気乗りしないことや面倒なことは、つい先延ばししたくなるもの。結局、それは裏目に出るだけなのが。

ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』(ピアーズ・スティール著、阪急コミュニケーションズ)。膨大な結果をメタ分析(複数のデータに基づく分析)し、先延ばしの秘密を徹底的に解き明かした一冊です。...なんて書くと堅苦しそうですが、筆者のアプローチは軽やかなもの。

私は、先延ばしをライフワークにしてきた人間だ。先延ばしの研究者としても、先延ばしの実践者としても、長年にわたり研究を積んできた。

はじめに(『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』)

もうこの時点で、本気か冗談かわかりません。だからこそ私は期待感を持ち、読み進めた結果、その直感が間違いではなかったことを実感しました。まず、「あなたの先延ばし度は」と「あなたの先延ばしのタイプは」の2種の自己判断テストが用意されている時点で実践的です。ここでそのすべてを紹介するのは難しいのですが、簡単な設問について答えを「ほとんど、ないしまったく該当しない」「あまり該当しない」「少し該当する」「大いに該当する」「非常に多いに該当する」から選ぶことで、自分の「先延ばし度」を把握できるのです。

さらに、「さぼる脳のメカニズム」や「失うものの大きさ」などを立証したうえで、13種にもおよぶ「先延ばし克服の行動プラン」が紹介されます。

ここから先が、ばかばかしくも実践的。たとえばこんな感じです。

川下り、山登り、バンジージャンプ、スカイダイビングなど、アウトドア活動や冒険的な活動をやってみる。

173ページ(『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』)

「どこが先延ばしと関係あるのか?」とツッコミを入れるのは簡単ですが、「先延ばし=やる気のなさ」と考えれば、積極的に動く意識を促すという意味で理にかなっています。

心を鼓舞される映画を見る。私が気持ちを奮い立たされた映画には、たとえば、『ザ・ダイバー』『マイ・レフトフット』『アポロ13』『インビクタス/負けざる者たち』『ホテル・ルワンダ』などがある。

177ページ(『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』)

これも冗談のような話。しかし、上記の映画を観たことがある人なら、筆者の言いたいことは理解できるはずです。

こういう例ばかり紹介していると「ジョーク本」だと誤解される恐れがあるので、そうではないことも証明しておきましょう。

理想と現実のギャップをはっきり意識したうえで、それでも理想の未来を実現できる可能性に楽観的でいられれば、目標達成に向けたモチベーションがいっそう高まる。ギャップを埋めるために積極的に行動しはじめると、先延ばし癖は消し飛ぶ。やるべきことが明確になると、やる気がわいてくるのだ。

181ページ(『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』)

いわば、「肩の力を抜きながらも」「学術的な根拠に基づき」「あくまで前向きに、徹底的に」、先延ばしについて考え尽くされた書籍だということ。あとはあなたが、ここに書かれていることをどう活用できるかにかかっているのです。

本書を読んだ方は、どのような感想を持ったでしょうか。facebookページや下のコメントなどで、ぜひ教えてください。

(印南敦史)