「もう争奪戦ですよ、せっかくお客さんが戻り始めたのにぜんぜんアルバイトがいない」
先日、ニュースを見ていたら、居酒屋の店長さんがそんな嘆きの声を口にしていた。10月25日の時短解除にを受けて、ようやく営業を再開して徐々に客足も戻り始めたのだが、バイトの求人をしてもなかなか応募がないというのだ。
今、外食業界では「人手不足」が深刻な問題になっている。就職情報大手マイナビによると、飲食業界のアルバイト募集件数はほとんどの業態で10月は増加しており、特に「居酒屋・バー」では直近1週間で4倍以上に伸びている。しかし、バイトの応募がそれにまったく及ばないというのだ。
「コロナで苦しんだ外食を政治がもっと支援してやるべきだ」と感じる方も多いだろう。中には労働力確保のためにも、海外からもっと外国人労働者を呼び込むしかないのでは、と考えるような方もいるかもしれない。
が、それよりも遥かに効果が高いのが「時給アップ」であることは言うまでもない。日本の「人手不足」は、労働者の絶対数が不足しているわけではなく、不人気業界が敬遠される「雇用ミスマッチ」がほとんどだ。
時給労働者の多くは、「やりがい」とか「職場の愉快な仲間」などよりシンプルに「時給が高いか」を重視する。だから、世界では人手不足が起きると賃上げで対処するのが常識だ。実際、日本同様に経済活動回復後の人手不足が深刻な米国でも、「人手確保に向けて賃上げの動きが活発化。その結果、10月の平均時給は前年同月比で5%近く伸びた」(時事通信 11月6日)という。
「そりゃ賃上げできるもんならしたいけど、売り上げが厳しくて時給を上げられないんだ!」と怒りで震える外食経営者も多いだろう。ただ、厳しいことを言わせていただくと、そういう考え方をあらためない限り、多くの先進国が賃金を上げてきたこの30年間で、ほとんど賃金が上がっていない「安いニッポン」から抜け出すことはできない。
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