「レイトレーシングが変えるゲームグラフィックス」というテーマでつづってきた不定期連載。前回、レイトレーシングの後継技術ともいえる「パストレーシング」の話題を出したところで、ひとまずの完結を迎えたつもりだった。
それから1年――少し視点を変えて「GPUから見たレイトレーシング」、もう少し具体的にいえば「GPUにおけるリアルタイムレイトレーシング処理の改良の歴史」について、3つの記事に分けてひもといていこうと思う。
今回はPC向けGPUにおけるリアルタイムレイトレーシングの歴史を大まかにチェックした上で、NVIDIAの「GeForce RTX 30シリーズ」について深掘りしていきたい。
2018年、リアルタイムレイトレーシング技術を世界で初めて搭載したのがNVIDIAの「GeForce RTX 20シリーズ」だ。
同年、Microsoftはゲーム/マルチメディア向けAPIセット「DirectX 12」に、GPUのリアルタイムレイトレーシング処理機能を使うためのAPI「DirectX Raytracing」を追加した。ただ、本APIが本格的に使われ始めたのは、2020年に「DirectX 12 Ultimate」がリリースされた頃からだ。
「PlayStation 5」「Xbox Series X|S」といった、リアルタイムレイトレーシング技術対応の家庭用ゲーム機が登場したのも、2020年と時期が重なる。
2021年頃になると、多くの市販ゲームタイトルが、ゲームグラフイックスにレイトレーシングを積極的に活用し始めた。このムーブメントを後押しした象徴的なタイトルは、Remedy Enterrainmentの「Control」(2019年リリース)と、CD Projekt REDの「Cyberpunk 2077」(2020年リリース)が挙げられるだろう。
多くのゲームタイトルが、実践的なレイトレーシング対応に乗り出すと、現状のGPUのレイトレーシングバイブラインにおいて、どういった処理系がボトルネックになりやすいのか、ということが見えてくるようになる。
こうした「気付き」は、ゲーム開発者はもちろん、GPU開発者にもあったはずだ。実際、NVIDIAはもちろんAMDも、第2世代以降のリアルタイムレイトレーシング対応GPUでは「ここをこうすればもっと速くなる」という改良が盛り込まれている。
ということで、次ページからはGeForce RTX 20シリーズに対する改良版GPU「GeForce RTX 30シリーズ」が、実際にどのような改良を施したのか見ていこう。
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