- ストレス管理法を学ぶのは、仕事が一段落してからにするつもりだ
- 愛する人たちと一緒に過ごすのは、もう少し暇になるまでお預けにするつもりだ
- 生活の質を改善するのは、忙しい時期が終わるのを待ってからにするつもりだ
『ストレスフリーの時間術 ──イライラ、ヘトヘトを元気いっぱいに変える法』(リタ・エメット著、桑名真弓訳、日本経済新聞出版社)の著者は、上記の質問にひとつでも「はい」と答えたら、その人は楽しく生きることをぐずぐずと後回しにしていると断言します。しかし、そうはいっても時間を見つけることはそれほど楽ではありません。
だからこそ、本書ではさまざまな観点からストレス解消法が紹介されているわけです。そしてポイントは、ストレス軽減に対して大きな影響力を及ぼしている「あなたなりの時間管理術をいかに改善するか」に焦点を合わせている点。
第3章「完璧主義をやめよう」からいくつかを引き出してみます。100%を目指して奮闘すると、ストレスを抱えることになるだろうと著者はいいます。そして完璧主義者は欠点や欠陥に焦点を当て、眼鏡にかなわないものにイライラする。完璧な人などいないからこそ、家族や友だち、同僚などに完璧を求めれば失望し、ストレスを抱える。そして、副作用として周囲の人たちをイライラさせる。この点についての著者の主張を引用します。
人によって習熟度もやり方も異なるのだということを受け入れれば、ストレスを減らすうえで効果があるというわけです。人というのは間違いを犯し、あなたをがっかりさせ、ドジを踏むものだ。あなたは"正しいやり方(あなたのやり方)"を教えようとし、その人は"誤ったやり方(その人のやり方)"をするようにできている。人生は短いのだから、ほかの人が完璧でないからといって、ストレスを抱え、ストレスを抱え、イライラしている暇はない。
本当に「忙しい」のか(81ページより)
電話やメールから逃れられず、疲れ果ててボロボロになるという話は珍しくありませんが、こういう人に対して著者は次のように述べています。
問題は時間が足りないことではなく、その時間をどう使うかだ。大事なのは何時間働くかではなく、何をなし遂げるかだ。それなのに、自分自身に生産性を求めるのではなく、忙しそうに見られたいと思っていることがある。(中略)より生産性の高い人になることを目指そう。そのためには、まず仕事の優先順位を決めよう。
この少しあとに出てくる「あなたが今やっていることをやめたら職場が崩壊する、と心の底で信じていないだろうか。あなたが計画を立て、休みなく仕事をしなかったら、家族はバラバラになる、宗教団体や市民団体は回らなくなってしまうと思っていないだろうか」というフレーズを読んだときには少し笑ってしまったのですが、つまりストレスの要因とはその程度のものなのかも。だとしたら、自分自身にストレスをもたらす可能性があるものがなにかを突き止めれば、それが解決の糸口になるはずです。
あなたの人生をコントロールし、ストレスをもたらす可能性があるものは何か?(7ページより)
- ほかの人の優先順位
- ほかの人の要求
- メール
- 口も手も出してくる親戚
- 仕事
- 上司
- 狭い考え
- 恐怖
- 優柔不断
- 悪癖に溺れること
著者が挙げるこれらのポイントを見ると、「自分を悩ませているストレスのほとんどは、他の多くの人にとってのストレスでもある」ということがわかる気がします。
最後に、章の終わりで紹介されている「完璧主義者に髪をかきむしりたくなるほどのストレスを与える19の方法」を引用しておきます。半分はジョークですが、少なくともこれら19項目に目を通せば、ストレスを抱えることが少しばかばかしくなるのではないだろうかと思います。
完璧主義者に髪をかきむしりたくなるほどのストレスを与える19の方法
- 冷蔵庫に空の容器や瓶を戻す
- 前に聞いたことのある笑い話を誰かがしていたら、話が終わりに近づくのを待ってから、先回りして大声でオチを言う
- あらゆる場面で、完璧主義者にアドバイスをする。特にあなたがまったく知らない分野について
- 歯磨き粉を真ん中から絞り出す。絶対にキャップをしない
- いつも遅刻する
- 完璧主義者と映画に行き、ひたすらしゃべりつづける
- 完璧主義者のところに人が集まったら、必ず話題をセックスか政治か宗教の話に持っていく。3つすべての話になることが望ましい
- 完璧主義者が独身なら、満面の笑みで何度も尋ねる。「それで、いつ結婚するの?」。もし新婚だったら、もちろんこう質問する。「赤ちゃんはいつ?」
- 完璧主義者に子どもがいたら、誕生日プレゼントにかわいい子犬を贈る。または子猫を
- 頻繁にお金を借り、返すのを忘れる
- 自分の限界を認識する。そして無視する
- 完璧主義者の限界を知る。そしてその人の限界について話す
- 借りた物は絶対に返さない
- 寝る直前にダブル・エスプレッソを飲ませる
- 折を見てカフェイン抜きのコーヒーとカフェイン入りのコーヒーを取り替える
- 部屋の中のありとあらゆるスイッチを入れ、ボリュームも上げる。そして、そのまま放置する
- 今の恋人の目につく場所に、昔つきあっていた人の写真を置いておく
- やり方を改め、改善するつもりだと言って、絶えず完璧主義者に期待を抱かせる。そして、あらゆる機会を利用して望みを打ち砕く
- 決定権はあなたにあることを、何かにつけて確かめる
(90ページより)
(印南敦史)