前編では、トヨタのカーボンニュートラル戦略を理解しようともせず、実績にも目を瞑(つむ)り続けて、CO2削減マイナス23%の日本メソッドを訴求しそこねた無策な日本政府に愛想を尽かしたトヨタが、理解者であるタイを軸にASEANのCO2削減に力を入れ始めた話を書いた。
では、なぜタイでは、それが可能なのか? そこはやはりCP(チャロン・ポカパン)グループの凄(すご)さということになる。CPの主要事業の1つに養鶏がある。しかしそこは途上国、海外への食品輸出に関して、衛生や安全規制の不行き届きを疑われ、なかなか輸出が増えなかった時代があった。
CPはそのイメージを覆すことに尽力して、先進国をしのぐ管理体制を整えた。安全、安心。そして環境貢献。そのために彼らは食品の安全性のトレーサビリティやオープン化のみならず、莫大な養鶏場の鶏糞を集積し、ドームに集めて発酵させ、メタンガスを取り出し、それで施設を運用するための電力を賄っている。
これにはトヨタのエンジニアも驚いたという。メタンまでできていれば、水素に変換するのは極めてたやすい。メタンとは要するに炭素を核に水素が多重結合したものだから、触媒を使って炭素を外してやれば水素ができる。もちろん炭素はCO2になるので、回収しなければならないが、そもそもメタンとして燃やす時にはそれは燃焼ガスに含まれているので、水素にすることによって増えるわけではない。
ということであくまで一例にすぎないが、畜産の廃棄物からメタンを生成するところまでは既にできている。そこまでの準備が大変だと思っていたトヨタは、タイの、というかCPのポテンシャルに驚かされることになる。あとワンアクションで水素ができるのであれば、水素物流は決して遠くない。次のCOPまでに成果を出すという計画は、CP自身による長年の積み重ねがあってこそである。
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