守りの名手が緊迫した場面でまさかの落球をしたり、成績優秀な人が大きなテストでとんでもないミスをしたり...。 「よりにもよってここで?」というヘマをすることがありますよね。なぜそんなことが起こるかというと、それはプレッシャーに負けてしまうからです。

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 シカゴ大学の心理学者 Sian Beilock博士は、これを脳の働きから研究しました。うまくいっているときと、失敗してしまうときの脳の動きを比べてみたのです。その結果わかったことは、ヘマは単にお粗末な結果というわけではありませんでした。それは、完璧さを求められるプレッシャーの下で起こる、「あなたにとっての二番目の出来」だとか。つまり、あなたは同じことを過去に何度もやってきていて、ちゃんとできる能力も持っているのですが、プレッシャーが邪魔をして、ベストな結果が出ていないのです

では、どうしたらしくじらずにすむのでしょうか? まずは、考えすぎないこと。失敗してはいけない...と、自分の周りのすべてのことをコントロールしようとすると、逆にそれまで何の問題なくスムーズにできていたことに対するコントロールを失うことになります。 Beilock博士によると、今まで何度もうまくやってきていることなのに、今回に限ってガチガチ...というときには、例えば口笛を吹くというような簡単なことで注意をそらすと、いつもの自分に戻れるのだそうです。

身体がガチガチになるのではなく、プレッシャーの下で頭が働かなくなることもありますよね。これは、本来物事をうまくやるために働く前頭前皮質が、うまくいかなかったらどうしようという心配事でいっぱいになり、 脳の処理能力が落ちるからだそうです。

ここで2つ、興味深い調査結果を紹介します。一つ目の例は、オバマ大統領が選出される前と後に、黒人と白人の学生に標準テストを受けてもらったという話です。「オバマ前」では、黒人学生の結果が白人のそれより劣るものでしたが、「オバマ後」ではなんと、黒人学生のスコアがぐんと上がり、白人学生とほぼ同じレベルになりました。「Yes, we can!」で、黒人学生はステレオタイプ(黒人は白人より劣る、というもの)に打ち克ち、心配事を取り除き、いい結果を出すことができたのです。

2つ目の例は、小学校一年生の女子は男子より算数ができないと思っており、実際にスコアも男子より低いというケースです。よくよく調べてみると、その生徒たちの担任である女性の先生自身が、自分の算数の能力や教え方に自信がないということがわかりました。女性の先生の不安が、女子生徒にも伝わってしまっていたのです。逆に、女性の先生でも算数に対してポジティブな見方をしていた場合、生徒の算数のスコアに性差はほとんど見られませんでした。

その他、いつも通りのいい結果を出すために大切なことは「リラックス」です。テストの前に瞑想してもらったグループと、そうでないグループで結果を比較したところ、予想通り瞑想ありの方がいい結果を出せました。高いストレスレベルの中で結果を求められても、気持ちを落ち着けてから臨めば、本来の力を発揮できるのです。

最後に、やっぱり一番大事なのは「練習」です。練習の目的は、本番と練習とのストレスレベルの差をできるだけ小さくすることです。今まで何回も成功していることでも、家の中で誰も見ていないときにできただけでは、本番の大観衆の前でうまくやれるとは限りません。場数を踏んで、少しずつステージを上げていき、本番さながらの場をいくつも経験すれば、「本当の本番」になったときにでも「いつも通り」の結果を出せることでしょう。

プレッシャーが大きいほど燃える、という奇特な人もいますが、大事な場面でしくじってしまうことの多い人は、ぜひ参考にしてみてください。

Psychologist shows why we "choke" under pressure - and how to avoid it

(山内純子)