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「卵子凍結」をめぐる県内の現状 多様化するライフプランの選択肢 助成する企業も 鹿児島

2025年1月30日(木) 18:55

みなさんは「卵子凍結」という言葉を耳にしたことはありますか?

「卵子凍結」とは卵巣で作られた卵子を将来の妊娠に備えて、凍結して保存することです。

少子化対策として様々な動きがある中、東京都では「卵子凍結に係る費用」を助成するなど、女性のライフプランの選択肢の一つとなっています。

この卵子凍結をめぐる鹿児島県内の現状について、庄村奈津美記者のリポートです。

街の皆さんに聞きました。

「卵子凍結」って知っていますか?

街の人
「聞いたことある。友達は30歳になるけど『まだ子どもを産む気はないから将来のためにしておこうかな』ってSNSに投稿していた」
「言葉は聞いたことある」
「人ぞれぞれかなと。でも悪いことではないと思う」

ここ数年、女性のライフスタイルの多様化を受けて関心が高まっている「卵子凍結」。

なぜ、卵子凍結が注目されているのか?

県内で卵子凍結を行うクリニックの医師はこのように話します。

竹内レディースクリニック姶良院・鹿児島院 竹内一浩総院長
「若い時の卵は、はるかに赤ちゃんになる確率高いので、(凍結で)妊娠する確率が高いから、気持ちの余裕ができる。キャリアにちょっと没頭できること。これを強調したい。将来のオプション、選択肢が残されるのはすごく大きい」

卵子凍結から妊娠に至るまでのプロセスです。

女性の卵子を採取して凍結保存しておきます。

そして、女性が妊娠を望む時期に解凍して体外受精し、受精卵を子宮に戻すというものです。

仮に、30歳で卵子凍結を行い、40歳で妊娠を希望した場合でも10年前の卵子の状態でより高い妊娠率が期待できるため、精神的な余裕が持てるというメリットがあります。

鹿児島市に住む、さとこさん(46)。

40代になると妊娠率が下がるのを懸念して、38歳の時に卵子凍結をしました。

その後、結婚し、1年間凍結していた卵子を解凍して体外受精。

40歳で出産し、女の子の赤ちゃんを授かりました。

卵子凍結で出産した・さとこさん
「38、39、40とトントン拍子に思われるが、全く結婚の予定はなくて、ただ40歳を迎えた時に妊娠率がぐっと下がることは知ってたので、『その時後悔するよりも、ちょっとお金と時間はかかるけどチャレンジしようかな』と思いました」

女の子はその後、元気に育ち、現在、5歳になりました。

この卵子凍結をめぐっては異論を唱える声も一部ありますが、さとこさんは体験したからこそ思うことがあるといいます。

さとこさん
「悔いが残るとすれば、もうちょっと早く1年でも2年でも情報を早く仕入れて、早めに行動しておけば、もうちょっと卵子を採れたのではと思う」

この卵子凍結をめぐって気になるのは、やはり金銭的な負担です。

卵子凍結には、がんの治療などで卵巣の機能が低下する前に医学的に行うケースと、さとこさんのように女性のライフプランに応じて卵子を凍結保存するふたつのケースがあります。

後者の場合、全額自己負担となり、初期費用で30万円程度かかります。

こうした中、女性が自ら望むキャリアと応援しようと、鹿児島の企業が動き出しました。

西原商会では福利厚生の一環として、「卵子凍結にかかる費用を全額負担」する制度を2024年度、導入しました。

女性社員からはこんな声が聞かれました。

西原商会 広報部・根井成后さん(28)
「就職して6年経つが、キャリアアップしていきたい思いもある中で、年齢を重ねるにつれて、妊娠しづらくなることはよく聞いていて、実際に自分が妊娠したいと思ったときに、本当に思い通りにいけるのか不安があったので、卵子凍結のことを知らなかったので、それを知るきっかけになり、もっと調べようと思ういい機会になった」

この新しい制度の導入に至った背景には、女性社員が徐々に増えて全体の2割を超える中、女性の活躍を具体的にバックアップすることが会社のためにもなるという判断があります。

西原商会人事部・寺崎明子さん
「女性社員自体が総合職としても増えてきて、女性総合職はここ(決まった部署)に配属』という雰囲気も(あったが)、どんどんこの14年ぐらいで選択肢が増えて、会社としてサポートすることができるのは、すごく大きいことだなと思う」

“未来をつなぐ手段”として企業が援助に乗り出した「卵子凍結」。

これを考える上で知っておきたいのが、女性の身体の仕組みです。

一般的に女性はお母さんのおなかの中にいる時点でピークの700万個の卵子を保有していて、年齢とともにその数が減少し、35歳では1万個から3万個と言われています。

この卵子の数を採血で調べる検査もあり、竹内医師は自分の身体を知った上で将来を選択してほしいと話します。

竹内レディースクリニック姶良院・鹿児島院 竹内一浩総院長
「AMHを採血して悪かったら、早く卵子凍結しようと思うのか、もしくはそうであっても自分はもういいからという風になるのか。要するに女性が自分の体をもっと知って、自分で選択できる世の中になりましょうということ。一番いけないのは『知らなかった』が一番の悲劇」

2017年に卵子凍結に踏み切ったさとこさん。

当時はまだ情報が少ない中での妊娠、出産でしたが、かけがえのない家族ができた今、感じることは?

さとこさん
「『元気な子が生まれてよかったな』って感じたのと、人生って選択肢の連続で、あの時、この選択肢をしていてすごくよかった」

鹿児島でも少しずつ広がりをみせる「卵子凍結」。

女性の社会進出に伴って少子化や晩婚化が進む中、将来の妊娠の可能性を高めるための選択肢のひとつとして、まずは「知る」こと、そして、社会全体で「理解を深める」ことが大切と言えそうです。

「卵子凍結」については、今回の取材を通して、初めて知ることも多くありました。

女性として、また子どもを持つ母としても、自分の体と向き合う大切さを改めて実感しました。

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