「番号知らないと電話できないって、不便じゃないですか」
Twitterで相互フォローしている友人や知人と通話ができる、iPhoneアプリ「OnSay」。同アプリをプロデュースした、ライフツービッツのファウンダー 片山崇さんには、そんな素朴な思いがあった。8月31日に公開された同アプリは、WebメディアやTwitterを介して瞬く間に話題となり、リリース3日で9万ユーザーを獲得。予想以上の人気に、片山さんら開発メンバーは手応えを感じている。
SNSで人が簡単につながる時代。ソーシャルグラフを使って電話ができれば、もっと便利になる。そう考え今年の1月、思いを共にするウタリ、プロジェクトゼロと開発に乗り出した。収益化の方法は「まだ明確には見えていない」が、それでも「作りたいものを作りたかった」(片山さん)。機能はまだ荒削りで不安定な部分もあるが、iPhoneアプリの修正なども進めつつ、近日中にAndroidアプリを提供することも決め、“日常使い”のできる通話サービスの提供を目指していく。
OnSayを作っている3社は、いずれも若いベンチャー企業だ。年長のプロジェクトゼロは、2005年創業。ライフツービッツとウタリは、まだ設立2年に満たない。ただし、そこにいたのはWebやアプリの開発に10年来身を置くベテランたち。互いの労力やノウハウ、アイデアを持ち寄り、約9カ月をかけ、試行錯誤の末にOnSayを完成させた。
アイデアの発端を聞くと、「携帯電話を持つようになり、あまり自分の頭で電話番号を覚えなくなった」と片山さんは語り出す。「だったら、電話番号に替わるIDがあればいい。そして、自分が普段使っている連絡ツールが何かといえば、圧倒的にソーシャルメディアだった」
発案当初はやや「軽いノリ」で技術検証を進めていたが、東日本大震災が起き、「なんとしても完成させよう」と思いが強まった。震災直後、電話がつながらない中でVoIPアプリ「Viber」が使えることに片山さんは驚いたという。日常の利便性だけでなく、非常時のためにも、音声回線や電話番号に依存しないサービスを提供することに意味があると、片山さんは考えるようになった。
電話は大企業が支えるインフラだが、インターネットとスマートフォンがあれば、若いベンチャーでも通話サービスを提供できる。実際にOnSayの提供をはじめ、片山さんにも実感が湧いてきた。
アプリはP2P技術を活用して通話を実現しているため、サーバへの負担は少なく、設備コストはそれほど大きくない。「現状では片手で数えられる程度のサーバしかありません」と、ライフツービッツ CTOの沢田正さんは話す。
とはいえサービス開始直後は、急激なユーザー増加のためにシステムがパンクしてしまった。「月間で5万ユーザーの獲得が目標だったが、3日で9万ユーザー。何かの間違いじゃないのかと思った」(片山さん)。新規ユーザーらのログイン処理が集中し、多くがタイムアウトになってしまう状態におちいった。必死でサービスを改修したが、「ログインできない」というユーザー評価がもどかしかったことを片山さんは振り返る。現在は急激なトラフィック増加にも耐えられるサーバ構成となっているという。
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