MicrosoftがAlphabet(Google)を時価総額で3年ぶりに抜いたことの意味:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)
米国でMicrosoftの時価総額が、Googleの親会社であるAlphabetの時価総額を逆転した。過去1年間の株価をみると、Microsoftは40%もその価値を上昇させており、5月29日の取引終了時点で時価総額がAlphabetを上回ったのだ。その背景を探る。
米国でMicrosoftの時価総額が、Googleの親会社であるAlphabetの時価総額を逆転したことが話題になっている。CNBCの報道(米国時間5月29日)によれば、両社の時価総額逆転は2015年以来、過去3年間で初のことだ。
2012年にGoogleが時価総額で初めてMicrosoftを抜いてから、PC業界とともに会社自体の評価も混迷するMicrosoftに対し、Google(Alphabetは2015年に設立)は評価を高め続けてきた。だが過去1年間の株価をみると、Microsoft(MSFT)は40%も上昇させており、これはAlphabet(GOOG)の5倍の水準となる。そして5月29日の取引終了時点でMicrosoftの時価総額は7490億ドルに達し、Alphabetの7390億ドルを逆転した。
新CEOのもと「Windowsの会社」を脱したMicrosoft
株価は同社に対する市場の評価だが、その明確な理由を探すのは難しい。だが1ついえるのは、両社のデッドヒートの歴史でもここ最近の動きは2014年に米MicrosoftのCEOに就任したサティア・ナデラ氏の活躍の時期と重なり、その活動内容が一定の評価を得られた結果だということだ。
同氏は「One Microsoft」を唱えつつも特にクラウド事業に注力していることが知られており、2018年3月末には大規模な組織改編でついに「Windows」の名称を冠した上位組織を廃し、「インテリジェントクラウドとインテリジェントエッジ」のビジョンを体現するための組織構造を採用した。ある意味で「Windowsの会社」を脱した瞬間なのかもしれない。
Microsoftが既にWindows依存でないということは、直近の決算からもうかがえる。同社の会計年度で2018年度第3四半期(1~3月期)決算の資料をみると、ゲームやデバイスを含む個人向け事業の売り上げ(Revenue)比率は全体の3割程度。営業利益(Operating Income)ではそれがより顕著だ。これをさらに製品カテゴリー別で区分けすると、Windowsのライセンス売り上げは全体の17%程度となる。
かつてはPCメーカーへのOEMによるライセンス収入が主要なビジネスであり、Intelとともに「Win-tel」の名称で鉄板ともいえるビジネスモデルを築いていたが、それは既に過去のものだ。MicrosoftはAzureやサーバ関連製品を軸に、個別ユーザーに対してはMicrosoft 365やOffice 365のサブスクリプションで稼ぐモデルへと移行しつつある。
今回の本題はこのクラウド事業だ。クラウドといってもSaaS、IaaS、PaaSといったパブリッククラウドから、オンプレミスを含むプライベートクラウドまでさまざまな形態があるが、SaaSのようなアプリケーション提供型ではない、IaaSやPaaSといったインフラ提供型のクラウドサービスにおいては、米Amazon.comのAmazon Web Services(AWS)が圧倒的なシェアを持っている。
CNBCが4月24日(米国時間)にSynergy Research Groupの最新調査を引用する形で報じているが、AWSが33%の市場シェアで引き続き安定してトップを維持する一方で、Microsoftは前年の10%から13%までシェアを伸ばし、競合他社を引き離している。
クラウド市場のシェアに関する調査はさまざまあり、各社のシェアや順位はそれによって大きく異なるが、おおよそ共通した傾向としていえるのが、AWSが圧倒的な首位を突き進む一方で、Microsoftが第2位として他のグループから頭一つ抜き出ており、それをGoogleが追うという構図だ。もともとAWSの需要が強く、そこを既存のパートナー戦略や営業力でMicrosoftがシェアを侵食しつつある、と考えおけば間違いないだろう。
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