いま、伝えたい「よわいはつよい」ということ。
2020/05/20
日本ラグビーフットボール選手会では、メンタルヘルスに関する専門家とともに、「よわいはつよいプロジェクト」に取り組んでいくことを決定いたしました。
このプロジェクトでは、一般的に「弱みを見せてはいけない」という意識の強いアスリート、とりわけ心身ともにダメージの大きいラグビー選手に対してのメンタルヘルスケアの研究や啓発活動を行っていく予定です。
将来的には、他競技のアスリートへの貢献や日本全体のメンタルヘルスに対する意識の変革につなげ、ひいては日本中のすべての人びとの”メンタルフィットネス”(⼼の状態を正しく認識し、柔軟に対応する⼒)(注1)の向上を目的としています。
さて、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、ストレスや不安、普段とは異なる心の変化を感じている方も多いと思います。それは、私たちラグビー選手も同じです。
そこで、日本ラグビーフットボール選手会では、メンタルヘルスに関するメッセージを専門家とともに発表することにいたしました。性別や年齢を問わず、「つらいことは我慢して耐えるべき」「人に頼るのが苦手」というみなさんに、このメッセージが届いてほしいと思います。
お伝えしたいことは、つぎの2つです。
「伝えてみよう」
不安なきもちに気づいたら声でも文字でも言葉にして伝えてみてください。
「耳を傾けよう」
相談を受けたら判断や否定をせずにまっすぐ聴いてみてください。
不安や心の不調は、パフォーマンスの低下、イライラ、暴飲暴食、体の不調などのかたちで現れることもあり、自分ではそれが心の不調だと認められないことがあります。まずは、自分の心と体に意識を向けてみましょう。また、心の不調に気づいたとしても、「それを言葉にして伝えると弱い人間だと思われてしまうんじゃないか」「人に知られるのは恥ずかしい」と多くの人が思ってしまうものです。
ですが、まずは勇気を出して、あなたが安心して話せる誰かに、あなたの心の様子を言葉にして「伝えて」みてください。その誰かがすぐには思い浮かばないこともあるかもしれません。近しい関係だからこそ話しづらいこともあります。そんな時は、専門家や相談窓口に話をしてみるというのも一つの選択です。家族や友人に限らず、あなたの力になってくれる人、あなたの味方は必ずいます。
心の様子を言葉にして伝えることで、自分を客観的に見つめられ、冷静さをとり戻すことができます。心にゆとりが生まれます。また、人に受け容れられる経験により、自分のありのままを受け容れられるようになるでしょう。狭くなっていた視野を広げるきっかけにもなります。このような困難な状況ですが、社会的距離をとりながらでも、心でつながることはできます。様々なツールを利用して、心のつながりを感じてみてください。
一方で、「伝えやすい環境」をつくっていくことも大事です。心の不調は誰もが経験していることです。悩んでいる人に寄り添いありのままに受け容れる環境をつくることで、誰もが悩みや不安を伝えやすい世の中になると思います。
誰しも大なり小なりの不安や悩みを抱えて生きているものです。うれしいことも悲しいことも、自分の強さも弱さもすべてを受け入れて、それを認められることが、真の「つよさ」なのではないでしょうか。「よわさ」は「つよさ」のはじまりです。
最後になりましたが、新型コロナウイルス感染症によって、現在も病床でつらい思いをされている方々やご家族にお見舞いを申し上げます。また、最前線で闘ってくださっている医療従事者のみなさまをはじめ、本当に多くの日本の生活を支えてくださっているみなさまに感謝申し上げます。
一般社団法人 日本ラグビーフットボール選手会
<協力>
国立精神・神経医療研究センター 地域・司法精神医療研究部 / 認知行動療法センター
アドバイザー
水野雅文(東邦大学医学部 精神神経医学講座)
(注1)
メンタルフィットネス(mental fitness):
ニュージーランドラグビー協会が用いているフレーズです。心の健康やそのケアの必要性を示す際に、より受け入れやすいフレーズとして考えられたものです。⼼の状態を正しく認識し、柔軟に対応する⼒で、健康や幸福を築く基礎⼒のことです。
「よわいはつよいプロジェクト」について:
このプロジェクトでは、アスリートとメンタルヘルスの専門家が協働して、メンタルフィットネスの向上、つまり、自分の⼼の状態を正しく認識し、困難への柔軟な対応力を高めるための情報を発信していきます。自分に起きたつらいことを、じっと耐えて乗り切ろうとする対処でなく、解決すべき課題として、信頼できる人と共有し、支え合い、共に問題を解決して前に進むという、真の「つよい」を求める社会を目指します。プロジェクトの詳細の取り組みやウェブサイトなどは近日公開予定です。
本企画は、トヨタ財団2019年度特定課題 先端技術と共創する新たな人間社会「アスリートへのメンタルヘルス支援アプリの実装による効果検証 ―対人サービスへの先端技術導入の利点と課題の抽出(研究代表者:小塩靖崇)」の活動の一部として実施されます。
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