自宅でインターネットにつなぐために必須のルーターと言えば、個人向けではバッファローのAirStationシリーズやNECのAtermシリーズ、企業向けではシスコシステムズやヤマハなど、さまざまなメーカーから発売されている。
通常はそれらを購入して使うのが一般的だが、今回紹介するのはPCをルーターとして機能させられる「OpenWrt x86」というソフトウェアだ。OpenWrtのメリットは本来であれば、高価な企業向けルーターに備わっている機能を無料で利用できることだ。
OpenWrtの正式版は2022年9月6日にリリースされたのだが、2023年末頃に登場したバージョン23.03.0から「OCNバーチャルコネクト」に対応するようになった。お恥ずかしながら筆者は最近まで知らなかったのだが、この情報を受けて、ふとこんなことを思い付いた。「格安で『ドコモ光』の10Gbps回線を自宅に引けるのでは?」と。そこで本記事では、導入から実際に使うところまでをレポートしたい。
これまでインターネットに接続する際に、「PPPoE方式」を使ってプロバイダーと接続した上でインターネットに接続するという方法が主流だった。
このPPPoE方式は、インターネットに接続するためにプロバイダーが設置する「網終端装置」を経由する必要があるが、この設備が混雑していると、回線速度が時間帯によって遅くなるという課題を抱えていた。
そんな課題を解決するために、最近は「IPoE」(IP over Ethernet)という新たな接続方法がプロバイダー各社から提供されるようになった。このIPoEはPPPoEとは異なり、網終端装置を経由させずに直接インターネットに接続できる仕組みだ。
そのためPPPoE方式と違って、回線速度が低下する原因を回避してインターネットに接続できるため、回線速度が遅くなりにくくなる、というメリットがある。
回線速度を速くしたい場合、IPoEでインターネットに接続すれば良いのだが、IPoEを利用するにはどうしても解決しなければならないデメリットも抱えている。
デメリットとは、IPoEはIPv6のみで提供されているため、そのままではIPv6アドレスでアクセスできるサイトにしか接続できないことだ。具体的な例をあげると、GoogleはIPv6アドレスでもアクセスできるが、Google検索した先のサイトでは、IPv4アドレスしか割り振られておらず、Webサイトにアクセスできない──なんてことが起きる。
IPv4アドレスの枯渇問題から、WebサイトのIPv6環境への移行も一部では行われているが、コストの兼ね合いなどから、IPv4でしかアクセスできないサイトが大半を占めている。
さすがにそのままでは常用に耐えないので、このデメリットを解決するための仕組みが各社で用意されている。それが「IPv4 over IPv6」という仕組みだ。これは、IPv6通信でアクセスした先がIPv4にしか対応していないサイトだった場合、パケットをIPv4に自動変換するもので、IPoE方式でも通常通りWebブラウジングが楽しめるようになる。
IPv4 over IPv6にはいくつか方式があるのだが、それぞれに互換性はないため契約しているプロバイダーが提供しているサービスに対応したルーターが必要となるのがネックだ。
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