シニア世代の就職事情 働き続ける理由 定年制を廃止する企業も 鹿児島県
2025年2月18日(火) 18:50
まずはこちらの数字をご覧ください。
45万8721人。
この数字は鹿児島労働局が把握している2024年3月末時点の県内の労働者の人数ですが、このうち60歳以上の人は9万9741人ということで、5人に1人が60歳以上という計算になります。
60歳で定年という企業が多い中で、働き続ける理由は人それぞれです。
職を求める県内のシニア世代の今を取材しました。
鹿児島市が運営する駐車場です。
しっかりとした足取りで階段を上るのは、大坪惠一郎さん、79歳。
大坪さんはこの場所で、駐輪されている自転車やオートバイを管理する仕事に就いています。
大坪惠一郎さん
「(自転車が)はみ出していたら隣の人が出し入れがしにくい」
京都で警察官として、定年まで勤め上げた大坪さん。
ふるさとの鹿児島市で母親の介護を経て、9年前にシルバー人材センターに登録したそうです。
大坪さん
「社会参加ぐらいの気持ちでシルバー人材センターを訪ねた。体が動く間はどんな仕事でもやりたい、こう思っている」
放置自転車指導・片野坂千昭さん
「G、2,2,9」
天文館で放置自転車の車体番号をチェックする片野坂千昭さん(77)も、シルバー人材センターにこの仕事を紹介されました。
鹿児島市交通局を定年退職してほどなく、働くことを選びました。
Q.交通局を退職してからゆっくりしよう、という気持ちは?
「社会に関わっていられる、それが大きいですね。おまけに歩くので、自分の健康にもいい」
定年後に始めた仕事。
毎日働くわけではありませんが、2人は月に5万円程度の収入を得ています。
全国にシルバー人材センターは1300余りありますが、その中でも鹿児島市は会員数が11位、派遣実績が2位と高い数字です。
こちらは鹿児島労働局がまとめたグラフです。
県内で仕事を探している人のうち、60歳以上がしめる割合はこの5年で5%以上の上昇。
求職者のうち4人に1人が60歳以上という計算です。
ハローワークかごしまの高崎所長は背景をこう分析します。
ハローワークかごしま・高崎雅英所長
「物価高などで生活費がかかる。その中で年金だけでは厳しいとか定年年齢での生活水準を維持したいという動機で就職活動に来る人もいる」
こうした状況の中、ハローワークでは60歳以上の求職者のための専用窓口をもうけています。
ハローワークの相談員
「こちらだったら施設見学に行くだけでもいいと思う」
求職希望者(65)
「施設見学をしたからここに(就職)しないといけない、とか、それが応募条件の一つではないんですよね」
相談員
「それはないです。事前にどんな雰囲気かを見てもらう感じになります」
この日、説明を受けていた女性は65歳。
以前は介護施設に務めていました。
元介護施設勤務女性(65)
「やっぱり現場が面白い、現場が大好き、ということで」
Q.60歳以上で就職の門が狭くなる実感は?
「それは大いにあって『まだやれるはずだ』と思っても、65歳という年齢は『求められているわけではないんだな』と就職活動を通じて強く感じた」
女性が感じていたのは企業とのマッチングの難しさ。
就職先が決まったと報告に訪れた男性も、就職の苦労を口にします。
元クリーニング店勤務(60)
「(新しい仕事は)ホテルの清掃です。清掃の会社は4社ほど受けた。全部はねられて、5社目で受かった」
人口減少に伴う人手不足を背景に、ハローワークでは60歳以上向けの求人も増加していますが、給与や業務内容など求職者と企業の間には求めることへのズレもあるようです。
ハローワーク高崎所長
「60歳以降は一定の勤務条件を下げる企業が多い中で、今まで通りの条件を希望する人が求職活動すると、条件にマッチした企業を探すのが難しい」
そんな中、定年後に新たな職場にチャレンジするのではなく、その能力を「まだ生かして欲しい」と考える企業もあります。
鹿児島市でさつま揚げの製造販売を行う有村屋。
2008年から60歳としていた定年制度を廃止しました。
有村屋・有村興一社長
「今は人口が減ってきているから、60、70でも元気な人はいいと思う。働いてもらった方が。(高齢者の従業員は)頑張ってくれている。そういう雰囲気は、次(若い世代)にもつながりますね」
労働局が県内の約3000社を対象にした調査では、2024年6月時点で定年の年齢を60歳とする企業が約6割、65歳とする企業が約3割、そして、定年制を廃止した企業は3%と100社を超えていて、その数字は増えつつあるようです。
従業員47人の有村屋には現在、70歳以上のスタッフが4人います。
その1人、山下美鈴さん(70)は社員として観光施設にある販売店で、外国人客に商品を説明していました。
有村屋・山下美鈴さん
「単語をちょっと言うだけ。フランスの方みたいで、英語とフランス語は違いますもんね。あまり理解できなかった」
会社で20年働く山下さんは、定年制の廃止を好意的に受け止めています。
山下さん
「社員だという責任感もあるし、今の状況(定年制廃止)にしてもらったことはありがたいと思っている」
これからますます進んでいくことが予想される人手不足。
やりがいや生活費の工面など、働く理由は人それぞれですが、やる気と経験をまだまだ社会に還元したい。
働くシニア世代の間口は広がっているようです。
45万8721人。
この数字は鹿児島労働局が把握している2024年3月末時点の県内の労働者の人数ですが、このうち60歳以上の人は9万9741人ということで、5人に1人が60歳以上という計算になります。
60歳で定年という企業が多い中で、働き続ける理由は人それぞれです。
職を求める県内のシニア世代の今を取材しました。
鹿児島市が運営する駐車場です。
しっかりとした足取りで階段を上るのは、大坪惠一郎さん、79歳。
大坪さんはこの場所で、駐輪されている自転車やオートバイを管理する仕事に就いています。
大坪惠一郎さん
「(自転車が)はみ出していたら隣の人が出し入れがしにくい」
京都で警察官として、定年まで勤め上げた大坪さん。
ふるさとの鹿児島市で母親の介護を経て、9年前にシルバー人材センターに登録したそうです。
大坪さん
「社会参加ぐらいの気持ちでシルバー人材センターを訪ねた。体が動く間はどんな仕事でもやりたい、こう思っている」
放置自転車指導・片野坂千昭さん
「G、2,2,9」
天文館で放置自転車の車体番号をチェックする片野坂千昭さん(77)も、シルバー人材センターにこの仕事を紹介されました。
鹿児島市交通局を定年退職してほどなく、働くことを選びました。
Q.交通局を退職してからゆっくりしよう、という気持ちは?
「社会に関わっていられる、それが大きいですね。おまけに歩くので、自分の健康にもいい」
定年後に始めた仕事。
毎日働くわけではありませんが、2人は月に5万円程度の収入を得ています。
全国にシルバー人材センターは1300余りありますが、その中でも鹿児島市は会員数が11位、派遣実績が2位と高い数字です。
こちらは鹿児島労働局がまとめたグラフです。
県内で仕事を探している人のうち、60歳以上がしめる割合はこの5年で5%以上の上昇。
求職者のうち4人に1人が60歳以上という計算です。
ハローワークかごしまの高崎所長は背景をこう分析します。
ハローワークかごしま・高崎雅英所長
「物価高などで生活費がかかる。その中で年金だけでは厳しいとか定年年齢での生活水準を維持したいという動機で就職活動に来る人もいる」
こうした状況の中、ハローワークでは60歳以上の求職者のための専用窓口をもうけています。
ハローワークの相談員
「こちらだったら施設見学に行くだけでもいいと思う」
求職希望者(65)
「施設見学をしたからここに(就職)しないといけない、とか、それが応募条件の一つではないんですよね」
相談員
「それはないです。事前にどんな雰囲気かを見てもらう感じになります」
この日、説明を受けていた女性は65歳。
以前は介護施設に務めていました。
元介護施設勤務女性(65)
「やっぱり現場が面白い、現場が大好き、ということで」
Q.60歳以上で就職の門が狭くなる実感は?
「それは大いにあって『まだやれるはずだ』と思っても、65歳という年齢は『求められているわけではないんだな』と就職活動を通じて強く感じた」
女性が感じていたのは企業とのマッチングの難しさ。
就職先が決まったと報告に訪れた男性も、就職の苦労を口にします。
元クリーニング店勤務(60)
「(新しい仕事は)ホテルの清掃です。清掃の会社は4社ほど受けた。全部はねられて、5社目で受かった」
人口減少に伴う人手不足を背景に、ハローワークでは60歳以上向けの求人も増加していますが、給与や業務内容など求職者と企業の間には求めることへのズレもあるようです。
ハローワーク高崎所長
「60歳以降は一定の勤務条件を下げる企業が多い中で、今まで通りの条件を希望する人が求職活動すると、条件にマッチした企業を探すのが難しい」
そんな中、定年後に新たな職場にチャレンジするのではなく、その能力を「まだ生かして欲しい」と考える企業もあります。
鹿児島市でさつま揚げの製造販売を行う有村屋。
2008年から60歳としていた定年制度を廃止しました。
有村屋・有村興一社長
「今は人口が減ってきているから、60、70でも元気な人はいいと思う。働いてもらった方が。(高齢者の従業員は)頑張ってくれている。そういう雰囲気は、次(若い世代)にもつながりますね」
労働局が県内の約3000社を対象にした調査では、2024年6月時点で定年の年齢を60歳とする企業が約6割、65歳とする企業が約3割、そして、定年制を廃止した企業は3%と100社を超えていて、その数字は増えつつあるようです。
従業員47人の有村屋には現在、70歳以上のスタッフが4人います。
その1人、山下美鈴さん(70)は社員として観光施設にある販売店で、外国人客に商品を説明していました。
有村屋・山下美鈴さん
「単語をちょっと言うだけ。フランスの方みたいで、英語とフランス語は違いますもんね。あまり理解できなかった」
会社で20年働く山下さんは、定年制の廃止を好意的に受け止めています。
山下さん
「社員だという責任感もあるし、今の状況(定年制廃止)にしてもらったことはありがたいと思っている」
これからますます進んでいくことが予想される人手不足。
やりがいや生活費の工面など、働く理由は人それぞれですが、やる気と経験をまだまだ社会に還元したい。
働くシニア世代の間口は広がっているようです。