――LINEはそもそも、どういうきっかけで生まれたんですか?
森川: 僕たちは元々「検索とコミュニケーションを結びつける」という領域でやってきたんですよね。そのためには、コミュニケーションを活性化させる、もとになるものが必要だったんですよ。PCでブログとかSNSとかいろいろやってきたんですが、なかなかNo.1になれなかった。でも、トラフィックがないとそこから生まれてくる情報を整理するのも難しい。
コミュニケーションを軸にして、しかもスマートフォンに集中させたサービスを作ろう……という過程の中で「メッセージのサービス」を作ろうという話になったんですね。そんな頃に、東日本大震災が起きたんです。社員とのやり取りをLINEと似たような社内のサービスを使って行っていたんですよ。そしてあの頃、震災後のコミュニケーションツールとしてTwitterが急激に伸びたということもあって、「じゃあ、こういうメッセージサービスの形がいいだろう」という構想が固まって、開発1カ月半で出したのがLINEなんです。
――スマートフォンシフトの方向性に加えて、震災が大きなきっかけだったんですね。
森川: はい。LINEでは相手にメッセージが表示されると「既読」と出ますよね。あれは震災でスタッフの安否確認をしている時に、読んだかどうかが分かるといいよねという話になって、できた機能です。
――LINEの開発にあたって参考にしたサービスはありますか?……というのは私、震災よりさらに前の話ですが、2008〜2009年頃にiPhone 3Gを使っていたんです。当時、iPhoneの機能の中で一番いいなと思ったのがメッセージの部分でした。iPhoneのSMS/MMSの画面って、特定の相手との会話を、送ったメッセージも受け取ったメッセージもまとめて見られますよね。例えば私と森川さんがどんなやりとりをしたのか、一画面でずーっとさかのぼれる。しかもMMSで写真を送ることもできる。こういうことができる携帯やサービスを作ればきっとヒットするのに……と思っていたら、そこをまさにLINEが具現化した。あれはすごいな、と個人的に思っていて。
森川: なるほど。さっきも言ったTwitterもそうですし、スマートフォンならではのメッセージングサービスとは? ということを考える中では、世界で先行しているサービスがすでにたくさんあったので、いろいろ参考にはしました。カカオトーク(参照リンク)とか、Instagram(参照リンク)とか。
――開発に際して「LINEのキモ」として意識してきたことはありますか?
森川: 1つはクローズドなコミュニケーションということですね。今までのSNSがどちらかというとオープンで、その分「SNS疲れ」みたいなところがあったのに対して、(LINEでは)親しい人と本当に密なコミュニケーションをクローズドにとれること。それを具現化したいなというのはありました。
2つめは、スマートフォンに特化して、スマートフォンならではというサービスにすること。電話帳との連携機能(編注:スマートフォンのアドレス帳内にあるメールアドレスや電話番号をサーバに送り、アドレス帳に登録してある自分の友人がLINEユーザーかどうかを照会し、LINEに友人を自動登録する機能のこと。当初、LINEの利用開始では必須だったが、現在はこの機能を使わず、サーバにアドレス帳情報を送らないように選択することもできるようになった)もこうした中で生まれました。
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