ドコモが話す「買収・出資攻勢」5つの方向性
NTTドコモが、事業者を実質的に買収したり、有力事業者に出資する、あるいは出資比率を引き上げたりするケースが目立っている。狙いは何か、中村社長が話した。
フジテレビに出資したり、ローソンに出資したりと、このところNTTドコモが事業者を買収、あるいは出資するケースが目立つ。同社はどんな戦略を持って“出資戦略”を進めているのか。
3月30日のNTTドコモ定例社長会見の場で、中村維夫氏が方向性を示した。
クレジットカード、放送、技術……5つの方向性とは
まず1つ目が、NTTドコモが積極的に推進するクレジットカード関連の出資だ。同社は「iD」ブランドの携帯クレジットサービスで、急速にアライアンスの構築を進めている。既にam/pm全店舗(3月27日の記事参照)、イオングループ店舗での導入がアナウンスされているほか(3月27日の記事参照)、ローソン全店舗でも導入されることが発表された(3月28日の記事参照)。この際、ドコモはローソンに90億円を出資することも併せて明かしている。中村氏は2006年を「iDが本格普及する年にしたい」と意気込む。
2つ目は、「インターネット関係」。例えば楽天と業務・資本提携した事例などがこれにあたる(2005年10月11日の記事参照)。楽天がオークション部門を分社化して設立する新会社に、ドコモが出資するというかたちだが「(楽天などネット企業とは)オークションに限らず、提携していきたい」という。
3つ目はワンセグで活気づく放送関連事業だ。ドコモは2005年末にフジテレビに2.6%出資しており(2005年12月21日の記事参照)、今年に入っても日本テレビ放送網と、コンテンツの制作や投資を行う有限責任事業組合(LLP)を設立することで合意している(2月9日の記事参照)。ワンセグは当初固定テレビ向けと同じ内容を流す「サイマル放送」だが、2008年にも非サイマルのオリジナル番組が始まると見られており、ドコモとしても出資を通じて非サイマルの番組制作に影響力を持ちたい考えだ。
4つ目は、「技術関連」。例えば、ドコモはACCESSの出資比率を引き上げて第2位の株主になっているほか(2005年11月30日の記事参照)、同じ時期にDoJa/Javaプラットフォームを共同開発してきたアプリックスの筆頭株主になっている(11月30日の記事参照)。中村氏は、「(携帯の技術で)ライセンスを持っているところを押さえておかないと、(事業展開上)つらいものがある」と話している。
5つ目は海外事業だ。ドコモは以前から世界戦略を推し進めているが、直近ではグアム・サイパン地域の携帯事業者であるGuam Cellular & Pagingと、Guam Wireless Telephone Companyを買収すると発表した(3月20日の記事参照)。
海外戦略、従来との微妙な違い
中村氏によれば、最後の海外事業者買収については、従来の“欧州などでiモードを技術ライセンス提供し、世界展開していく”施策とは若干方向性が異なるという。
グアムなどは日本人が観光目的でよく出かける地域で、「(年間に)130万人の日本人が訪れている。現地にGSMのインフラがあるにはあるが、Guam Wirelessのやっている事業は非常に……設備があまりよくない。このためローミングをしているドコモとして、苦情を受けている。またパケット網がないため、iモードも使えない。ここを見直す」
もう1つ、グアム・サイパンは通信事業者がCDMA 2000を採用する方向にあり、ドコモが採用するW-CDMAのインフラは「誰も作ってくれないことになる」。これも気になるポイントだったという。「米国の電波帯を持っているGuam Cellularを買収することで、これをワイドバンド(W-CDMA)に変えるということ」。海外投資に見えるだろうが、130万人の(邦人)ユーザーに焦点をあてたもので「国内競争に耐えられないことも将来的に懸念して、買収に踏み切った」とした。
買収、出資を連発……事業者とのあつれきはないのか?
ドコモが買収や事業者への出資を相次いで発表していることは、1つの疑問を生む。ドコモは従来「プラットフォーム事業者」であり、iモードの“場”を提供して裏方に徹することでコンテンツプロバイダと良好な関係を築いてきた。しかし、例えばローソンと資本提携して「iD」を推進するとなると、これは裏方ではなく「プレーヤー」の立場。iモードFeliCaのプラットフォームでクレジットカードサービスを提供する事業者(2004年7月21日の記事参照)と競合する可能性がある。
この点を問う声も上がったが、中村氏はiDが小規模金額の決済を狙ったサービスであり「開拓されていない分野で、新しい事業者として入っていくことで(ほかの事業者と)WIN-WINになっていく」と説明。既存のマーケットに割って入るのではないため、反発はないと説明する。「パイを食い合うことはない。いい関係だ」
中村氏はさらに、放送局への出資話にしても「携帯と放送を融合させる」という新ジャンルに取り組むのであり、新しいジャンルに取り組んでいるのだとコメント。「(コンテンツプロバイダとして)着うたの世界に入ろうとかではない」と強調した。
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