行のAcrobatの標準設定で出力したPDFデータでは利用できない可能性が高い(今回はこの制限にあわせてPDFを再作成し、テストを行っている)。
(1)テキストのみ | 2%削減 |
---|---|
(2)テキスト&画像 | 1%削減 |
(3)画像のみ | 容量変化なし |
ソフト名 | 対応OS | 利用料 | 開発者 |
---|---|---|---|
PDF Cleaner | Windows XP/2000/Me/98 | 無料 | papy氏 |
2本目は「PDF Slim」。マグノリアが無償で提供しているソフトだ。添付の説明書によると「PDFに含まれる高画質な画像を圧縮してPDFファイルのサイズを小さくする」とあり、前述のPDF Cleanerとはかなり性格が異なるようだ。
実際に試した結果、(1)(2)ではバイト単位の変化しかなかったものの、画像中心の(3)においてはファイルサイズが半分以下にまで激減。画像の圧縮率を変えているようだが、見比べてもそれほど変化があるようには思えない。かなり使えるソフトという印象である。
(1)テキストのみ | 容量変化なし |
---|---|
(2)テキスト&画像 | 容量変化なし |
(3)画像のみ | 54%削減 |
また、上記は「普通」のモードだが、さらにファイルサイズの削減が見込める「低画質(高圧縮)」モードでも試してみたところ、(1)(2)はやはり変化はなかったものの、(3)ではなんと80%近い容量が圧縮できた。ただし画質はかなり低下するため、せいぜい自分用、もしくは社内など身内での閲覧にしか使えそうにない。対外公開を前提にするなら、上の「普通」にとどめておいたほうがよさそうだ。
(1)テキストのみ | 容量変化なし |
---|---|
(2)テキスト&画像 | 容量変化なし |
(3)画像のみ | 79%削減 |
ソフト名 | 対応OS | 利用料 | 提供元 |
---|---|---|---|
PDF Slim | Windows 7/Vista/XP | 無料 | マグノリア |
最後に紹介するのは本家の「Adobe Acrobat」。単体で買うと3万円台と高価だが、PFUのドキュメントスキャナ「ScanSnap」などにスタンダード版が標準添付されているのはご存知のとおりだ。
「Adobe Acrobat 9 STANDARD」には「ファイルサイズを縮小」という機能があり、この機能を使ってPDFの容量を削減できる。実際に試したところ、前述のソフト2本ではほとんど変化のなかった(1)(2)でそれぞれ11%と43%のファイル削減、さらに(3)に至っては80%近い容量が削減できた。さすが本家、と言っていいのかどうかは分からないが、効果は絶大だ。
(1)テキストのみ | 11%削減 |
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(2)テキスト&画像 | 43%削減 |
(3)画像のみ | 79%削減 |
ちなみにこの(3)については、奇しくも削減後のファイルサイズが「PDF Slim」の低画質(高圧縮)モードとほぼ同じなのだが、画質を比較すると「Adobe Acrobat」経由のほうが圧倒的に美しい。「PDF Slim」の標準モードとほぼ同等にみえる。こちらであれば対外公開にも使えそうだ。
ソフト名 | 対応OS | 利用料 | 提供元 |
---|---|---|---|
Adobe Acrobat 9 STANDARD | Windows Vista/XP | 3万6540円 | アドビシステムズ |
以上ざっと見てきたが、Adobe Acrobatを持っていれば、迷わずAdobe Acrobatの機能を利用すべきだろう。持っていない場合はフリーで使えるPDF Slimの標準モードがおすすめだが、テキスト主体のファイルには効果が見込めないようなので、その場合はPDF Cleanerも試してみるとよさそうだ。PDF Cleanerは今回のテストではあまり芳しい結果ではなかったが、あるテストでは30%前後ファイルサイズを削減できたという話もあり、試す価値はありそうだ。
なお今回は、JPG圧縮やフォント埋め込みなど詳細なパラメータの変更を行わず、デフォルトのメニューを中心にテストを行った。またテキスト系がことごとく文字化けした海外製ツールの結果は除外している。もっといい方法やツールをご存じの読者ははてなブックマークやTwitterなどでお教えいただきたい。
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