発売前の第3世代「iPhone SE」をいち早く試用した。最新世代の「iPhone 13」と同じSoC(System on a Chip)のA15 Bionicを搭載しつつ、2020年発売の第2世代iPhone SE同様、Touch IDのホームボタンを持つ最終形のモデルだった「iPhone 8」と同じ外装を採用する。
そもそも、iPhone SEとはどういったモデルなのか。2016年に初代の「iPhone SE」が登場したとき、Appleは繰り返し「廉価版」と見なされることを打ち消そうとしていた。報道する側からすれば、価格を抑えたiPhoneでユーザーの裾野を広げようという意図を廉価版という言葉で表現しようとしたのだが、AppleはiPhoneに安普請な製品はいらないと考えていた。
だからこそiPhone SEは(それ以前の)最上位モデルから基本設計を引き継ぎながら、最新技術を搭載したiPhoneの基本形を表現するモデルとなっていたのだ。その背景には、あるいはコストダウンしたバリエーションモデルの「iPhone 5c」を2013年に発売したことへの反省もあったのかもしれない(あくまでも想像だが)。
いずれにしろ、Appleは前世代の製品を購入しやすい価格で提供するようになった。世代が古いとはいえ、もともとは上位モデルとして設計された製品だけに、AppleがiPhoneのブランドを守るのに十分な作り込みがなされている。
しかしそんな手法に、1つの変化球が生まれた。2017年に「iPhone X」が登場したことで、iPhoneの系譜が2つに分離したためだ。
初代iPhone SEが生まれる背景には、iPhoneの高機能化とディスプレイ大型化という流れがあった。初代iPhoneのコンセプトを洗練させ、行き着いた先として指紋認証までを包含していた「iPhone 5s」のカタチをそのままに、新しい時代のモデムとSoCを搭載したのがiPhone SEだった。
一方、第2世代、第3世代のiPhone SEは少しだけ意味が異なる。いずれもTouch ID搭載iPhoneの完成形ともいえるiPhone 8を、発売時の時代に合わせてリファインした製品となる。そのiPhone 8は、「iPhone進化の10年を引き継ぎ、その後の10年における進化の基本となる」製品として誕生したiPhone Xと同じ年に発表されたモデルだ。
なぜ同じ世代に2つのハイエンドかといえば、ここでiPhoneの系譜が分離し、全く新しいiPhone Xだけでなく、それまでのiPhoneの完成形としてiPhone 8を作る必要があったからだと筆者は解釈している。
つまり第2世代、第3世代のiPhone SEとは、Touch ID搭載iPhoneの最終形であるiPhone 8を起点に、新しい時代へと追従できるよう基礎部分を強化し続けている製品といえる。
その間はきっちりSoCで2世代分。今後も2世代ごとにSoCをアップデートしていくのか、あるいはいずれはiPhone Xの系譜に一本化されるのかは分からない。しかしiPhone SEは年間を通して最も多く販売されるiPhoneでもあり、今後も同様のアップデートが提供されるものと思われる。
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