モノクロ液晶と幅広キーボードを搭載し、乾電池で駆動するテキスト入力専門機としておなじみのポメラ。“最新機器の導入に保守的なIT記者”が、3月に登場した「DM25」を使ってノマドワークに挑戦した。
2008年10月にポメラの初代モデルが発売されたとき、真っ先に思い出したものがある。NECがかつて販売していた「モバイルギア」だ。キーボードの折りたたみ構造こそ異なるが、やはりモノクロ液晶とキーボードを備え、乾電池で駆動する“機能を割り切ったマシン”というコンセプトは非常に似ていた。
実は筆者、そのモバイルギアの初代モデル「MC-K1」を大学生時代に購入したことがある。ただ、15年近く前の話(たしか1996年)であり、実機はもはや手元になく、買った店も覚えていない。購入の目的も、正直なところよく覚えていないのだが、当時まだ主流であったパソコン通信を楽しむためであったことは間違いない。MC-K1にはアナログモデムが内蔵されていたのだ。
その頃の筆者の部屋には、モジュラージャックなどという気の利いたものが配線されていなかった。そこで、深夜になるとモバイルギアを持って自宅の玄関先に行き、一時だけ電話ケーブルをつなぎ替えてパソコン通信を楽しんだ。
しかし、これは長く続かなかった。MS-DOSでもWindowsでもない独自システムで動いているMC-K1では、結局のところ掲示板のログをダウンロードするくらいしか使い道がない。便利なフリーウェアがあったとしてもそもそもインストールできないので、パソコン通信の利便を半分も享受できなかったように思う(『DOS化』という改造を行っていた人は、そうでもないかもしれないが)。
また、購入したのは大学生だった頃で、講義の内容をワープロ打ちしてレポートにするという時代ではなかった。卒業論文だけはWindowsの一太郎で書いたが、当時の筆者にとって、MC-K1はあくまでも趣味のためのマシンであり、“日常生活に欠かせない機械”というポジションには達しなかった。
MC-K1はまた、日本語入力IMEのカスタマイズがあまりできなかったように記憶している。単3乾電池型の充電池が普及していなかったため、電池代が意外と高くついてしまったこともあろう。この部分は特に記憶があいまいなため断言できないのだが、こういったもろもろの個人的体験が年月を経て“発酵”し、「機能割り切り型のマシンは自分には不向き」という確信が心の中に生まれている。
――というわけで、筆者はこれまで、超割り切り型のデジタルメモツールとして名高い「ポメラ」をまともに触ったことがないのだ。ポメラはQWRTYキーボードに小型のモノクロディスプレイが付いたデジタルメモツール。開くとすぐに起動し、思いついたことやアイデアをすぐ書きとめられるのが特徴だ。
ポメラは従来モデルに比べて薄く、軽くなった折りたたみ型の最新モデル「DM25」が3月に登場し、2012年の10月には最上位モデルの「DM100」がEvernoteへの投稿やFlashAirに対応するなど進化し続けている。最近はノマドワークがトレンドでもあるし、そろそろポメラでノートPCレスのワーキングに挑戦してみよう――というのが、今回のレビューだ。
前編ではDM25、後編ではDM100を使って、IT記者のノマドワークにどのように役立つかを試した。
ポメラは「テキスト入力専用マシン」であり、キーボードの使用感が利用者にピッタリとマッチするかが重要だ。仕事でPCを長年に渡って使った身からすると、ポメラはこの点でいろいろと違いを実感させられる。
まず、キーボード全体の幅やキーピッチがPCのそれとは異なる。DM25のキーボードをオープン状態にすると、横幅はおよそ234ミリ。筆者が常用している11.1型画面のノートPC「VGN-TT90S」(ソニーVAIO)は、幅が約250ミリだ。数値の上ではあまり差を感じないが、実際に両方のキーボードを前にすると、やはりDM25は窮屈に感じてしまう。
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