BUSINESS INSIDER JAPANより転載:グラフィックレコーディングという言葉を聞いたことがあるだろうか?

グラフィックレコーディング(グラレコ)とは、議論や対話などを図や絵を使ってグラフィックに可視化することで記録していく手法。実はいま、さまざまなシンポジウムやワークショップ、企業研修で使われるようになってきている。

パネルディスカッションや講演、ワークショップでは議論の内容をリアルタイムに大きな模造紙に描いていく。ただ字で書くだけではなく、そこに発言者のイラストと吹き出しや矢印などを駆使して、次々要点を描いていく様子は圧巻だ。

5月に開かれた「富士通フォーラム」でのグラレコのワークショップを体験してみた。

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セリフは自分だけが感じる「エモい」ものがベター

セリフは自分だけが感じる「エモい」ものがベター

「まず、マルを5つ描いてください。その中に目を5タイプ、口を5タイプ、眉毛を4タイプ。これで100種類の表情が描けてしまいます」

次は「働く」をテーマにセリフを書き込む。

「この契約取ってノルマ達成だ!」「なんでこの領収書経費で落ちないの?」「今日も一日、よくガンバりました」

ここから「働く」ことの課題とその解決の糸口を探っていく。

「グラフィックレコーダー」は会議の議事録をリアルタイムで絵や図にしていく
提供: グラフィックカタリスト・ビオトープ

リアルタイムで思考を可視化、GoogleやNASAでも

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2月に開かれた働き方を考えるシンポジウムでのグラレコ。
提供: グラフィックカタリスト・ビオトープ

グラフィックレコーディングは1960年代、サンフランシスコ・ベイエリアのデザイナーを中心に生まれた。

デザインシンキングやクリティカルシンキングを活性化する手段として注目を集め、いまではGoogleやNASAでも使われている。話し合いの内容がリアルタイムで可視化されるため思考が整理され、議論を客観的に見ることができる。

さらに「言葉では表現できない」領域の外まで表現できるため、よりクリエイティブな発想ができるという。

「『絵なんて描けない』という人は多いんですけど、グラフィックレコーディングはあくまで自分の想いをわかりやすく伝える手段のひとつ。話すときに言葉を使うのと同じように、描くという手段があればいいよね、と」

と語るのは、今回のワークショップの司会も務めるタムラカイさん。富士通のインハウスデザイナーであると同時にブロガーとグラフィックカタリストの肩書きも持つ。

社員有志12人が出前グラレコ

社をあげて「Digital Co-creation(共創)によるイノベーション」を推進する富士通。その促進のため、コミュニケーションの質も変えなければと考えたのが、このプロジェクトの始まりだった。

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「グラレコは、今まで話せなかった人の声も拾うことができる」小針さん

「グラレコは、今まで話せなかった人の声も拾うことができる」小針さん

まずは新人研修のプログラムの一環として取り上げた。それをたまたま見たのが、元アプリエンジニアで現在は人材開発担当の小針美紀さんだった。

「その場で起きたこと、対話、空気感が、絵や文字でどんどん表現されていくことに衝撃を受けました」

会社に帰って模造紙を貼ると、幹部社員から驚きの声が上がった。

一方、前述のタムラさんは、2009年からブロガーとしても活動をしていた。2014年からブログでアイデアを絵入りのノートでまとめるノウハウを伝えていたところ、その活動が出版社の目に止まり『ラクガキノート術 』を出版することになる。勤務先は隠していたが、社外のネットワークが広がるに連れ、富士通内でも名前が知られるようになり社内メディアで取材されるまでに。

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「自分の伝えたいことを相手に的確に伝えるのがデザイン思考の始まり」タムラさん

「自分の伝えたいことを相手に的確に伝えるのがデザイン思考の始まり」タムラさん

異なるバックグラウンドを持った2人が出会ったのが、富士通が発信するメディア「あしたのコミュニティーラボ」。社内外のプレイヤーをつなげ、イノベーションに関するさまざまなプロジェクトを支援している。

もともとタムラさんの本を読んでいた小針さん。2人してグラフィックレコーディングをもっと知ってもらうために活動することで意気投合した。

2016年に「グラフィックカタリスト・ビオトープ」を結成し、いまでは富士通社員12人が社内外の会議でのグラフィックレコーディング(議論の記録)やグラフィックファシリテーション(司会も含め、活発な議論を回す役割)を請け負う。

今年は「働き方を考えるカンファレンス2017」やアメリカのテキサスで開かれた「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)」にも参加。大企業の異端児として始まったチームは、日に日にその存在感を増している。

圧力超えて伝え合える関係を

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言語の壁を取り払うと、組織や肩書きを超えて共創が生まれる

「いまの日本社会には『これを言ってはいけないんじゃないか』と思ってしまう圧力がある。言葉ではないコミュニケーションを使うことでそれが中和され、今まで話せなかった人の声も拾うことができる。ちゃんと伝え合える関係性を作っていきたい」(小針さん)

このプロジェクトから大企業の新しいあり方も見えてくる。タムラさんは言う。

「やりたいことをやっていた人が集まって自然発生的にできたのが『グラフィックカタリスト・ビオトープ』。会社でも多様な人が多様な道を選べるようになるといい。その点、富士通はいい意味で大きな組織。許してもらえる土壌がある」

「組織の垣根を越えて、イノベーションに関わる人とのつながりを富士通から作っていきたい。このプロジェクトがその先例になってくれたら」と語るのは、あしたのコミュニティーラボ編集部の櫻本直子さんだ。

「縦割りの硬直化した組織」や「意見の出ない無駄な会議」などイノベーションが生まれる環境とは言い難い大企業も、確かに変わってきている。

「描く」ことで相手とのコミュニケーションを円滑にし、そこから生産的な議論を生むとされるグラレコ。さて、あなたが会社で今日したあの発言はちゃんと相手に「伝わって」いただろうか?

シンポ、研修で引っ張りだこのグラフィックレコーディングって?——富士通有志が広げる思考の新手法 | BUSINESS INSIDER JAPAN

(文/西山里緒、撮影/今村拓馬)