『人はなぜ「死んだ馬」に乗り続けるのか?』(T・ディースブロック著、三谷武司訳、アスキー・メディアワークス)。本書において著者は、「あなたの乗っているその馬、生きていますか?」と、読者の仕事や人生を「馬」にたとえ、否定します。
乗っている馬が「死んでいる」のに降りようとしない、「もっともらしい」理由を挙げていますが、心当たりのある人も多いであろう、耳が痛い内容です。
- これまで何年もやってきた仕事しか、自分にはできないと思っている。他の可能性には目を向けない。
- 転職先の可能性は多様なのに、自分がよく知っている職種しか選択肢に入れない。実際には、その職種に、もはや興味がないにもかかわかず。
- いまの職場で、上司や同僚との関係がよくないが、他へ行ったらもっと"悪く"なるのでは、と思っている。
- いっしょにいても退屈以外の何ものでもない恋人と、いつまでも別れられない。
- 同棲をだらだら続けている。結婚の話はたまに出るが、本気で踏み出す気は双方ともにない。
- 古くからの友人関係を壊すのがイヤで、さして話すこともない知人と定期的に会ってしまう。
- 自分を認めてくれない人、自分に好意を示さない人に対して、そうとわかっていても、承認や好意を期待してしまう。結果、いつも期待が外れて、落ち込んでしまう。
- 好きな作家の/好きな分野の本やDVD、ゲームなどを見つけると、つい買ってしまうが、そのほとんどは少し見ただけで、部屋の隅に積んだまま。
- 自分には合わない勉強をしているとわかっているのに、学ぶ分野を変えようとしない。
- 内心ではもう飽きているのに、休暇になると、つい同じ場所に出かけてしまう。
- タバコ、ビール、新聞、家具、ネクタイ、花、眼鏡......昔からずっと同じ種類・銘柄のものを買ってしまう。実際はただの惰性で、新しいものに挑戦するのが面倒なだけ。
- 行きつけの飲食店がある。最大の理由は、新しい店を開拓するのが面倒だから。そして、注文する料理も、いつもたいてい同じ。
- あまり腕がよくない......と思いつつ、いつも同じ医者にかかっている。
『人はなぜ「死んだ馬」に乗り続けるのか?』(31ページ)
著者はこれらが、「死んだ馬」にしがみついている状態だといいます。それは決して現在の仕事を否定したいというわけではなく、「倦怠は危険だ」ということを教えてくれるのです。
"朝食のチーズが、いつも同じ銘柄だ"という程度なら、たいした問題にはなりません。
でも、自分の仕事や恋愛、人生がずいぶん前から「死んだ馬」になっているとしたら?
これは、はるかに複雑で困難な、大問題です。そして、こうした問題を抱えている人は実に多いのです。
『人はなぜ「死んだ馬」に乗り続けるのか?』(37ページ)
「昨日と同じ今日、今日と同じ明日」というパターンから抜け出し、「変化」を生み出していくことが大切だというわけです。
実現するには少しだけ度胸が必要ですが、たしかに見えてくるものはあるはず。そして本書は、その度胸をつけるきっかけになると感じました。
*
本書を手に取った方は、どんな感想をもったでしょうか。Facebookページでも下記のコメント欄でも、ぜひ教えてください。
(印南敦史)