“250円で32kbps”のmineo「マイそくスーパーライト」は誰向け? オプテージ福留氏に聞く:MVNOに聞く(1/3 ページ)
スマートフォンの料金プランはデータ容量別で決めるのが一般的だが、速度別の料金プラン「マイそく」を打ち出したのが、オプテージのmineoだ。3Mbps、1.5Mbps、300kbpsという3種類の速度別プランに加え、月額250円で32kbpsという低速通信で利用できる「マイそくスーパーライト」を提供した。32kbpsでは日常の使用に耐えないが、なぜこのプランを導入したのか。
スマートフォンの料金プランは、データ容量別が一般的だ。毎月、どの程度データ通信するかの総量で金額が決まる。これは、大手キャリアだけでなく、そのサブブランドやMVNOも同じだ。ドコモの「ギガライト」や楽天モバイルの「UN-LIMIT VII」も、その変種といえる。こうした状況に対し、速度別の料金プラン「マイそく」を打ち出したのが、オプテージのmineoだ。
マイそくは、2022年3月にスタートした料金プラン。開始当初は、1.5Mbpsの「スタンダード」と3Mbpsの「プレミアム」の2択だったが、同年8月に300kbpsに速度を抑え、料金を990円に設定した「ライト」を導入した。正午から午後1時の間は速度が32kbpsに絞られる制約はあるものの、データ容量に上限は設けられていない。こうした新しさが評価され、2022年12月に回線数は8万を突破した。
そんなmineoがマイそくに新たに導入したのが、速度が32kbpsの「スーパーライト」だ。同プランの料金はわずか250円。また、この料金プランに合わせ、KDDI回線のAプランに加え、ドコモ回線のDプランでもeSIMを導入する。とはいえ、32kbpsでは日常の使用に耐えないのも事実だ。速度が遅すぎるため、Webサイトの閲覧ですらタイムアウトしてしまう恐れがある。では、同社がマイそくスーパーライトを導入した狙いはどこにあるのか。
オプテージでmineoを率いるモバイル事業戦略部長の福留康和氏と、チームマネージャーの田村慎吾氏に、導入の経緯やその狙いを聞いた。
バックアップ回線を求めるユーザーが増えている
―― まずは、マイそくの現状と、スーパーライトを導入するに至った経緯を教えてください。
福留氏 昨今の通信障害やさまざまな自然災害で、バックアップ回線をお求めの方が増えています。mineoは、新規契約者のうち、約3割が複数SIMをご利用になっているというデータもあります。これは、割合としてかなり多いと思います。また、3Gが順次停波していくことにより、音声専用でご利用の方の乗り換えも、一定程度見込めます。その需要に応え、音声主体のサービスとして提供を開始するのが、新たに投入するマイそくスーパーライトです。
月額250円(税込み、以下同)のため、「10分かけ放題」をつけても800円、「時間無制限かけ放題」をつけても1460円ということで、これは業界最安水準です。音声専用の方にとっては、魅力的ではないでしょうか。
―― 音声専用といっても、まったくデータ通信できないわけではないですよね。
福留氏 テキストメッセージのやりとりは可能ですが、それ以外のデータ通信に関しては事実上困難です。しかしながら、マイそくには「24時間データ使い放題」のサービスも提供されています。こちらをご利用いただければ32kbpsは解除され、通常の「マイピタ」(データ容量別料金プラン)と同様の速度になります。
田村氏 独自調査にはなりますが、「できる」「できない」は表で出しています。LINEも、テキストのやりとりはできますが、スタンプは遅れてしまい、通話は難しい。そのため、テキストメールのやりとりとメッセージはできるという言い方をしています。
―― だからこその250円だとは思うのですが、ライトの300kbpsとスーパーライトの32kbpsだと、結構な開きがあります。例えば、スーパーライトを128kbpsにするというのは難しかったのでしょうか。
福留氏 できるだけお得な料金で提供したいということで32kbpsにしています。お昼の12時(正午)から午後1時の、通信が最も混雑する時間の通信量をベースに帯域の借り入れを行っているので、32kbpsを緩和するとなると、その分だけ新たな借り入れが必要になってしまい、今のような料金での提供が難しくなります。
―― 完全にデータ通信できないようにして、維持費として250円取るという手もあったと思います。
田村氏 そこまで踏み込まず、原価とのバランスも含めて(速度や料金を)決定しています。
子どもや両親に持たせたい、待受け電話として使いたいという反響
―― 冒頭でバックアップ回線としてというお話がありましたが、ちょうど同じタイミングでKDDIとソフトバンクが予備回線サービスを提供することを発表しました。こちらと比べたときの魅力はどこにありますか。
福留氏 (KDDIとソフトバンクのサービスは)ユーザーがより安心して利用するため(に特化した)の取り組みだと認識しています。われわれとしても、トリプルキャリアの強みを生かし、eSIMを通じてさまざまなキャリアの回線を提供することでニーズにしっかりお応えしていきたいと考えています。
―― バックアップがあった方がいいのではないかという考え方は、KDDIの通信障害で強く認識された印象があります。スーパーライトのサービスを検討し始めたのは、その後でしょうか。
福留氏 いえ。その前からですね。昨年3月にマイそくスタンダードとプレミアムを出しましたが、その時点で既に検討はしていました。当時から、スタンダード、プレミアム、ライトに加え、今回のスーパーライトの4つは案として出ていました。ただ、ファンの皆さんと会話をする中で、(4つも速度があると)分かりづらいという声もいただいていました。そこで、まずはシンプルに、スタンダードとプレミアムから開始しています。
田村氏 マイそくという考え方自体、それまでになかったものです。サービスを通信速度で選ぶこともありませんでした。いきなり4つもあると混乱してしまうので、ニーズがはっきり見えている1.5Mbpsと3Mbpsからスタートすることにしました。ただ、ライトを出したあたりで、この際だから(もっと低速で安いサービスも)というニーズが強くなっていきました。
福留氏 サービスを発表して以降ですが、自分の子どもに持たせたい、両親に持たせたい、単身赴任先の待受け電話として利用したいといったお声をいただいています。反響は大きかったですね。
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