フルMVNOでIIJが独自に提供できるのは「データ通信」に限られる。個人向けの格安SIMが発展したのは音声SIMの普及が大きいが、MVNO音声サービスは現在、MNOの卸によって実現しているため、一部オプションを除いて30秒あたり20円という従量課金が中心になっている。
加えて、HLR/HSSを開放したからといって、独自の音声サービス(音声定額など)が提供可能になるわけではなく、MNOの音声網との相互接続が必要になる。島上氏は「まずはデータ通信を先行させ、フルMVNOと音声をどう組み合わせるかは、ドコモと協議を進めていく」と述べるにとどめた。
IIJはフルMVNOとなることで、IoTの分野をさらに開拓し、「ヒトと機械が、ネットワークに接続する世界」を目指す。「SIMのコントロールも含めて利便性を向上させていくことで、世界がもっと便利になる。IIJが主体となって推進していきたい。今のサービスはMNOに縛られている。(MNOと)最低限戦えるレベルに持っていきたい」と島上氏は意気込みを語った。
IoTについては大手キャリアも推進しており、IIJがどこまで独自色を出せるのかは未知数だ。鈴木幸一会長は「IIJ(の固定通信サービス)を始めたときも、『インフラを持っていないIIJはどうするのか?』と言われてきた。僕らはインターネットの基本であるソフトウェアで、ここまで来られた。そういった蓄積した技術を生かして、新しいスキームを僕たち自身で作っていきたい。今のキャリアにないサービスを作っていける自信はあるし、多様なサービスが展開できる」と語気を強めた。
IIJはMVNEとして多くのMVNOに設備やノウハウを提供しているが、フルMVNOにおいても、MVNEとしての取り組みは進め、パートナー企業にフルMVNOのプラットフォームを提供する。島上氏は「今までお付き合いなかったMVNOとも、ぜひ協業したい」とオープンな姿勢を示した。
フルMVNOにまつわるコストは「数10億円以内」(鈴木氏)と大きな規模だが、同氏は「それぐらいの(コストをかける価値のある)ビジネスチャンスがあり、私たちが作るサービスで回収できる」と自信を見せた。
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