2015年11月11日はApple初となる12.9型タブレット「iPad Pro」の発売日だ。単に画面サイズが大きいだけでなく、専用の筆圧ペン「Apple Pencil」やキーボード付きカバー「Smart Keyboard」も用意するなど、iPadファミリーに新たな価値をもたらす製品だけに注目度は高く、その話題が数多くの誌面を飾っている。
一方、翌日の11月12日は、タイミングを合わせたかのようにMicrosoftの12.3型Windowsタブレット「Surface Pro 4」が日本で販売開始となる。こちらも専用の筆圧ペン「Surfaceペン」とキーボード付きカバー「Type Cover」を組み合わせた製品で、Appleより早くこのスタイルを提案し続けてきた。
同時期に投入されたこの2製品を見て、どちらを選べばいいのかと悩んでいる人は少なくないだろう。しかし、両者のハードウェアを直接比較して優劣を論じるのは本質から外れている。確かに数多くの共通点があるが、実際にiPad ProとApple Pencilを使っていると、全く違うタイプの製品であることが見えてきた。
Surface Pro 4はまだ日本での出荷が始まっておらず、並べて使い比べたわけではないが、発表会で実機に触れた印象と「Surface Pro 3」の拡張版であるという点を踏まえたうえで、両者の違いについて書き進めていこう。
AppleはiPad Proを発売するにあたって、さまざまな準備を進めてきた。
ハードウェアとしてのiPad Proは、簡単に言ってしまえば「CPU、GPUともにPC並に強化された、画面の大きなiPad Air 2」だ。採用されている液晶パネルは、画素密度も全く同じ約264ppi(pixels per inch:1インチあたりのピクセル数)で、そのままサイズだけが9.7型(2048×1536ピクセル)から12.9型(2732×2048ピクセル)に大きくなっている。
これまで世代を重ねて液晶表示部から保護ガラスまでの厚みを減らして視差を小さくしたり、検査工程で液晶の色特性、トーンカーブを補正するフィードバックを入れたりといった、おなじみの品質管理はiPad Proでも健在で、同じような体験ができる(サイズが大きくなることで製造の難易度は上がるが、きちんとやってのけている)。
奇をてらって派手な色を引き出すのではなく、Webコンテンツや各種写真の標準的な色空間であるsRGBに準拠した見え味を狙っているため、的確な表示を行ってくれる信頼感はiPad Proでも同じだ。
iPad ProがこれまでのiPadファミリーと大きく異なるのは、画面サイズやパフォーマンスを除くと、キーボードアクセサリであるSmart Keyboardとの接続端子「Smart Connector」が設けられたことと、Apple Pencilに対応したことだ。
外観から分からないポイントだが、音質も驚くほどよくなった。四隅あるスピーカーは中低音までしっかりと出すうえ、画面の回転方向を検知してステレオ音声を自然に聴かせる制御を自動的に行う。映像作品をiPad Proで楽しんでも違和感がないほどで、ビジネス用途ならプレゼンテーションで積極的に音声を使いたくなるだろう。音圧も従来の2倍以上が出せるというから、広い部屋で音を聴かせたいときにも内蔵スピーカーで十分だ。
同時発売のSmart Keyboardはストロークが深く、タッチにシャープさはないものの、入力効率はノートPCのそれに近い。残念な点は英語配列しか用意されていないことだが、サードパーティー製のiPad Pro用キーボードが発表済みで、日本語配列の製品も登場してくるだろう。
なお、Smart Keyboardの実測重量は340グラムだった(iPad Pro本体の重量はWi-Fiモデルで約713グラム、Wi-Fi+Cellularモデルで約723グラム)。スタンド機能も兼ねているため、構造的に複雑なSmart Keyboardだが、その見た目よりも安定しており、実は膝の上でも意外なほど使いにくさはない。
筆圧と傾きの検出機能を備えたペン入力装置であるApple Pencilは、キャリブレーションの必要がないうえ、遅延も視差も抑えられ、手のひらを画面に置いて使ってもタッチパネルの操作と干渉せず、自然にタッチとペンを使い分けられる。どうやらペン先が画面に近いかどうかを判別して動作しているようだ。
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