近年、気候変動の影響で自然災害が増加している。防災への意識が高まる中、スマートフォンは災害時の重要なツールとなっている。災害情報の収集、家族や知人との連絡、避難所の位置確認など、スマートフォンが命を守る情報源になることを考えると、非常時の電源確保は防災対策の要といえる。
今回は、筆者が非常用持ち出し袋の見直しを行う中で選んだ、ソーラーパネルとモバイルバッテリーについて紹介する。
きっかけは、防災の日に「東京防災」を改めて読み直したことだった。最新版の「東京防災」には、モバイルバッテリーについて興味深い記載があった。「スマートフォンの充電器はソーラー式と乾電池式の複数を常備しておく」というのだ。筆者宅にあった初版の東京防災ではソーラー式の言及はなかったため、最新版では新しい知見を取り入れているのだろう。
この記述を読んで、我が家の防災対策を見直すことにした。非常用持ち出し袋を新しく用意する際に、ソーラーパネルを入れておき、バッテリーについても新たに購入して備えておくことにした。
東京防災ではソーラー充電型のモバイルバッテリーが推奨されているが、筆者はあえてソーラーパネルとモバイルバッテリーを別々に選択した。その理由は主に2つある。
まず、故障リスクの低減だ。一体型製品は一部が故障すると全体が使えなくなる。特に、バッテリーの経年劣化が懸念される。分離型なら、バッテリーが劣化してもソーラーパネルは使用可能だ。次に、長期的な性能維持が挙げられる。分離型ならバッテリーのみを新しいものに交換でき、システム全体の性能を維持しやすい。より性能の高い製品が登場したら、個別にアップグレードできる利点もある。
これらの理由から、長期的な信頼性と性能維持を重視し、別々の製品を選ぶことにした。災害はいつ起こるか分からない。だからこそ、長期的に性能を維持できる防災グッズの選択が重要だと考えた。
ソーラーパネルを選ぶにあたり、以下の点を重視した。
一般的に、スマートフォンの充電に適したソーラーパネルは5W〜30W程度の出力のものが選ばれる。小型軽量で十分な充電能力を持つという点で、このレンジが携帯性と実用性のバランスが取れているためだ。
一方、100Wなどの大型ソーラーパネルは、主に携帯用電源との併用を想定している。これらの大容量パネルは、ノートPCやその他の電力消費の大きい機器の充電、あるいは長期の野外生活などでより多くの電力が必要な場合に使用される。ただし、サイズと重量が大きくなるため、機動性は低下する。
今回の選定では、防災用としての携帯性を重視し、これらの条件を満たす製品として、FlexSolar製の20Wソーラーパネルを選択した。
この製品の最大の特徴は、折りたたみ式で持ち運びやすい点だ。展開時のサイズは462×304×14mmだが、折りたたむと304×248×15mmと14型ノートPCとほぼ同じサイズになる。重量も実測で約428gとこの手のパネルの中では軽い。
メーカーのFlexSolarは中国のMeigetekが所有するブランドで、米国に拠点を展開するなど、一定の販売実績があるようだ。
変換効率は最大24%で、曇りの日でもある程度の発電が期待できる。また、パネル表面には耐久性の高いETFE素材を使用しており、屋外での使用や長期保管に適している。
出力は最大20Wで、USB Type-A端子とUSB Type-C端子の2ポートを備えている。どちらかのポートやケーブルが使えなくてももう片方が機能するという点で、災害時の冗長性を確保できる。
懸念点としてはソーラーパネルが対応している急速充電規格がQuickCharge 3.0規格で、業界標準となりつつあるUSB PD(Power Delivery)と互換性を持っていない点が挙げられる。QC3.0非対応機種とのリンクはUSB規格のBCP(Basic Charging Protocol)1.5Aで最大7.5W給電になると予想される。これがこのソーラーパネルが低価格で販売されている理由でもあるのだろう。
価格は執筆時点(2024年9月)で5345円だった。これはAmazon.co.jpでの10%オフクーポンを適用した後の価格だ。同クラスの製品としては標準的な価格帯といえる。なお、こういったクーポンやセールは頻繁に行われているので、購入時には最新の価格をチェックすることをおすすめする。
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