「Xperia」投入を皮切りにスマートフォンを強力にプッシュし、ラインアップを広げたNTTドコモ。2010年度は252万台を販売し、年度中に上方修正した250万台という販売目標を達成した。2011年度は前年度の2倍以上となる600万台の販売目標を掲げ、さらにスマートフォン事業を加速させる考えだ。
フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行は、当然ながら端末の変化にとどまらず、サービスやビジネスのあり方にも大きな変化をもたらす。iモードという巨大なビジネスを築いてきたドコモは、この変化をどのように捉え、どのように対応していくのか――。同社スマートコミュニケーションサービス部オープンサービス企画室 室長の伊倉雅治氏に聞く。
――(聞き手:神尾寿) 2010年末から2011年の春商戦にかけて、スマートフォン市場は急速に変化した感があります。これまでのスマートフォン戦略を振り返って、伊倉さんはどんな「手応え」を感じていらっしゃいますか。
伊倉氏 イベントはいくつかあったと思います。まず「Xperia」ですね。途中夏モデルもありましたが、4月から9月までの6カ月間、ほぼあの1機種でやってきました。今までのドコモですと、新しい端末が出るとそちらを訴求するのですが、冬モデル、つまりサムスンの「GALAXY S」が出てくるまで、ずっとXperiaで引っ張ったのです。最初は30代の男性が引きつけられて、spモードに対応したことで女性も少し動いたかなと思います。
2月下旬の春モデル発表会で山田社長も言っていましたが、女性比率はかなり変わってきました。1月のデータを見ると女性が35%くらい。それから50歳以上も15%を占めていました。
神尾氏 今、ドコモのスマートフォンを買っている女性ユーザーは、どこに惹かれて購入しているのでしょうか。
伊倉氏 やはりキャリアメールが使えるようになったことが大きいと思います。またワンセグやFeliCaについても、実際に使っているかどうかとは別に「(今までのケータイと)変わらないんだな」という感覚が大切だと考えています。自分の持っている機種の後継としてスマートフォンがあるということになり、ユーザーの方にとっては選択肢が広がった格好になったと思います。
神尾氏 ワンセグやFeliCaといった付加価値的な機能を含め、ユーザーはスマートフォンのどのようなポイントに評価軸を置いているのでしょうか。
伊倉氏 ちょっと古いデータになりますが、ケータイが従来から搭載する機能(赤外線通信やおサイフケータイ、ワンセグなど)について聞くと、10人いたら7〜8人はほとんどの機能について「欲しい」というんです。
それで、男女で最も意見が分かれたのが“OSのバージョン”ですね。男性の方は最新のOSが欲しいという人が多い。でも、女性だと少なくなる。だいたいの機能は男女とも同じような傾向なのですけどね。考えてみると、一般的に、女性は車を買うときもエンジンが何馬力かよりインテリアを重視しますよね。
神尾氏 CPUの調査をしても同じ結果が出そうですね。
伊倉氏 そうですね。CPUとメモリと、あとはグラフィックの方のプロセッサですね。誰でもサクサク動くほうがいいですし、ノーとはいわない。でも、そこのスペックをアピールしても女性にはあまり響かないんですよね。
神尾氏 なるほど。
伊倉氏 さらに男女の違いを挙げると、以前から言われているのが課金傾向です。男性は月額課金、つまり300円で取り放題とか1500円で使い放題というのがいいという方が結構いる。でも女性だと、ちゃんと使うものをセレクトして、コストを抑えようとする傾向がよく見られました。
前から言っていますが、女性にブレイクしだしたということは、“バリューがコストを上回った”ということだと思います。男性の場合は、バリューやコストは気にせず、欲しいものを使うケースが多い。一方、女性はちゃんとバリューとコストを見て比べているのではないでしょうか。
spモードを入れた以降は、ドコモマーケットではコンテンツを“女子系”にも振っているんです。それまでは「女神の旅」「美女地図」といった男性向けのものだったんですけど、利用者を伸ばすためには女性向けにも振っていかないといけません。
今年の夏モデルはカラーやサイズのバリエーションを増やしたいと考えています。スマートフォンはだんだん大きくなってきて、ディスプレイは4インチ以上。いくら薄くても、幅が広いと女性にはちょっと握りにくくなる。以前は、幅は50ミリ弱っていう暗黙の決まりもありました。
神尾氏 「50ミリの壁」がありましたよね。
伊倉氏 ちょっと苦しいと言われるかもしれないけど、やっぱり50ミリちょっとくらいのものにしておかないと。もっとユーザー層を広げようと思うと、フラッグシップ機は使えない。先端を行っているだけだと難しいという気がします。
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