10月5日に開幕したCEATEC JAPAN 2010でNTTドコモは、“メガネ型AR(拡張現実)”を実現するシースルー型の小型HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を参考出展した。名前は「AR Walker」。HMDの開発はオリンパスが手掛けており、ドコモのスマートフォンと連携してコンテンツを表示する。市販のメガネに装着できるほか、視界をさえぎらない構造を採用し、シースルー(半透明)の映像投影を実現。将来的には行動支援型のARサービスに役立てたいという。
現実空間に電子情報を重ねて表示するAR技術は、モバイルサービスの世界で近年注目が高まっており、「セカイカメラ」などさまざまなアプリが登場している。こうしたモバイルARの多くは、モバイル端末のカメラ映像にARコンテンツを重ね合わせ、それを端末のディスプレイに表示する。一方AR Walkerは、HMDを使って視界の一角にARコンテンツを直接滑り込ませる。
情報を視界に常時表示できるAR Walkerを使って、ナビゲーションやプッシュ型の情報提供を行うのがドコモが描くサービス像だ。「プッシュ情報をタイムリーに提供できるディスプレイを考え、こうしたデバイスを企画した」(説明員)。ブースの紹介コーナーでは、HMDが映し出すキャラクターの後ろに付いていくことで目的地に到着するナビゲーションサービスや、街中の飲食店の情報がARコンテンツとしてプッシュ通知されるサービスの模擬体験ができた。
HMDはスマートフォンとコードで接続されており、映像データや電力はスマートフォンから有線で提供される。一方、HMDは6軸センサーを内蔵し、利用者の“見ている方向”をスマートフォンに伝えることができる。この6軸センサーの情報とスマートフォンのGPS機能などを組み合わせることで、位置情報を持ったコンテンツを現実空間に配置できるという。
HMDのサイズは人差し指程度で、重さも10グラムと小型軽量。市販のメガネのつるに装着して利用できる。装置先端の光学バーから映像を目に投射し、視界の一角にQVGA(320×240ピクセル)のシースルー映像を届ける。「瞳分割方式シースルー光学系」という技術を使うことで、利用者の視界を確保しながら、明るく見やすいシースルー映像を小型の装置で可能にした。この技術はオリンパスが以前から研究していたもので、同社では過去にも瞳分割方式シースルー光学系を使ったHMDを開発している。
デモンストレーションを実際に体験してみると、思いのほか鮮やかな映像が視界に飛び込んできた。光学バーの位置は利用者の目の位置に合わせて調節が可能で、セッティングさえ合えば明瞭な映像が浮かび上がる。
視界の一角にテレビ画面があるような感覚で、アニメ「電脳コイル」に登場する電脳メガネのように、視界全体に電子情報が広がるわけではない。それでも、空を見上げれば天気予報が見られたり、交差点の近くで進行方向を知らせてくれたり、街中にある飲食店を教えてくれたりと、普通に歩行しているだけで情報が表示されるのは便利と感じた。
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