あえて最安狙わないドンキの格安SIM「マジモバ」 インパクト大だが“ahamoショック”第2波が懸念材料石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2024年09月14日 08時50分 公開
[石野純也ITmedia]

 ドン・キホーテやアピタ、ユニーといった小売店でおなじみのパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が、「マジモバ」を立ち上げ、MVNOに参入した。流通系企業のMVNOとしてはイオンモバイルが有名だが、マジモバは自身でサービスを直接運営するのではなく、ホワイトレーベル戦略を取るエックスモバイルとの提携で事業を展開する。

 売りになるのは、3GBで770円(税込み、以下同)の「驚安プラン」。よりデータ使用量が多いユーザーに向け、15GB、25GB、50GBの「最驚プラン」も用意する。さらに、エックスモバイルが展開するモバイルWi-Fiルーターも「最驚Wi-Fi」として取り扱う。売上高が2兆円を超えるPPIHが始めるMVNOなだけに、そのインパクトは大きい。ここでは、同社やエックスモバイルがマジモバを開始した狙いを深掘りしていきたい。

マジモバ PPIHは、新サービスのマジモバを開始した。写真は左からPPIHの森谷氏、ゲストでタレントの山之内すずさん、エックスモバイルの木野氏。ドンペンとアピタンも登壇した

ホワイトレーベルの仕組みを活用 料金は3GB、770円から

 「顧客最優先主義を掲げる、PPIHの次なる取り組み」――こう語るのは、PPIHの上席執行役員 森谷健史氏だ。同社は物価高に対抗できる買い物体験として、電子マネー「majica(マジカ)」のアプリ会員が特別価格で商品を購入できる「マジ価格」や、最大4円まで端数を切り捨てる「マジ値引」を導入してきた。このようなお得さが受け、majica会員は2024年に1500万を突破。顧客接点としての重要性が増している。

マジモバ マジモバの狙いを語った森谷氏
マジモバ majicaの会員数は、1500万を突破している

 そのPPIHが次に目をつけたのが、家庭の固定費だったという。中でも通信費は14%と割合が高く、削減効果が見込みやすい。PPIHのドン・キホーテが「驚安の殿堂」をキャッチフレーズに掲げていることからも分かるように、同社の事業とMVNOの相性もいい。料金は、3GBの驚安プランが月額770円。データ容量の大きい最驚プランは15GBが2508円、25GBが3278円、50GBが6050円になる。

マジモバ 3GBの驚安プランが特に安く、料金は770円だ

 同時に展開する最驚Wi-Fiは、300GBで4180円。追加料金は必要だが、海外での利用も可能だという。マジモバは、PPIHが手掛けているだけに、同社のサービスと連携しているのも特徴だ。最驚プランの特典として「今月のおごり」を用意しており、ドン・キホーテやアピタ、ピアゴといった店舗で、指定された商品を無料でプレゼントする。単に料金が安いだけでなく、お得な特典があるところも。マジモバの魅力といえそうだ。

マジモバ 毎月、PPIHの店舗で商品をおごってもらえるという
マジモバ 実際の商品。2508円からの料金プランでこれらが手に入るのは、お得といえそうだ(訂正:2024年9月14日17時00分 初出時、キャプションの料金に誤りがありました。おわびして訂正いたします)

 このサービスを提供しているのが、2023年に10周年を迎えたばかりのエックスモバイルだ。1500万のmajica会員を基盤にしたマジモバと聞くと、PPIH自身が通信事業者としてサービスを提供しているように思えるが、実はユーザーと直接契約するのはエックスモバイルで、PPIH側はそれを仲介している立ち位置になる。これは、エックスモバイルが推進しているホワイトレーベルの仕組みを利用したサービスだ。

 もともと同社は、自身のブランドでサービスを展開し、フランチャイズ方式で店舗を拡大していたが、2023年に戦略を大きく転換。2月にメンタリストのDaiGo氏とともに「DXmobile(現・D-Lab SIM)」を開始。同年3月には、起業家の堀江貴文氏とコラボレーションした「HORIE MOBILE」を立ち上げ、同氏の知名度も相まって大きな話題を呼んだ。その後も、エックスモバイルはライブドアや幻冬舎などと協業し、それぞれのブランドを冠した「livedoor MOBILE」や「幻冬舎MOBILE」を開始した。

マジモバ HORIE MOBILEを提供し、大きな話題を集めたエックスモバイル。マジモバにも、この手法を応用している

 いずれも、コラボレーション相手のブランドを冠しており、それぞれが独自のサービスを提供しているように見えるが、裏側のサービスはエックスモバイルが設計している。黒子になるという意味ではMVNOを支援するMVNEと同じだが、通信サービスはエックスモバイルが直接ユーザーに届けている点が大きな違いといえる。ビジネスモデルはレベニューシェアの形を取っているため、協業先が低リスクで通信サービスを提供できるのが、そのメリットだ。

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