日立製作所が説く「AIエージェント活用の目的」とは? AI事業のキーパーソンに聞くWeekly Memo(1/2 ページ)

企業が複数のAIエージェントを活用する際、問題になるのがそれらをどうマネジメントしていくかだ。日立製作所のAI事業のキーパーソンにその現状や課題、対策、訴求ポイントを聞いた。

» 2025年01月27日 16時30分 公開
[松岡 功ITmedia]

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AIエージェントをいかに活用すべきか 国内ITサービスベンダー4社に聞く

「AIエージェント活用元年」になりそうな2025年。

AIエージェントをうまく活用できるかどうかの分かれ目になるのが、「AIマネジメント」だと筆者は考える。

いずれ複数ベンダーのAIエージェントが社内に混在する段階になったとき、データ管理をはじめとするマネジメント面で収拾がつかなくなる可能性があるからだ。

そこで、国内ITサービスベンダー大手のNTTデータや富士通、NEC、日立製作所のAI事業のキーパーソンに、AIエージェントをいかに活用すべきかについて、特にAIマネジメントの問題をどう解決すべきかという切り口で取材した。

既にAIエージェントのテスト段階にある企業だけでなく、これから導入を考える企業の参考になれば幸いだ。

日立製作所の吉田 順氏(編集部撮影)

 4社取材企画の2回目となる本稿では、日立製作所の吉田 順氏(Generative AIセンター センター長 兼 デジタルシステム&サービスセクター Chief AI Transformation Officer)に話を聞いた。

 同氏が説くAIマネジメント対策はどのようなものか。ユーザー企業の現時点におけるAIエージェントの利用状況や、今後発生しそうな課題、そして、そもそも企業として何のためにAIエージェントの活用に取り組むのか。

 AIエージェントを活用する上で重要になる、「人間とAIの関係」の考え方や、AIエージェント活用に当たってIT部門の役割が重要になる理由についても聞いた。

日立製作所はどう見る? 「AIエージェントの可能性と課題」

 2024年後半から注目を集めるAIエージェントだが、企業での利用状況はどうなのか。吉田氏は次のように述べた。

 「現状では多くの企業が生成AIの活用を進めている段階で、その延長線上にあるAIエージェントの活用はまだこれからといったところだ。生成AIの活用が定着してきた企業では、AIエージェントの活用にも乗り出そうという意欲が強い。ただ、技術の進展が早すぎて戸惑っている企業も少なくない」

 吉田氏の話からするとAIマネジメントが問題となるのはまだ先のように感じる。ただし、AIエージェントは業務ごとに複数のものが同時に動き出す可能性が高いので、やはり今のタイミングで考えることは非常に大事だという印象を改めて抱いた。

 こうした現状を踏まえ、AIエージェントの可能性と課題について同氏はどのように見ているのか。まず、可能性については次のような見方を示した。

 「AIエージェントはオフィスワーカーをはじめ、さまざまな作業現場で働くフロントラインワーカーにとっても非常に高い生産性向上につながる技術だと捉えているので、ぜひ多くの方々および企業に使っていただきたい。AIエージェントが高い生産性を上げる可能性があるのは、生成AIは業務のタスクが対象なのに対し、AIエージェントは業務プロセスに向けて自律的に作用するので、効率化できる範囲が格段に広がるからだ。加えて、AIエージェントはオフィスワーカー向けの話題が中心になりがちだが、幅広い製造現場を持つ当社としてはフロントラインワーカーにも大きな効果が見込めることを強調したい」

 一方、課題については、「AIエージェントに学習させるデータとして、ドキュメント化されている“形式知”だけでなく、ドキュメント化されていない熟練者のノウハウのような“暗黙知”も取り込む必要がある。そうでないと、ワーカーの業務を代行するエージェント(代理人)にはなれない」という点を挙げた。

 オフィスワーカーだけでなくフロントラインワーカーにも着目した日立らしい課題提起だ。

 とはいえ、暗黙知もデジタルデータ化する必要がある。この点について同氏は、「手段は幾つかある。例えば、暗黙知を持つ熟練者に聞き取りしてテキストデータにする。また、言葉では言い表せない感覚的な暗黙知については、動画を撮ってその内容を生成AIでデータ化するといった具合だ」と説明した(図1)。

図1 AIエージェント時代に向けた日立の取り組み(出典:日立製作所の資料)

 課題についてはもう一つ、「生成AIの活用はアプリケーションとして捉えてもよかったが、AIエージェントは業務プロセスにおいてさまざまな動きをするのでシステムとして捉える必要がある。複数のAIエージェントが連携して業務を動かすことになるので、それらのデータの管理や活用も含めて事業部門あるいは企業全体の業務形態を見据えて、AIエージェントを活用するシステムの設計から構築、運用の仕方についてあらかじめ考えて臨むことが望ましい」とも述べた。

 「AIエージェントはシステムとして捉えるべき」という同氏の指摘は重要だ。現実的には一部の業務からAIエージェントを活用するケースが多くなるだろうが、そこからその事業部門、さらには企業全体の業務プロセスに広げるつもりならば、早い段階でAIエージェント活用のグランドデザインを描くべきだろう。

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