「PCパーツショップである前に、アキバにある店なんだな……と」――アキバの1年を振り返る2011年のアキバ(前編)(3/3 ページ)

» 2011年12月29日 13時47分 公開
[古田雄介(ぜせ),ITmedia]
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日本全体の波+業界の波:PCパーツショップにも乾電池を求める人が集まる

3月中旬。夕暮れ前のPCパーツショップ密集エリア。店内外の照明が普段より落とされていた

 3月11日は、ちょうど各社のSandy Bridgeマザーが順調に復活してきたころ。震災からしばらくは、余震を警戒しながら短時間だけ営業するショップが多かった。また、本震の当日に電力の不安が報道されたこともあり、営業中でも店内の照明を最小限に落とすのが当たり前となった。この傾向は節電が叫ばれた夏まで続き、年末となった現在も、天井の蛍光灯を間引きして点灯している店舗が多く見られるほど根付いている。

 そして、震災からしばらくは“電気街”としてのアキバに訪れる人があふれた。震災から数日後、PCパーツショップで目立っていたのは「乾電池売り切れました」「UPSの取り扱いはありません」のPOPだ。東日本全体に及んだ計画停電の影響で、震災直後から乾電池の需要が跳ね上がっており、当時の家電量販店はどこも乾電池が品薄状態になっていた。UPS(無停電電源装置)の需要も発端は同じだ。

3月中旬に撮影した、TSUKUMO eX.の店頭

 TSUKUMO eX.は当時「量販店になくても、電気の街・アキバの店なら売っているだろうということで、初めて来店される方がものすごく多いですね。ただ、ウチはPCパーツショップなので、(マウスなどで使う)単四乾電池しか置いていないんですよ。単一や単二乾電池は置いてなくて・・・…すみませんけど」と、歯がゆい状況を漏らしている。

 一方で、単四以外の乾電池やUPSを一時的に扱うPCパーツショップも少なくなかったが、3月末以降計画停電が実施されなくなったため、これらの緊急入荷は厳しい結果に終わったところが多いようだ。

 某ショップの仕入れ担当が「電気街の店としてウチに来る方が多かったので、いろいろと手を回して入荷したんですが、ちょっと空振りしたかもしれません。乾電池はまだしも、UPSの在庫が深刻ですよ。未曾有(みぞう)の事態とはいえ、ここにきて計画停電がなくなるなんて……」と呆然と語っていたのが印象的だった。

 ただし、電力不足パニックが潮を引いたあともガイガーカウンターを取り扱うショップが増えるといった動きもあり、すべてが元通りになったわけではない。また、PCパーツショップでも、自粛ムードの影響と省エネの傾向が長く続いたとコメントするスタッフは多かった。パソコンショップ・アークは夏ごろに「発熱量の大きなハイスペックマシンをゴリゴリ組むのに、後ろめたさを感じる人が増えていると思います。計画停電がなくなったとはいえ、やはり電力不足ですから。あとは、まだ自粛ムードが残っているのかなと感じます」とコメントしていた。

3月中旬のツートップ秋葉原本店。デモ機や液晶モニターの照明もほとんど落としていた(写真=左)。4月頃までは多くのPCパーツショップで大量のUPSが目立つスペースに置かれていた(写真=中央)。4月以降にポツポツと復活してきた各店舗のデモ機をみても、チョイスするサイトや動画などに震災の影がみえる(写真=右)

業界の波+街の波:ドスパラ パーツ館とPC DIY SHOP FreeTがオープン

 これまでのとおり、2011年前半は大震災の影響なしには振り返れない部分が大きいが、ほぼ無関係のトピックもある。電気街全体と自作PC業界双方にインパクトを与えたのは、「ドスパラ パーツ館」と「PC DIY SHOP FreeT」という、新しいPCパーツショップの開店だ。

 まず3月4日、2010年11月末に閉店したT-ZONE.PC DIY SHOPの跡地にドスパラ パーツ館がオープンした。1〜2階で新品パーツを扱い、3階でノートPCやスマートフォンを含めた中古品を並べる大型店舗で、同グループでPCパーツを扱っていたドスパラ秋葉原本店よりもPCパーツを扱う売り場面積は広くなっている。店内に気軽に自作PCについて相談できるスタッフ「PCコンシェルジュ」を配置しているのも特徴で、同店スタッフは「親しみやすく、深くて広い品揃えを目指していきたいと思っています」と抱負を語っていた。

2月ごろのT-ZONE.PC DIY SHOP跡地。店内が整理されていた(写真=左)。3月4日に行われた、ドスパラ パーツ館のオープニングセレモニー(写真=右)

 続いてPC DIY SHOP FreeTは、過去にUSER'S SIDEやフェイス本店などが入店していた末広ビル1階で4月28日から営業を始めている。初期スタッフの13人はすべてT-ZONE.PC DIY SHOPで働いていた経験があり、「スタッフの持つ知識とニッチで新しい需要にも対応できる品ぞろえを付加価値として、お客さんに喜んでもらえるショップを目指します」(PC DIY SHOP FreeT)と、かつての名店のコンセプトを引き継ぐ意気込みをみせていた。

 ドスパラ パーツ館で働く元T-ZONEスタッフも、「特色のあるショップが増えるのは、アキバのなかでPCパーツの存在感を示すうえでもうれしいです。彼らなら心配ないですよ」と新たなPCパーツショップの誕生を歓迎する。

 そして、両店とも年末までアキバの自作PC市場を賑わせてきた。PC DIY SHOP FreeTのスタッフは1年を振り返って「正直、自作PC市場は厳しい状態が続いています。自粛ムードの影響も小さくないですし、タイ洪水以後のHDDの状況や、AMDの迷走みたいなこともありましたから。ただ、それでも生き残る方法はいろいろあると思うので、思いつく限りガンガン攻めていきたいです」と気合いを入れていた。

4月28日にオープンしたPC DIY SHOP FreeT

 コメントどおりに、2011年後半も自作PC周辺では予測しにくい出来事が多く起こっている。後編では、自作PC業界の視点1本で、Sandy Bridge騒動以降のアキバをみていこう。

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