ArmアーキテクチャのSoC(CPU)に対応するWindowsアプリの開発を進めるべく、Microsoftがリリースした「Windows 開発キット 2023」。税込み9万9980円と比較的手頃な価格でArmアーキテクチャベースのWindows 11(以下「Arm版Windows 11」)を試せることも魅力である。
先日、この開発キットを利用してWeb会議アプリ「Zoom」の動作検証を行ったが、Arm CPUの64bit命令(Arm64)に最適化されていることもあって、とても快適であった。
今回は、Adobe(アドビ)の写真管理/現像アプリ「Adobe Lightroom」を快適に使えるのか検証していく。
Lightroomは、アドビの有料サブスクリプションサービス「Adobe Creative Cloud(Adobe CC)」を構成するアプリの1つである。しかも、Arm64でネイティブ動作する。理屈の上では、Intel CPU(x86/x64)のエミュレーションを挟まない分、パフォーマンスは良好なはずである。
Adobe CCを構成するアプリは、原則としてポータルアプリ「Adobe Creative Cloud」を介してインストールすることになる。Lightroomを含むAdobe CCを構成するアプリを導入するには、先にこのアプリをインストールしなければならない……のだが、ここでちょっとしたトラブルが発生する可能性がある。
筆者の環境では、なぜかポータルアプリのインストール中に何度かエラーが発生した。エラーを無視すると、一応インストールは完了できるのだが、その後ポータルアプリを起動しようとすると「0xc000007b」というエラーが発生して正常に起動できなくなるのだ。
これは困った……と思って、サポートコミュニティーを探してみると、Armベースの「Surface Pro X」で同じ事象が発生したという投稿を見つけた。
この記事の投稿者は、Arm版Windows 10をArm版Windows 11(プレビュー版)にバージョンアップした所、Adobe CCアプリはもちろん、LightroomやPhotoshopも起動しなくなってしまったという。筆者の環境とは異なるが、Arm版Windows 11でアプリが起動しないという事実は共通している。
この投稿に対して、Adobeの「中の人」は以下の手順を試すように返信していた。
(※1)Arm64版の代わりにx64版をダウンロード/インストールしても構わない(現行のx64版パッケージにはArm64版も含まれるため)
筆者のWindows 開発キット 2023にも、Visual C++のランタイムがインストールされていた。そのため、「中の人」の指示に従っていったん全て削除し、再インストールした所、ポータルアプリはもちろん、Lightroomアプリも正常に起動するようになった。
なお、Lightroomアプリが起動しなくなるトラブルは、Arm版に限らずWindows 10/11において発生することがあるようで、サポートサイトでも独立したトピックとして紹介されている。
さて、Arm64でネイティブ動作するLightroomだが、タスクマネージャーをよく見てみるとメモリの容量をとてもよく消費する一方で、アイドル時のCPUへの負荷は0〜8%程度とあまり高くないことが分かる。
「よし、RAWデータを現像してみよう!」ということで、RAWデータを1枚1枚現像してみるのだが、メモリの占有容量は増えるものの、CPUへの負荷はそれほど高まらない。
ただし、RAWデータを取り込む際はそれなりにCPUへの負荷が高まる。今回は筆者手持ちの「Nikon Z 5」で撮影したRAWデータを100枚ほど一気に取り込んでみたが、取り込み中は最大でCPU利用率が最大67%まで高まる……のだが、それでも67%である。処理能力的に余裕がある状況だ。取り込みが終われば、すぐにCPU負荷率は0〜8%に落ち着く。
「データの取り込みだけでしょ?」と思うかもしれないが、RAWデータは情報量が多いため、単純な取り込みでもCPUへの負荷はそれなりに大きい。それでも、これだけの“余裕”を持てるということは、Arm64ネイティブで動作するということの意味の大きさを物語っているのかもしれない。
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