国有地を買い取ることで敷地を拡大
埼玉県南部に位置する和光市で、理化学研究所(りかがくけんきゅうじょ:以下「理研」)が施設を拡張することが決まった。
理研は自然科学に関する日本で唯一の総合研究所として、生命医科学・量子コンピューター関連・環境医科学など、様々な分野で先進的な研究を進めている独立行政法人だ。
理研の施設は横浜・つくば・神戸など日本各地に点在しているが、和光市には研究施設に加えて研究本部が設置されている。
最寄り駅は東京メトロと東武東上線が通っている和光市駅だ。駅の南口から徒歩約15分の距離となっている。
※引用:理化学研究所
ちなみに、周辺には埼玉県営の和光樹林公園や自衛隊の朝霞駐屯地、裁判所職員の研修所、和光市役所など、公共関連施設が数多く建っている。
理研が施設を拡張するのは「国有財産関東地方審議会」が和光市の国有地を理研に売却することを決定したからだ。
国有財産関東地方審議会は財務省管轄下の財務局に所属しており、国道や行政庁舎、国有地など国の財産について利用・処分の方針を決めている。
売却が決定された国有地は林になっており、もともと理研の敷地に隣接していた。なお、売却される国有地の広さは33,259㎡。
※引用:財務局
もともとの理研の敷地内にはもう空きスペースがなく、新たな研究棟などを建てるのが困難だという。
一方で、企業と連携して研究を進めるための施設が必要なため、今回売却される国有地を理研が買い取ることが決まった。
敷地の利用方針
敷地内には以下3つの研究棟などが建設される予定だ。
- 研究創造連携イノベーション棟
- 複合研究棟1期
- 複合研究棟2期
※引用:財務局
研究創造連携イノベーション棟は地上2~3階建て、延床面積約5,100㎡の施設となり、企業連携研究室および討論スペースが入る。
複合研究棟1期は「量子技術等研究施設」として使われることが決まっている。量子技術とは、簡単に言うと通信や計算などを行う技術のことであり、コンピューター関連の技術として役立てられる。
建物の規模は地上4階建て、延床面積約15,000㎡で研究実験室・見学スペース・クリーンルームなどが入る予定だ。
クリーンルームとは埃を極力無くすために作られた部屋であり、半導体や量子コンピューター関連の研究などに使われる。
複合研究棟2期も、1期と同様に量子技術等研究施設として利用されることになっており、クリーンルームや会議室などが入る予定だ。
量子コンピューターや半導体と言えばAIなどの開発と関連がある分野であり、先進的な研究が行われるとなれば、今後優秀な研究者が和光市の周辺に集まってくることになるだろう。
また、企業との連携も視野に入れているとのことで、理研の研究分野に関連した企業が進出してくることも考えられる。高属性の賃貸入居者が集まってくることを期待したいところだ。
理研は2025年3月に用地を取得する予定で、4月からの整備工事開始を見込んでいる。第1期の工事竣工は2028年3月が予定されており、第2期の工事竣工は2031年3月の見込み。
理研が買い取る国有地は米軍から返還された朝霞キャンプ跡地の一部であり、まだ少しだけ留保地や未処分用地が残ることになる。
朝霞市は跡地の利用方針を策定しており、方針の中では今後保育園や裁判所の関連施設などを作ることが示されている。
和光市は東京都心へのアクセスも良いエリアなので、今後の開発にも注目してみてはどうだろうか。
取材・文:
(はたそうへい)