ドン・キホーテやアピタ、ユニーといった小売店でおなじみのパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が、「マジモバ」を立ち上げ、MVNOに参入した。流通系企業のMVNOとしてはイオンモバイルが有名だが、マジモバは自身でサービスを直接運営するのではなく、ホワイトレーベル戦略を取るエックスモバイルとの提携で事業を展開する。
売りになるのは、3GBで770円(税込み、以下同)の「驚安プラン」。よりデータ使用量が多いユーザーに向け、15GB、25GB、50GBの「最驚プラン」も用意する。さらに、エックスモバイルが展開するモバイルWi-Fiルーターも「最驚Wi-Fi」として取り扱う。売上高が2兆円を超えるPPIHが始めるMVNOなだけに、そのインパクトは大きい。ここでは、同社やエックスモバイルがマジモバを開始した狙いを深掘りしていきたい。
「顧客最優先主義を掲げる、PPIHの次なる取り組み」――こう語るのは、PPIHの上席執行役員 森谷健史氏だ。同社は物価高に対抗できる買い物体験として、電子マネー「majica(マジカ)」のアプリ会員が特別価格で商品を購入できる「マジ価格」や、最大4円まで端数を切り捨てる「マジ値引」を導入してきた。このようなお得さが受け、majica会員は2024年に1500万を突破。顧客接点としての重要性が増している。
そのPPIHが次に目をつけたのが、家庭の固定費だったという。中でも通信費は14%と割合が高く、削減効果が見込みやすい。PPIHのドン・キホーテが「驚安の殿堂」をキャッチフレーズに掲げていることからも分かるように、同社の事業とMVNOの相性もいい。料金は、3GBの驚安プランが月額770円。データ容量の大きい最驚プランは15GBが2508円、25GBが3278円、50GBが6050円になる。
同時に展開する最驚Wi-Fiは、300GBで4180円。追加料金は必要だが、海外での利用も可能だという。マジモバは、PPIHが手掛けているだけに、同社のサービスと連携しているのも特徴だ。最驚プランの特典として「今月のおごり」を用意しており、ドン・キホーテやアピタ、ピアゴといった店舗で、指定された商品を無料でプレゼントする。単に料金が安いだけでなく、お得な特典があるところも。マジモバの魅力といえそうだ。
このサービスを提供しているのが、2023年に10周年を迎えたばかりのエックスモバイルだ。1500万のmajica会員を基盤にしたマジモバと聞くと、PPIH自身が通信事業者としてサービスを提供しているように思えるが、実はユーザーと直接契約するのはエックスモバイルで、PPIH側はそれを仲介している立ち位置になる。これは、エックスモバイルが推進しているホワイトレーベルの仕組みを利用したサービスだ。
もともと同社は、自身のブランドでサービスを展開し、フランチャイズ方式で店舗を拡大していたが、2023年に戦略を大きく転換。2月にメンタリストのDaiGo氏とともに「DXmobile(現・D-Lab SIM)」を開始。同年3月には、起業家の堀江貴文氏とコラボレーションした「HORIE MOBILE」を立ち上げ、同氏の知名度も相まって大きな話題を呼んだ。その後も、エックスモバイルはライブドアや幻冬舎などと協業し、それぞれのブランドを冠した「livedoor MOBILE」や「幻冬舎MOBILE」を開始した。
いずれも、コラボレーション相手のブランドを冠しており、それぞれが独自のサービスを提供しているように見えるが、裏側のサービスはエックスモバイルが設計している。黒子になるという意味ではMVNOを支援するMVNEと同じだが、通信サービスはエックスモバイルが直接ユーザーに届けている点が大きな違いといえる。ビジネスモデルはレベニューシェアの形を取っているため、協業先が低リスクで通信サービスを提供できるのが、そのメリットだ。
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