ソニーのスマートウォッチ「wena」は終息を迎えるのか その背景と後継機の可能性を考える
ソニーは11月28日、スマートウォッチ「wena 3」シリーズのサポートおよびサービスを2026年2月28日に終了すると発表しました。wenaが当初目指していた腕時計とスマートウォッチ機能の融合は、既に果たされたともいえます。後継機の可能性についてソニーに聞いてみました。
ソニーは11月28日、スマートウォッチ「wena 3」シリーズのサポートおよびサービスを2026年2月28日に終了すると発表しました。修理受付が終了する他、wena 3アプリのサポートも終了。新規にダウンロードやインストールなどもできなくなります。利用中のアプリに関しては引き続き使えるようですが、新規にwena 3のセットアップをすることはできません。また、OSアップデートなどのタイミングで利用できなくなる可能性もあるとしています。
これを受けて、SNS上では「新手のソニータイマー」などの意見も見られましたが、wena 3の修理・サポートが2026年2月に終了するというのは、実は2023年6月時点で告知済みでした。
wena 3シリーズは2023年2月に生産を完了しており、2023年6月30日には、「wena3 の修理・モバイルアプリのサポートサービス提供期間は、生産完了(2023年2月)から3年間」と告知されていました(関連リンク)。今回、より詳細な情報が出てきたことで、話題が大きくなったと考えられます。ただ、一般的には、生産完了から3年間サポートされれば十分に手厚いサポートではないかと思います。
wena 3は、2020年11月に発売されたスマートウォッチです。これをスマートウォッチと呼ぶかは議論の余地がありますが、ソニー自身はスマートウォッチだとしています。
wenaシリーズは、2015年に自社クラウドファンディング・ECサイト「First Flight」で「wena wrist」としてクラウドファンディングを開始したのがスタートです。2017年12月には、有機ELを搭載した第2世代モデル「wena wrist pro」「wena wrist active」を発表しています。そして2020年11月に第3世代モデルの「wena 3」が発表されました。1世代1〜2年で終了となることも多いこの手のとがったガジェットとしては、wenaシリーズは息の長い製品でした。
wena wristのプロジェクトが開始された2015年は、スマートウォッチの黎明(れいめい)期であり、Apple Watchが発売された年(発表自体は2014年)でもありますが、まだまだスマートウォッチの機能とデザインがこなれていなかった時期です。このため、普通の時計にスマートウォッチの機能性を融合させるというコンセプトで、wena wristは誕生しました。
スマートウォッチとしての各種ヘルスケア機能を備えてはいたものの、それよりも普通の時計にFeliCaの決済機能(Suica対応は少し遅れましたが)を追加できるという点で人気を博していた気がします。
しかしながら、競合となるスマートウォッチも進化しており、各種ヘルスケア関連の測定精度の向上やスマートフォン連携の強化の他、見た目には普通の時計に見えるようになったり、FeliCaを搭載したりするものも増えてきました。その意味では、wenaが当初目指していた腕時計とスマートウォッチ機能の融合は、既に果たされたといえるのかもしれません。wena 3のサポート終了は、そうした事情もあるのでしょう。
先にも書きましたが、wena 3は生産終了から3年間後の2026年2月にサポート終了となります。スマートウォッチ市場で圧倒的なシェアを誇るApple Watch、というよりもApple製品は、販売終了から5年でビンテージ製品として修理サポートが制限され、7年でオブソリート(時代遅れ、使われなくなったという意)製品として完全にサポート終了となります。ちなみに、執筆時点でオブソリート製品に該当するApple Watchは、第1世代モデルのみとなっています。
さすがに、このサポート期間の長さと比べるとwenaの3年が短く感じてしまうのは仕方がないところでしょう。とはいえ、GoogleのPixel Watchは、最低3年間のソフトウェアアップデートが保証されていますが、ハードウェア的には保証期限(1年または2年)が過ぎると、基本的に修理は不可となるようです。SamsungのGalaxy Watchに関しても、2021年モデル(Galaxy Watch4)以降は4年間のソフトウェアアップデートが保証されていますが、Galaxy Watch4 Classic(46mm、2025年までアップデートはあるはず)に関しては、既に修理受付を終了しています。
そう考えると、2020年11月に発売されたwena 3が2026年2月までサポートされるのは、かなり手厚いといって差し支えないでしょう。ただ、他のスマートウォッチと若干様相が異なるのは、wena 3はアプリの提供も終了してしまうところです。つまり、サポート終了後は新しいスマートウォッチで利用することはできず、利用中のスマートフォンであっても初期化したりするとwena 3が使えなくなってしまいます。
仕方がないところではありますが、せめて最低限の機能だけを備えたアプリを提供するなどの対応はできなかったのかと考えてしまいます。ともあれ、サポート終了までは1年以上あるので、ユーザーはその間に他のスマートウォッチなどへの移行を検討した方がいいでしょう。
なお、ソニーにwena 3シリーズの終了について質問してみたところ、以下のような回答が得られました。
Q wena 3シリーズのサービス終了に至った経緯、理由を教えてください。
A 事業戦略を総合的に勘案した結果、wena3の販売を終了することに至りました。
Q 後継機の発表は予定しておらず、wenaというシリーズそのものが終息すると捉えてよいのでしょうか。
A wena3の販売は終了しますが、ブランドの今後については、現時点でお伝えできることはありません。
Q 今後、形を変えてウェアラブル製品を発売する可能性はあるのでしょうか。
A 将来の製品企画等について申し上げられることはありませんが、今後も市場環境や事業トレンド、事業戦略を総合的に踏まえて検討していきます。
テンプレート的な回答ではありますが、文字通りに捉えるなら後継モデルの可能性はなくはないといったところでしょうか。ただ、wenaのような製品のニーズはかなり減っていると考えられるので、今後、wenaシリーズが出るとしても、スマートウォッチ以外の製品になる可能性はありそうです。
筆者としては、ソニーにはぜひスマートリングに参入し、タッチ決済に対応したモデルをリリースしてほしいところです。
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