次の時代を切り開く「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」速攻レビューWWDC 2012現地リポート(2/3 ページ)

» 2012年06月12日 20時42分 公開
[林信行,ITmedia]

アップルらしさを象徴するUSB 3.0ポートの採用

 もちろん、MacBook Pro Retinaディスプレイモデルが先進的なのは、これらだけではない。CPUもIvy Bridge世代のCore i7なら、GPUもKepler世代のGeForce GT 650Mと、ハードウェアスペックも次世代づくし、左右に1つずつあるUSBポートもUSB 3.0仕様になった。

 このUSB 3.0ポートは、アップルらしさを象徴するポートだ。他の多くのメーカーが高速なUSB 3.0仕様の周辺機器をつなぐためのポートと、従来のUSB 2.0の周辺機器をつなぐためのポートを別々に用意し、色分けしている。これは技術に詳しくない普通の人にとっては、およそ理解不能な仕様だ(技術を丸暗記するのが趣味な人や、マニュアルを読んでからしか使わないという人は別かもしれないが)。これまでUSB 3.0は、インテルのチップセットがネイティブサポートしていなかったため、別途、他社メーカーの外部チップを使って実装する必要があった。標準で用意されたUSB 2.0と外部コントローラ経由のUSB 3.0ポートが混在し、一部のユーザーを混乱させていたのだ(USB 3.0とUSB 2.0は互換性があるため、USB 2.0に対応した周辺機器はどのポートに挿しても同じ結果になるが、USB 3.0対応周辺機器をUSB 2.0ポートに接続しても転送速度はUSB 2.0に制限される)。

左側面と右側面。各種インタフェースの構成が大幅に変更され、新たにHDMI出力を標準装備した

 アップルは、技術を丸暗記するのが趣味な人ではなく、単に使い勝手のいいPCで最高の仕事や遊びをしたい人たちもターゲットにした企業なので、こうしたメーカーの都合をユーザーに押し付けない。かつてスティーブ・ジョブズ氏は、ユーザーからのメールに「インテルが採用しない限りUSB 3.0は普及しない」と採用を見送る旨の返事をして話題になった。今回発表されたノート型MacがIvy Bridge世代に移行し、インテルのチップセット(Chief River)にUSB 3.0コントローラが統合されたことで、ようやくアップルはこれを採用した。そして初心者ユーザーを混乱から守るべく、あえてUSB 2.0ポートを省き、USB 3.0ポートだけしか露出しないのは、企業の哲学と言っていいかもしれない。

見えないところにも先進の工夫

スピーカーとキーボードバックライト

 MacBook Pro Retinaディスプレイモデルは、こうしたところだけでなく見えないところにも工夫が多い。例えばスピーカーだ。これはこれまでのノート型Macに内蔵されていたスピーカーとしても、最高品質のものではないかと思う。従来の17インチMacBook Proに負けないような、しっかりと大きな音が出るのはもちろんだが、さらに音に広がりが感じられる。

 マイクは2つ搭載している。最初は、これでステレオ録音ができるのかと思ったが、どうやら違うようで、例えば音声認識やFacetimeの機能を利用する際に、1つのマイクで環境音を拾って、録音の品質向上に役立てているようだ。

 また、空冷ファンの工夫も面白い。手元にある唯一のマシンなので分解して確認はしていないが、紹介ビデオの中で、工業デザイン部門副社長のジョナサン・アイブ氏が、空冷ファンについて解説をしている。これまでの空冷ファンは、ファンの羽が固定間隔で配置された対称的デザインだったために、回転時のノイズが特定の周波数に偏り耳障りだった。そこでファンを非対称な形にして、騒音の周波数を分散することで、耳障りさをなくしているという。

 ベンチマークソフトやGarageBandをはじめ、重めのアプリケーションばかり10個ほど動かしてみたところ、まだいわゆるファンノイズらしき音は耳にしていない(残念ながら、現地サンフランシスコのホテルに設置された遅い回線では、ファンをブンブン振り回すような大型アプリケーションを落とすことはできなかった)。本体に耳を近づけると、かすかにシャーという音が聞こえはするが、これが新しいファンの音なのかどうなのかは、もう少し使い込んでみないと分からなそうだ。アップルの公式ホームページに「すべての速さをあわせて、もっと速く。」と書かれているように、新型MacBook Proのパフォーマンスのよさは、SSDの全面採用やCore i7の搭載など、複合的要因がうまく組み合わさって生み出されているのだろう。液晶ディスプレイの解像度が4倍になりつつも、着実に性能向上を感じ取ることができる、というのはなかなかすごいことだと思う。

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