大学を政府と財界の「植民地」にしてはならない――「運営方針会議」に対する京大職組の声明――

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2024年10月17日

大学を政府と財界の「植民地」にしてはならない
――「運営方針会議」に対する京大職組の声明――

京都大学職員組合中央執行委員会

 2023年12月13日、国立大学法人法の「改正」により、東京大学、京都大学など5国立大学法人が「特定国立大学法人」に指定され、「運営方針会議」の設置が義務づけられることになりました。従来、国際卓越研究大学に応募して採択された場合に義務づけられていた合議体の設置が、採択・不採択にかかわらず、京都大学に義務づけられたことになります。その合議体の発足は2024年10月1日とされていました。
 運営方針会議の委員は11名、そのうち学外者が6名を占めるということ以外、具体的な議論が私たち組合員はじめ大学の構成員にいっさい届くことがない状態が続いていました。6月13日の団体交渉では「国際卓越研究大学への応募にあたっては、応募の意思決定を行う前に教職員が自由に意見を述べることができる形態で説明会を実施すること」を要求しましたが、説明会を開催するつもりはないと拒絶されました。ところが、今年9月10日付の部局長会議において、「国立大学法人京都大学運営方針会議について(案)」という資料が降ってわいたように提示されることになりました。しかし、この「案」にはいくつもの点において、組合として深く憂慮すべきものがあり、ここに強い反対意志をこめた京大職組の声明を発表します。
 まず、この「案」の開示にいたるまで、具体的な委員の人選に関して、私たち組合員を含め、大学の大半の構成員はいっさい蚊帳の外に置かれてきました。運営方針会議は大学に対してきわめて大きな権限を持ち得る合議体です。運営方針会議の委員案を確定するうえで、構成員にその選定プロセス、選定理由がいっさい提示されなかったことに、組合として強く抗議します。
 つぎに、現時点で提示されている6名の学外委員のうち4名が財界人で占められており、そのなかに経団連の現副会長、元副会長が含まれていることについて疑念を感じざるをえません。運営方針会議の委員の就任には文部科学大臣の承認を必要としていますが、これは京都大学の重要な意思決定をあたかも政府と財界に委ねるものです。
 また、学内委員として現理事4名の名前があげられていますが、とても京都大学構成員の多様性を体現しているとは言えません。学内委員には本来、教員、職員、学生の代表が含められるべきと考えます。それはたとえばUCLAの学長(Chancellor)選考委員会で実現されていることでもあります。なお、今回の「案」では文部科学省からの「出向」という形で理事職に就いている理事も学内委員に含まれていますが、文科省からの出向理事はむしろ学外委員に分類されてしかるべき委員候補と言わねばなりません。
 委員構成案にもまして大きな問題は、国立大学法人法に定める以上の、強大な権限が運営方針会議に与えられようとしていることです。9月10日付の部局長会議資料に含まれた参考資料「国立大学法人法、国際卓越の認定要件等」にはつぎの文章が記されています。

 改正国立大学法人法では、運営方針会議の決議により決定できる事項は法定の運営方針事項に限定されており、体制強化計画を含め運営方針事項以外は学長が決定することになる。ただし、法人の大きな運営方針の継続性・安定性を確保するという運営方針会議の設置趣旨を踏まえれば、学長の決定に先立ち、学長が主体的に運営方針会議に対し、体制強化計画に関する議決を求めることは可能であり、国際卓越研究大学の認定要件としてこれを求めることとする。

 この文章は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(2024年3月7日)に配布された「国際卓越研究大学に求められるガバナンスの方向性について」と題する文書に記されていた但し書きです。一読して意味の取りにくい悪文ですが、「体制強化計画」など国立大学法人法(第二十一条の五第一項)で「運営方針事項」として規定していない事項についても、運営方針会議の議決を求めるねらいをあらわしたものです。このように法律の範囲を逸脱したねらいを正当化するために、第一に学長が「主体的」に運営方針会議の議決を求めることを「可能」とし、第二に国際卓越研究大学としての認定を求める場合には「これを求めることとする」、すなわち運営方針会議の議決を必須としています。学長が国際卓越研究大学に申請しないと決断した場合には学長の「主体性」が最低限守れることになりますが、国際卓越研究大学としての認定を申請した場合には、どのようなことであれ「認定要件」にかかわるとして、運営方針会議が大学の統治体制を自由に左右できてしまうようになります。
 国立大学法人法の「改正」をへても「限定」されているはずの運営方針会議の権限が、国際卓越研究大学と結びついたとたん、学長をも超えた権限主体へと転化するのです。しかも、主体的に命令に服すという形で、ここにおいては「主体的」という言葉がまったく蹂躙されています。京都大学が政府与党や財界の意向に「主体的」に従属してしまったならば、教職員の労働環境を今後さらに悪化させ、学生の福利厚をさらに切り詰め、市民社会に対する門戸をさらに固く閉ざすことになるであろうと考えざるをえません。
 以上の諸点に鑑みて、私たちは京都大学執行部に対して以下のことを強く求めます。

一、 運営方針会議は学外委員・学内委員同数とすること。経団連など財界を代表する団体の現職役員は含めないこと。学内委員には少なくとも1名以上の過半数代表を含めること。また、各学部自治会、院生協議会と協議して学生代表・院生代表の選出方法を定めて、少なくとも1名以上を学内委員に含めること。
二、 国際卓越研究大学への申請を断念すること。

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大学を政府と財界の「植民地」にしてはならない――「運営方針会議」に対する京大職組の声明――” に対して2件のコメントがあります。

  1. 栗山 卓 より:

    声明、賛同します。

  2. 山根 拓 より:

    東大や京大がまず象徴的な生贄にされ、同じことが地方国立大学にも荒っぽい形で押し付けられるのでしょう。大学の構成員側も大学の枠を超えて連帯してこの動きに対抗することが、大事であるように思います。

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